映画レビュー1093 『トレーニング デイ』
今日も例によってアレ。でもずっと観たかったやつです。
トレーニング デイ
2001年10月5日 アメリカ
120分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)
悪と正義の境界線。
- ずっとなりたかった刑事になった初日、先輩刑事からの洗礼を受ける“トレーニングデイ”
- 悪よりも悪っぽい先輩の説く“正義”に翻弄される新米
- 「こういう刑事すごくいそう」なリアルさが絶妙
- 名優二人のやり取りだけでも観る価値あり
あらすじ
「トレーニングするだけの1日を描いて何が面白いんかいな」と思っていたわけですが当然そんなヌルい話ではなく、「麻薬取締課勤務初日1日を追った物語」でした。そりゃそうだ。
念願叶い、晴れて麻薬取締課の刑事となった“新人”ジェイク(イーサン・ホーク)。ちなみに「刑事として新人」なだけでこれまで交通取締担当の警官として働いていたようです。
彼の麻薬取締課での初日は、ベテラン先輩捜査官・アロンゾ(デンゼル・ワシントン)に連れられての現地勤務、いわゆるひとつのOJTってやつです。
朝一に待ち合わせしたお店でのやり取りからしてかなりシビアで優しさを感じさせないアロンゾ、それは一刻も早く一人前の捜査官として独り立ちさせたい親心なのか、はたまた単なる性悪野郎なのかはわかりませんが…しかしかなり手荒い歓迎であることは確かです。
それから続々と訪れる「正義を体現する刑事」とはかけ離れたように思える“OJT”に戸惑いながらも順応しようとついていくジェイクですが、アロンゾとの価値観の乖離は広がるばかり。
そんな二人の1日はどのような形で終わりを迎えるのでしょうか。
終始不穏なのがいい
新人刑事のイーサン・ホークがベテラン刑事のデンゼル・ワシントンとコンビを組んで話が進む、いわゆる“バディムービー”の一つと言っていいと思いますが、しかしバディムービーによくある「最終的にはなんだかんだ信頼関係が醸成され…」的な雰囲気はまるでなく、話が進めば進むほどアロンゾに対するジェイクの疑念が深まっていくという、もちろん最終的に二人の関係がどうなっていくのかまでは書きませんが、その全体の進行からしてバディムービーとしてはなかなか珍しいタイプの映画でしょう。
ぶっちゃけ今作においてのデンゼルは悪役と言っていいと思いますが、とは言え彼の言うことも確かにわかるし“そういう世界”が存在する、必要であることも理解できるだけに、単純に「刑事のくせにクソだな」とレッテル貼ってオールオッケー、って話でもないと思うんですよ。
日本でもよく暴力団担当の刑事が暴力団員にしか見えない、とネタにされることがありますが、確かに「悪を制するためには悪になる必要がある」というのも一理あるし、悪い連中に「こいつ警察なのにマジでヤバいんじゃないか」と“思わせる”ことによる捜査への貢献って結構あるのではないかなとも思うわけです。
ただ、それはあくまでも“思わせる”部分であって、それが行き過ぎてしまうと刑事として問題なのは言うまでもありません。
僕が観ていて感じたのは、アロンゾは当所「確かにそうなんだろうな」と説得力を持っていた“悪の体現”の部分が、徐々にその“行き過ぎてしまう境界線”を自己弁護のための正当化で糊塗していってしまったことで、「なんのために悪になっているのか」の最も大切な根源の部分を見失って行っている印象がありました。
それ故に最初は「そうなのかもしれない、自分が甘いのかもしれない」と思っていたジェイクの(一般的な)正義感とぶつかることになり、不穏さが増していく…と。
この不穏さが終始物語を支配している感覚が素晴らしくてですね、「刑事モノのバディムービー」という字面から受ける印象とはまったく違う、実にシビアでリアルな捜査現場を感じさせる良作だと思います。
名優の共演だけでも観る価値あり
まああとはなんと言ってもデンゼル・ワシントンとイーサン・ホークの共演ですからね。言わずとしれた名優同士、どちらもいまだに第一線で主演を演じ続ける二人が主役というだけで観る価値はあろうというもの。
変に女っ気を入れてこない(奥さんのためにとか彼女を救うんだとか)のも良い。実に骨太で生々しい良いストーリーだと思います。
改めてフークアの作品結構好きだなと思いました。今のところ観た中では「ザ・シューター」ぐらいかな、残念だったの。
このシーンがイイ!
これちょっとネタバレ上書けないんですが…ジェイクがキレるところ、とでも書いておきましょうか…。
ココが○
全体的に穴のない良い映画だと思います。しかも物語自体は実話ではないものの、アロンゾにはモデルがいるというのもスゴイ。デンゼルの演技もそのモデルを参考にしているらしいです。
ココが×
特にこれと言って大きな問題点は無いと思います。
MVA
これねぇ…どっちも最高だったのでどっちでもいいっちゃどっちでもいいんですが…こっちかなぁ。
デンゼル・ワシントン(アロンゾ・ハリス刑事)
ベテラン麻薬取締官。
なにせ「悪を倒すために悪になる」を信条としているだけあり、迫力もあるしワルい。なんと言ってもワルい。
デンゼルっぽくない役柄ではあるんですが、でもやっぱりデンゼルだなと思う重厚感もあるし、まーやっぱりこの人はいろいろできるなと改めて。
イーサン・ホークの方は「いつものイーサン・ホーク」っぽい善良な役柄でしたが、それもまた相変わらずとても良い。
なかなかワルデンゼルに負けない善良な役ができる人も実はそうそういない気がするし、この人もまた流石といったところ。