映画レビュー1279 『トロール・ハンター』
内容的にめちゃくちゃ面白そうだったので観ることにしました。JAIHOです。
トロール・ハンター
アンドレ・ウーヴレダル
アンドレ・ウーヴレダル
オットー・イェスパーセン
グレン・エルランド・トスタード
ヨハンナ・モールク
トマス・アルフ・ラーセン
ハンス・モーテン・ハンセン
トルン・ルーデメル・ストッケラン
ウルミラ・ベルク=ドマース
2010年10月29日 ノルウェー
104分
ノルウェー
JAIHO(Fire TV Stick・TV)

妙に味があるものの、ちょっと物足りない。
- 謎のハンターを追っていたら実はトロールハンターだった件
- ドキュメンタリー調のいわゆるモキュメンタリー映画
- いろんな種類のトロールが出てきて面白い
- ただ最後はもう少しビシッと決めてほしい
あらすじ
これはなかなかの問題作な気がしますね。良い意味で。
ただこういうバカバカしいものを大真面目に作る姿勢はすごく好きでした。
熊の密猟事件を取材するトマス・ヨハンナ・カッレの学生3人組は、熊の駆逐を担当するハンターたちから「免許を持っていない」と思しき一人の怪しいハンター・ハンス(オットー・イェスパーセン)の存在を聞き、尾行を開始。
何度かコンタクトを取るも門前払いにされ、いよいよ怪しいということで尾行を続ける3人組は、ある夜立入禁止区域に入っていくハンスを目撃、追っていくと慌ただしい様子でハンスが戻ってきて「トロールだー!」と叫ぶのであった…!
これは「トロールハント」を生業とする男を追う実録映画である…!(ババン)
設定が秀逸
ということで「トロールは実在した」系のモキュメンタリー。「学生3人組による撮影映像」という形をとっているので、まんま「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」みたいな感じでしょうか。(あれはまだ観てないんだけど)
トロールの存在はノルウェー政府によって隠蔽されていて、ハンスがトロールを狩ったあとは他所から熊を持ってきて「熊をハントしましたよ」という偽装工作までしている…というなかなか凝った設定も良いんですが、そうやって「世間に知られることのない隠れたヒーロー」的な存在であるハンスがのっけから素性もわからないその辺の学生に「トロールだー!」と叫んでその存在を公にしてしまう辺り非常に笑えます。
序盤はトロールのトの字も出てこない(観客はタイトルでご存知なんですけど)だけに、トロールの登場自体結構引っ張るのかな…と思いきや割と何度か見せてくれるし、タイプ別の生態の違いみたいなものが説明されたりもしてトロール事情がしっかり作られていて楽しい。
観ているときはそんなにハマらなかったんですが、振り返ってみるとこれはなかなかよく作られた映画だなぁと評価したくなるような妙な味があって、結構真面目に「トロールが実在したらこういう世界になっているのでは」的な地に足のついた妄想映画だなと思います。
特にトロールの「人間を認識して攻撃する」認知の部分の設定が秀逸で、匂いでバレるからめっちゃ臭いトロール臭でカモフラージュするとかすごくありそうで良いんですよ。
また僕は由来についてはよくわからなかったんですが、なぜかトロールはキリスト教徒を攻撃する傾向があるらしいというのも笑っちゃいましたね。それ自体はまだ良いとしてもおびき寄せるのに賛美歌を聞かせるとか爆笑しましたよ。
大真面目に作ってはいるものの、ところどころで手の込んだドラマ系コントみたいなくだらなさを見せつけてくるので油断できません。
エンディングがもう一歩
一方残念だったのが終わらせ方。
そうせざるを得ない、そうしないと終わらせにくいのもよくわかるんですが、設定が凝っているだけにそこももう少し頑張ってほしかったところ。
割とこの手のモキュメンタリーにありがちな終わり方になっているのが非常にもったいない。(そう言えばクローバーフィールドも似たような感じだった記憶)
入り口の「学生たちが撮影した映像を編集した」時点でこうなっちゃうのはわかりきってはいたんですが、やりようはあると思うのでこの最後の一歩にもっと力を入れてくれれば…と悔やまれてなりません。
とは言えなかなか他にないタイプのモキュメンタリーになっているし、ホラーではなくパニック映画っぽい作りでなおかつところどころ(大真面目に)笑わせにきてるセンスはなかなかのもの。
ビシッとハマることはないかもしれませんが、一度観てみて損はないように思います。ウォッチパーティでも盛り上がりそう。
このシーンがイイ!
上にも書きましたが、「賛美歌でおびき寄せる」シーンは爆笑しました。キリスト教徒を狙う→賛美歌=キリスト教徒がいる、ってトロールが学習してるのが面白すぎる。
ココが○
ちゃんとそれっぽく作っていて、映像自体も悪くないし、ニッチなところにいいテーマをぶち込んできたなと感心しました。北欧ならでは、なのかな。
ココが×
上に書いた通り、エンディング。もうちょっとインパクトがほしかった。
MVA
仕方がないとは言えカメラマン役の子がほとんど映らないの気の毒だなと思いながら観てました。結構イケメンだった気がしたのに。
それはさておきベタですがこの人にしましょう。
オットー・イェスパーセン(ハンス役)
人知れずトロールを狩る、トロールハンターその人。
怪しさ満点の序盤から徐々に頼れるヒーローに見えてくる時点でこの映画の仕立ての良さが伺えます。
ものすごくそれっぽいし臭そう。根はいい人感も良き。
ちなみにこの方、「クラッシュゾーン」にも出てました。すごい2本に出てるな…。
しかしこの映画の構成的に、あんまり他の映画に出てる役者さんは使わないほうがいいのでは…と老婆心ながら思いますが、まあそこまで本気に騙そうとしてないんでしょうね、きっと。
でも例えばアメリカのモキュメンタリーにブラピ(極端な例ですが)が出てきたらその時点で「モキュメンタリーを楽しむ(わかって騙されにいく)」感じも無くなっちゃうし、彼の本国での知名度のほどはわかりませんが、やっぱりもうちょっと無名な方が良いんじゃないのと余計な心配をしてしまうところです。