映画レビュー1322 『アンダー・ザ・シルバーレイク』

公開当時結構Twitterで目にしていて気になった系映画。JAIHOに来たので観てみました。

アンダー・ザ・シルバーレイク

Under the Silver Lake
監督

デヴィッド・ロバート・ミッチェル

脚本

デヴィッド・ロバート・ミッチェル

出演

アンドリュー・ガーフィールド
ライリー・キーオ
トファー・グレイス
ゾーシャ・マメット
キャリー・ヘルナンデス
パトリック・フィスクラー
グレース・ヴァン・パットン
ジミ・シンプソン
リキ・リンドホーム

音楽
公開

2018年8月8日 フランス

上映時間

139分

製作国

アメリカ

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

アンダー・ザ・シルバーレイク

主人公同様に映画もこじらせちゃってて好きじゃない。

6.5
忽然と消えてしまった好き女子を追いかけてたらとんでもない陰謀に巻き込まれ…?
  • やっとデートの約束を取り付けた女子が翌日忽然と姿を消す
  • 諦めきれない主人公は彼女を追いかけていくうちに金持ちの陰謀に巻き込まれていく
  • 先の読めない面白さは確かながら陰謀論が強く出すぎていて醒める
  • かなり好き嫌いが分かれる映画では

あらすじ

予想と全然違って「オシャレ気取りのこじらせコメディサスペンス」って感じで…まあ簡単に言えばつまらなくはないんだけどあんまり好きなタイプの映画ではなかったですね。

主人公のサム(アンドリュー・ガーフィールド)はいい歳(33歳らしい)ながら定職にも就かず、うだつの上がらない毎日を送っております。

彼は近所にあると思われるカフェで働いている隣人のサラ(ライリー・キーオ)が好きで、望遠鏡で眺めてニヤニヤしたりとなかなか怪しいダメ人間です。30過ぎてその生態はどうなんだ。

ある日彼女のわんこを手玉に取ることできっかけを掴んだサムはそのままサラの家にあげてもらい、あけすけに下の方の質問をぶつけてくるサラに戸惑いつつもなんやかんやいい感じになってこりゃもうセックスでしょ、的な雰囲気になったところで同居人がご帰還、これ以上はノンノンノン。

しかし生殺しは勘弁してくれよ! とすがったところ「明日のお昼にデートしましょ」ということでこの日は一旦矛(という名のちんこ)を収めてご帰宅です。

そりゃあもう脳内はワクワクで精子の製造も捗っていること間違いなしな状況で迎えた翌日、彼女の家に行くとしかしそこは完全なる空き家に。

突然の展開が信じられないサムはこっそり侵入して部屋の中を探ったりしたところ、彼女の同居人らしき人物が戻ってきたので急いで外に出て、その同居人を追いかけてサラの居所を探ろうと考えます。

こうしてサラを追いかけるサムは、その後様々な陰謀やロサンゼルスの事件に出くわすんですが…あとは観てください。

いろいろ好きじゃなかった

僕はタイトルからてっきり「再構築した真面目なサメ映画」みたいなものを想像していたんですがびっくりするぐらい違いました。

印象としては「インヒアレント・ヴァイス」にすごく似た感じがしましたね。オシャレを気取ったサスペンスっぽい感じで。

なのですごくポール・トーマス・アンダーソンの映画っぽいなと思ったんですが、そもそもポール・トーマス・アンダーソンの映画自体「インヒアレント・ヴァイス」以外は「マグノリア」ぐらいしか観たことがないので我ながらいい加減な感想を述べてるなと思います。

まあ「インヒアレント・ヴァイス」にせよこの映画にせよ同じノリというか、ちょっと斜に構えた作りって言うんですかね。

ちょっと思ったんですが、この手の映画はなんとなく巧みに展開しているように見せてはいるものの、これってきっと「勢いで細かいところはごまかす」パワープレイの別パターンというか、アラが目立たないようにちょっと複雑化させて雑多に情報を展開させているだけのような気がしたんですよね。

確かに先は読めないしどうなるのかさっぱりわからないし、途中からは妙な陰謀論が幅を利かせてきて独特の面白さはあるんですが、ただその陰謀論が事実っぽいぞとなってくるとさすがにちょっとやりすぎだなと思えてくるし、真面目に観てるのがバカバカしくなってくるような感覚もありました。

「実は陰謀論だと思ってたことが事実だったら面白いよね」みたいに見えはするんですが、その実裏を返すと陰謀論をバカにしているだけのようにも見えて。

まあそれはそれで別に価値観としては良いんですが、そこになんとなく「賢い人間がバカを見下して作りました」みたいな増長感もにじみ出ている気がして、作り手が偉そうな映画が大嫌いな人間としてはそこのアンテナに引っかかった時点でダメだなと思っちゃったよ、というお話です。

結構途中まではこっちとしては割とちゃんと「いやでもさすがにこれは無いだろうからこうなるのかな…」とか考えながら観ていたんですが、あっさり主人公の陰謀論的予想が正解を辿っていく展開が続くので、さすがに「うそーん」も言い飽きてもうどうでもいいからはよ進めなはれや、と呆れながら観ていた感じです。

細かい部分で「それはないだろ」というのも散見され、現代劇のようでいて実はファンタジーなんじゃないか…というぐらいにリアリティもなく、どことなくオシャレを気取った作りが好きな人は好きなんだろうけど、僕のように良くも悪くも論理的整合性を重視するようなタイプはあまり好きになれない物語であることは間違いないでしょう。

と言いつつ「論理的整合性」なんて初めて使ったけど。それっぽく書いてるだけですけど。

まあもっと簡単に言うとですね、胡散臭いんですよ。もう。話が全部。

胡散臭いまま胡散臭い展開が正解として進むので、興味が続かないんですよね。

胡散臭さが面白いのはその反対側に真っ当な人がいて、その対比なり対決なりがあってのことだと思うんですが、この映画は全部が胡散臭いので胡散臭い世界の中で胡散臭いものを観させ続けられてもあんまり入り込めないんですよね。みんな魅力的に見えないし。

肝心のオチについてもかなり微妙で、観ていた気分としては尻すぼみ感が強かったです。中盤ぐらいまでは面白かったんだけど…。

自分を知るために合わない映画も必要と気付く

ただまあ映画なんて全部そうだろと言われればそれまでですが、確実にこの手の映画が好きな人もいるので向き不向きでご判断頂ければと思いますですよ。とりあえずポール・トーマス・アンダーソンの映画が好きなら好きなんじゃないですかね。たぶん。

前回の「海賊じいちゃんの贈りもの」みたいな映画がドストライクで何本でも来いと思っている僕みたいな人間がいれば、ああいう映画がどうにも好きになれない人もいるだろうし、その逆パターンみたいなもんですよ。

結果的に好きではなかったものの、そういう「つまらないわけじゃないんだけど好きじゃない映画」について考えると自分がどういう人間なのかの理解がより深まる面があってそこは良いところだな、と今回気付きました。今さらですけどね!?

今さら、もう40も過ぎてだいぶ経つおっさんでも「自分はこういうのが好きでこういうのが好きじゃないんだな」と改めて理解して己を知っていくプロセスがまだある、というのは良いのか悪いのかわかりませんが、結局人間なんてそんなものなんだなという哲学的な結論です。

40で「不惑」なんていつの時代の話だよと思いますね。惑ってばっかりですよこっちは。Amazonでポイフル10個セット買っちゃおうかでも買ったらあるだけ食べちゃいそうだしよくないなでも食べたい買っちゃえ、みたいな。惑いしかないじゃん。

で、あるだけ食いました。(事後)

このシーンがイイ!

ネタバレ回避的に書きづらいんですが…“沈む”シーンというか。あそこはすごくいいなと思いました。

ココが○

先の読めなさ。予想しろという方が無理なぐらい良くわからない展開を見せます。

コメディながらちょっとホラー感もあってその辺りも良かったですね。

ココが×

結局なんやかんや書きましたが一番はオチな気がする。オチにビビッと来ないとなかなかしんどい。

MVA

うーーーーん誰でもいい…やっぱり鑑賞に身が入らない映画は誰でもいい感が増してしまう…。

とは言え選ばないわけにもいかないので、この人にします。

アンドリュー・ガーフィールド(サム役)

主人公。結局。

まあ頑張ってたんじゃないかなと。うだつの上がらない感じがそれっぽくて。

ちなみに僕のアンドリュー・ガーフィールドのイメージはいまだに「ソーシャル・ネットワーク」で止まってます。スパイダーマンですらない。

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