映画レビュー0762 『アンダーカバー・じーさん』

今年はNetflixオリジナル映画を観るぞイヤーということで当企画2本目となります…が、この映画は別にNetflixオリジナルというわけでもないらしく、単純に「日本で観るには現状Netflixしかない」という映画のようです。おそらく(日本向けの)ソフト化もされていない模様。

去年ご紹介した「くすぐり」みたいなポジションですね。一応調べはしましたが情報も少ないので、映画情報に不備がある可能性はありますので参考程度にということで。

移転時に調べて思いましたが、マニアックな人名はカタカナ表記がわからないとか結構多いんですよね…。

アンダーカバー・じーさん

Undercover Grandpa
監督
エリック・カニュエル
脚本
ジェフ・シェクター
出演
ルイス・ゴセット・Jr
ディラン・エヴェレット
ケネス・ウェルシュ
ローレンス・デイン
ポール・ブラウンスタイン
グレタ・オニオゴ
音楽
ミシェル・コリボー
ルクセント・ピエール
公開
2017年7月7日 アメリカ
上映時間
94分
製作国
カナダ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

アンダーカバー・じーさん

ついに憧れの彼女と初デート…! のはずが待ち合わせ場所で突如彼女が失踪してしまい、動揺する高校生のジェイク。老人ホームに送って行く途中だった助手席に座る彼のじーさんが言った。「これは誘拐だな…!」。完全なるボケ老人のじーさんに付き合わされることになったジェイクだが、じーさんの言うこともあながち間違ってなさそうで…?

やや対象年齢低めな印象ながら、優しいコメディで最後はほっこり。

7.0

「ボケ老人が迷惑捜査に乗り出す」入り口のコメディ、なかなか概要からすると面白そうじゃないですか。おまけに「じーさん」役はあのジェームズ・カーンですよ。ゴッドファーザーの。ソニーですよソニー。あのチンピラ風の長男が完全なるじーさんになっちゃってもう。当たり前ですが。

ということでタイトルにも出てくる“じーさん”、ジェームズ・カーン演じるルーは、老人ホームに住んでいて(確か)月に2回家に戻ってきては家族で食事するのを楽しみにしているじーさんなんですが…車から降りるときにも「あのバンが見張ってるから降りられない」などと言い出す被害妄想の塊のような人で、まあ早い話がボケてるわけですよ。

元々特殊部隊にいた凄腕の男だったらしいんですが…ただ何度も聞かされる武勇伝もどこまで本当かはわかったもんじゃないし、絶対妄想入ってんだろジジイ、という状況。

彼の孫である主人公のジェイクは、この日じーさんが来ることをすっかり忘れたまま憧れの彼女と初デートの約束を取り付けますが、じーさん来るから食事は一緒にしなさいというファミリー優先の掟(と言うとゴッドファーザーっぽくなる)に従い、とりあえずじーさん交えて飯食ってから彼女迎えに行くんだけど時間もないからじーさんを助手席に乗せて老人ホームに送ってから彼女とウハウハだぜ、という経緯。

しかしそのじーさんを送っていく途中に彼女にトラブル発生、待ち合わせ場所に行っても姿は見えず、電話をかけても近くに捨てられた彼女のスマホが見つかるような状況。そこですかさずじーさんは言うわけです。「これは…誘拐だな! 事件だ!!」。

ジェイクは当然じーさんがボケていると思っているので信じないんですが、一緒に行くはずだったパーティ会場となる親友の家に電話をかけてまだ彼女が来ていなかったら俺の言うことを聞けというじーさんに従い、彼の“名調査”にお付き合いさせられることになるわけですが…。

だいぶ概要からするとコメディ色が強い感じに書いちゃいましたが、そこまでドコメディというわけでもなく、割と真っ当に少年とじーさんの絆を描くコメディドラマというところでしょうか。実は最後はうっかりちょっとホロリと来ちゃったりして。我ながら涙腺が弱いぜ…!

ボケてるかもしれないじーさんが昔の仲間を集めて彼女を救い出してやるぜ、という最近割と多い気がするじーさん活躍系の映画なんですが、やはりご多分に漏れずかなりのご都合主義的展開なのは否めず、敵の動きも甘々です。一応アクション要素もあるんですがバイオレンス感はゼロ。不自然なほど死ぬ人間が出てきません。が、そこが良いんだなと途中で思いました。

思うにこれは主人公・ジェイクのフィルターを通したじーさん再評価のお話なので、じーさんが「俺が人を殺すところなんて見せたくない」と思ったのかどうかはわかりませんが、一貫して残酷さを排除しているんですよね。最近流行りのサクサク殺しちゃうぜ的な展開とは無縁の、とにかくゆるくて甘い戦いが中心になってるんですよ。

それがダメだなーつまんねーなーっていうのもあるにはあるんですが、ただ「じーさんが孫に良いところを見せる」という意味ではすごく優しくて良い話なんじゃないかという気もして。「こういうじーさんだったらいいな」みたいな願望をそのまま演じて見せてくれるじーさん的なイメージ。いくらマジ凄腕だったとしてもバッサバッサ全員斬り殺して最終的には死体の山の頂点で「どうだじーさんを尊敬しろ」なんてキツイじゃないですか。

そういう教育的観点からも優しい、良いじーさんの「本当の姿」を一つの事件を通して孫に伝えた上で、「人生の先輩方を尊重しろよ」という若者に対するメッセージを込めているというなかなか捨て置けない魅力のある映画かもしれません。

かつての仲間を集めるのも割と好きではあるんですが、時代錯誤感の演出がやや大げさだし、そういうご都合主義的ゆるい戦いを経てのエンディングというのはやっぱりちょっと対象年齢が低いのかなーという気はしました。それこそまだじーさんばーさんがご存命の若い人たち、言ってみればまんまジェイクぐらいの年頃の子が観ると良いのかなという感じ。

とは言え最後までしっかり楽しませようとする意欲がある、きちんと作った優しいアクションコメディという意味ではなかなか悪くないと思います。すごくオススメとまでは言えないけど、気楽に何か観たいときには悪くないチョイスじゃないかなと。

ネタバレー・じーさん

お恥ずかしながら、最後死んだ→死んでませんでしたのコンボは予想しておらず、思わずグッと来てしまい。死んだときも戻ってきたときもちょっと泣いたという。なんだかんだ言って僕の純粋な人柄が忍ばれます。死んでないよ。

もーあちこちで「今やっちゃえよ!」というシーンが多い敵の優しさには参りましたが、まあそういう話だからしょうがないんでしょう。ハッキングするシーンもイマイチギミックの意味がわからない&簡単にハッキングしすぎとかいろいろツッコミどころがあった気はしますが、その辺はもう「コメディなんで」で片付けるのが得策かなぁと。

にしても最後のジェイクの髪型はどうなの? 一皮むけたにしてもベタなイキリ髪型っぽいあれはどうなの?? とこれまたツッコミたくなりましたが、そのゆるさがまたこの映画の良さなのかもしれませんね。

このシーンがイイ!

じーさんが最初にアクションを起こすシーンは良かったですね。ああいうの、孫はたまんないでしょう。

ココが○

優しいところ、かなぁ。勝手なイメージではハリウッドとかだと多分もっと危ぶまれる感じにすると思うんですよ。最初から最後までゆるい、っていうのが良いような気がします。

ココが×

結局ツッコミどころは満載なので、細かい部分を気にしてたらかなり厳しいお話ではあります。

それとやや中だるみ感はあったかな、やっぱり。短い映画なのでそこまで気になるほどでもなかったんですが。

MVA

まーこれは順当にこの人かなぁ。

ジェームズ・カーン(じーさん役)

なんせソニーですからね。くどいようですが。あの人がこういう役をやるようになった、そしてそれが似合ってるというのがなかなか映画ファンとしては感慨深いものがあります。

元々腕がたったであろう雰囲気だったり、ちょっといたずらな表情だったり、まあさすがに良かったと思います。

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