映画レビュー1239 『アオラレ』
今回はウォッチパーティより。
まーこういう映画は盛り上がるだろうなと思ってたら圧勝で選ばれてました。
アオラレ
デリック・ボルテ
カール・エルスワース
ラッセル・クロウ
カレン・ピストリアス
ガブリエル・ベイトマン
ジミ・シンプソン
オースティン・P・マッケンジー
ジュリエンヌ・ジョイナー
スティーヴン・ルイス・グラッシュ
2020年8月14日 アメリカ
93分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)

“ただの煽り運転”かと思いきや、サイコな恐怖が生々しくて◎。
- ちょっとクラクション鳴らしたのが運の尽き、殺意高く追ってくるサイコパス
- ただの「運転中のトラブル」からの話の広がりはなかなか
- いわゆるマジキチすぎて逆に清々しい振り切った作り
- ただ主人公は主人公で全面擁護できず、若干モヤモヤ
あらすじ
観てみると結構邦題も微妙な気がするんですが、ただ昨今の日本の社会情勢を汲み取って上手く宣伝に活用したという意味ではなかなか巧みな邦題な気がします。
全体としては不満はあるもののエンタメとしては悪くない作りかな、という感じ。
「遅刻の常習犯」、レイチェル(カレン・ピストリアス)はその日もいろいろギリギリで急いでおり、息子を乗せてドライブ中。
信号が変わるも一向に発進しようとしない前車に苛つき、結構強めにクラクションを鳴らすも反応がないので追い抜きますが、その後その車が追ってきてコンタクトを取ってきます。
その車に乗っていた大男(ラッセル・クロウ)は「マナーがなってない」とダメ出し。「気付かなかった自分も悪いが君も悪い。お互い謝って終わりにしよう」と言ってきますが私は悪くないの一点張りのレイチェルは謝らず、そのままスルーして走り去ります。
その後少しして、またもその男が追ってきていることに気付いたレイチェル、ガソリンスタンドで助けを求め、その場に居合わせた男性が該当車のナンバーを確認しますがその後になんと思いっきり轢かれます。ワイコー!
かくして明確な殺意の元、レイチェルを執拗に追ってくる大男。二人の対決やいかに…!
どっちもどっち
あらすじからもわかる通り、まず大前提としてレイチェルも結構なクソ野郎(野郎じゃないですけど)というのがポイントで、それによって引っかかりもするし好き嫌いが分かれそうでもあるんですが、ただそれはそれでリアルでもある、というのがポイントかなと。
「最初に謝っておけば…」なんて思いますが当然それは後の祭り、まさかここまで頭のおかしい男だとは思いもせずに1日サイコパスに対峙させられる恐怖との戦いを描きますよ、と。
実は物語冒頭で問題の大男がある家に赴いて殺人を犯し、その家を燃やすシーンが描かれるんですが、もうその時点で「えー思ってたのと違う!」とびっくりすることウケアイです。煽り運転の話じゃないのかよ、と。
ただ最初に書いた通り、「アオラレ」という邦題は今の日本の社会情勢を汲み取ったピンポイントなタイトルになっていて、実際ほとんど「アオラレ」るシーンなんて無いんですが、ただ車の運転中のトラブルから大問題に発生した…という意味でまあ許容範囲かなと思います。
が、ちょっと偽タイトル感はあるのでそこが気に食わない人はいそう。
発端となるレイチェルのクラクションはなかなか大きめのもので、明確に「いい加減にしろよ!」的な意志を感じ取れるものなのでラッセル・クロウがお怒りになるのも無理はないんですよ。
んでその後ラッセルも「そういうときはもっと軽くプッと鳴らすものだ」みたいなことを言うんですよね。で、お互い謝って終わりにしようと言ってくるこの段階までは確実にラッセルの方が正しいように見えます。この時点では結構紳士的に話してくるし。オープニングの殺人は置いといて。
でもレイチェルは謝らず、強気にシカトすることで悲劇が幕を開け、彼女が逃げる間に巻き込まれる人間が続出します。レイチェルと親しいか親しくないかに関わらず、どんどん被害が広がっていくんですよ。本当の邦題は「マキコマレ」じゃねーのかってぐらいに。
もちろん「こんなサイコパスだとは思わなかった」のも事実だとは思いますが、とは言えテメエの小さなプライドで謝らなかったがためにこんなことになっとんやぞ、とレイチェルに対してもちょっと怒りが湧いてくるのがなかなか珍しい話だと思いますね。全面的に主人公を応援したいと思えない話になっていて。
一応話としては、スピルバーグ初長編作でおなじみの「激突!」を膨らませたような感じではあるんですが、あれよりも明確に主人公(レイチェル)に非がある分そうそう勧善懲悪に観られないし、とは言えラッセルもいくらなんでもやりすぎだろ感強いしで「どっちも感情移入できない」のもまた珍しいですね。
そうなるともはやこっちは完全なる観客として傍観するしか無いんですが、それはそれで「他人事だと面白い」みたいな人間の悪いところをくすぐってくれる意地の悪いお話のような気もして意外と悪くないな、みたいな。どっちが死んでもいいぞ! みたいな。
そこがねー、本当になかなか不思議な感じで面白かったですね。
安全運転第一で
まあ深みがあるような話でもないので、もう本当に娯楽として消費するのみの映画ではあるんですが、それにしてはあんまり他にないタイプの感じなだけにまずまずでしたね。期待より面白かったです。
ウォッチパーティはタイトルに合わせて「ヤラレ…!」「コロサレ…!」等非常に盛り上がったので、みんなでワイワイ観るにもいいでしょう。まさに他人事として楽しめるお話です。
ベタですが運転中はカリカリしがちなだけに、あんまり感情的になって行動しないほうがいいな…と改めて帯を締め直した次第です。安全運転第一。
このシーンがイイ!
ファミレスのシーンがもう行き過ぎてて逆に笑っちゃってよかったですね。予想の上を行くサイコパス感が。
ココが○
「どっちも悪い」のもそうですが、綺麗事にしていない点はリアル社会感があって好きです。悲劇のヒロイン的な見せ方とかラッセルに同情させる話とか出てこないのが清々しい。
ココが×
エンディングでなんかいい感じの曲を流して「良かったー」みたいな雰囲気を出してるのがマジクソでしたね。曲でごまかすんじゃねぇ、っていう。
良かった感を出してはいますが、でも登場人物たちのその後を考えると結構な後引き案件なんですよね…。それでいいんかいな、と。
MVA
まーあんまり主要人物もいないだけに、順当にこちらの方に。
ラッセル・クロウ(トム・クーパー役)
問題の運転手。巨漢。
太り過ぎだろと思いましたがお腹に詰め物をしているとかなんとか言う話でした。
最初に脚本を呼んで「絶対に出ないぞ」と決めたらしいんですが、逆にこういう役こそやるべきと思って受けたんだとか。
なんとなく耳に入ってくるプライベートのラッセルが激怒した案件を煮詰めたような演技のように見えて、そこにリアルさがあって怖いのが良かったですね。
もちろんこの役のようなひどい人間ではないのはわかりつつ、でもその凶暴性に“素質”みたいなものが垣間見えるような生々しさと言うか。
まーしかし「L.A.コンフィデンシャル」のラッセル・クロウはどこへやら、どんどん巨漢と化していきますね…。ただ女性陣には「クマっぽくてかわいい」と好評でした。マジカヨ。


