映画レビュー0849 『アップサイドダウン 重力の恋人』
今回もまたネトフリ終了間際シリーズでございます。っていうかもう劇場鑑賞以外は2択だよね。もうね。
ちなみに今回の作品はタイトルも知らない映画だったんですが、同時期終了映画の中で一番なんとなく良さげな気がしたのでチョイスしました。
アップサイドダウン 重力の恋人

恋愛映画としては今ひとつ。SF映画としては素敵!
- よくある「格差カップル」が重力まで正反対になっちゃったよ物語
- ただの困難乗り越え系から一捻り加えて興味を引っ張る
- しかし感情の動きがあっさりしすぎて恋愛としては今ひとつ
- それでも世界描写はオリジナリティ溢れていてとても素敵
しょうがないと思いつつもこの邦題はなんとかならなかったんですかねー。「重力の恋人」って日本語としても意味わからないし安っぽくなるしひどくセンスがない。このタイトルでだいぶ損してそうな気が。
設定的に珍しい話なのでちょっと説明に力を入れましょうそうしましょう。
物語の舞台は地球ではなく、とある「正反対の重力が作用している双子の惑星」です。どういう形の星なのかイマイチわからないんですが、視覚的にはそれぞれ「天井に相手の星がある」ような感じ。ちょっと「インセプション」のあの有名な街折りたたみシーンみたいな映像で。なので空がスカッと広がるような光景はございませんよと。だとするとこの双子の惑星は球体でもないのか…? まあその辺細かい話はスルーの方向でお願いします。
その双子の惑星はそれぞれ「上層の星」と「下層の星」という形に分かれていて、よくある感じですが「上層の星は富裕層」「下層の星は貧困層」が暮らしています、と。「エリジウム」の至近距離版みたいな感じですね。あっちは宇宙を介しての行き来でしたが、こっちはつながっているので物理的に引っ張れば行き来できるような環境。
ただ、そこで重要なのがタイトル通り「重力」で、それぞれ正反対の重力で「発生した星の重力に左右される」特質があるため、つまり「下層の星で生まれた人や物は永遠に下層の重力に影響される=上層の星に入ると常に上昇する」形になります。これは上層と下層を逆にしても同じ。
もう一つ重要なのが、相手の星で作られた物質は「反物質」として、相手の星に置かれると燃えてしまいます。つまり上層で作られた物は下層に来ると燃えるわけです。その機能を利用して暖房に使ってたりもします。
で、当然ながら上層と下層で貧富の差がはっきりしているために交流は禁じられているわけですが、そんなこともあまり意に介さない幼少期、二つの星が至近距離に位置する「賢者の山」という山の山頂で出会ったのが、今作の主人公ジム・スタージェス演じるアダム君とヒロインであるキルスティン・ダンスト演じるエデンですよ、と。
二人はおそらく10代前半の頃に知り合って、それから成長した後も何度も逢引を重ね愛し合う仲だったんですが、ある日ついに逢引が察知されたのか警察的な連中に追われることとなり、彼女をロープでゆっくり上層に返そうとしていたところに銃弾を食らったアダムがロープを離してしまったことでエデン落下、その事故以来交流が途絶えてしまいます。
しかしそれから10年後、下層で働きながら研究を続けるアダムは、たまたま目にしたテレビに映る女性に驚くわけです。
「エデンやで…!」と。
この世界で上下層両方の従業員を抱え、二つの世界をつなぐ唯一の大企業「トランスワールド社」で彼女が働いていると知ったアダムは、彼女と会うためにこの会社に就職することに決めるんですが…。長くなりました、あとは観てくださいということで。
この説明の長さからもわかる通り、やっぱりワレワレが暮らす普通の世界とはかなりルールが違う面があるので、その説明もしっかり劇中でしなければならない…のはわかるんですが、あらゆる場面で「こうなります」の説明が挟まるので、まず全体的にひじょーに説明臭い映画だと思います。しょうがないんですけどね。
ただもうちょっとサラッとうまく説明したり、説明なしに映像だけで理解させるシーンを増やしたりして「言わずにわからせる」作りがあったら良いのになーというのは感じました。
加えてかなり丁寧に説明している割にあちこち矛盾してそうな部分もあって、「えっ、じゃあこれおかしくない?」みたいにちょーっと引っかかる部分も結構出てきます。そもそもこの特殊な設定を除いたとしても普通に考えて「大企業がコレってコンプライアンス的にやばくね?」みたいなものも散見されるので、いろいろとアラが目立つ話ではありました。なので細かい部分には目を瞑るつもりで観た方が良いでしょう。
思うに多分、厳格にルールを決めすぎ&伝えすぎなのかもしれないですね。あくまでSFなので、もうちょっとゆるく「反物質は質が低いものだと燃える」とか曖昧な部分を残した方が突っ込みどころが減って良いのにな、といい加減な人間代表として思いました。多分監督(兼脚本)さんが真面目すぎる。悪いことではないんでしょうが。
それともう一点、物語は紛うことなき恋愛映画なんですが、肝心の感情描写がかなり軽く、せっかく良いハードルを用意していたのにあっさりクリアしてサクサク進んじゃう点がもったいない。
困難がある恋ほど燃える、そんなのは古今東西関係なく常識だと思うんですが、その困難がほぼ困難にならず、“タメ”が利かないのでグッと来ない。これがとても惜しい。
この辺はおそらくアメリカ映画だったらもっとうまく観客の心情も転がしてくれたんだろうなという気がするんですよね。やっぱりちょっと監督さんが素直すぎるのかもしれない。もうちょっと悪どく“狙って”、それこそ観客の感情をアップサイドダウンして欲しかった。恋愛面に関しては全体的にマイルドで物足りません。
とマイナス面をお伝えしてきましたが、ただその辺無視してでも観る価値があるぐらいにオリジナリティがあって美しいSFだと思います。映像面は本当にものすごく良くて素敵でした。
この辺やっぱりフランス映画だから、って気がしますね。全然詳しくないけど。なんとなく日本人が抱く「フランス」のイメージがこの映画には投影されている気がする。オシャレで華麗できらびやかなSF。
何せこういう世界なので全体的にコッテコテのCGにはなるんでしょうが、それでもそのセンスはなかなか他にないレベルのものだと思います。とにかく一つ一つのシーン、風景がとても綺麗なんですよ。
で、そこにこの映画独特のルールによる映像面での面白さが加わるわけです。履こうとしてる最中に浮いていく靴とか。地味だけどどうやって撮ったのか気になるようなシーンがたくさんあって、こと映像の作りに関してはとても良くできた映画だと思います。
まとめるとよくある「身分の差」に重力を加えて一風変わったSF恋愛映画にしましたよ、ってな感じですが、フランス映画の割に恋愛よりもSFの方が良く出来ているというのはなかなか不思議な気もします。(なのでジャンルはSFにしました)
多分作る人が作れば超の付く傑作になったぐらいのポテンシャルを感じる世界だっただけに、あちこちで目立つアラがとてももったいない映画だとは思うんですが、それでも観る価値のあるなかなか良い映画だと思います。
どちらかと言うと恋愛映画好きよりもSF映画好きにオススメしたい一本ですね。面白かったです。
このシーンがイイ!
ビジュアルは本当に印象的でとても素敵でした。
一つ上げるなら…夜の「賢者の山」かなー。幻想的でとても綺麗で。
ココが○
SFにしかできない設定とビジュアルは本当にワクワクするぐらい良いものでしたね。とてもセンスがあると思う。
ココが×
やっぱり上で散々書いたように、説明臭い部分と恋愛のあっさり感。この二つはどうしても引っかかる。
どことなくゲームっぽい感じもしたんですけどね。プレイヤー(=観客)への説明が丁寧にされて、割とあっさり障害切り抜けて進む感じ。ってゲーム化したら面白そうじゃない!? これ。
MVA
ジム・スタージェスは悪くないんですが…なんか相変わらずパッとしない感じ。この人は「鑑定士と顔のない依頼人」の印象が強すぎるかもなぁ。
久々に観たキルスティン・ダンストは、僕の中では「エターナル・サンシャイン」のイメージのままなので…だいぶ落ち着いた女性感も出て、綺麗なOLっぽさがすごく良かったですね。さすがアラサー最高だぜと言う感じ。ちょっと顔周りがポチャッとして綺麗すぎない感じがリアルで逆に良かった。
でもまあ、この映画を観た人にすればベタ過ぎると思いますがこの人にします。
ティモシー・スポール(ボブ・ボルショヴィッツ役)
ハリポタのピーター・ペティグリューでおなじみ、ちょっと癖のある雰囲気のおじさん。
新入社員のアダムに声をかけ、唯一とも言って良い“人間味のある同僚”だった彼。これで良い人のはずがない、何か裏があるはずだ…と思うのが普通だと思うんですが、さてどうでしょうか。観てみてくださいませ。
やっぱり脇役が良いと映画が引き締まるよね、というありきたりの感想をぶちまけて終わりにしたいと思います。良いキャスティングだったぜ。


