映画レビュー0323 『バニラ・スカイ』

前々から気にはなっていた作品ですが、キャメロン・クロウ監督の評価が自分の中で高まっていたこともあり、また「たまがわ」で去年高評価だったことで、満を持して観てみるぞ、と。

ただ当時から「わかりにくい」とあまり良い評判を聞かなかった映画なので、期待しすぎずに観た感じですが…。

バニラ・スカイ

Vanilla Sky
監督
脚本
音楽
主題歌
『Vanilla Sky』
ポール・マッカートニー
公開
2001年11月10日 アメリカ
上映時間
136分
製作国
アメリカ
視聴環境
TSUTAYA DISCASレンタル(DVD・TV)

バニラ・スカイ

出版界の大物として名を馳せた父の遺産を受け継ぎ、何不自由しない財産と自慢のルックスを併せ持ったプレイボーイ・デヴィッド。ある日自分の誕生日パーティにやってきたソフィアに一目惚れするが、それに嫉妬した彼のセックスフレンド・ジュリーにドライブ中の無理心中を画策され、かろうじて彼は生き延びたものの、見るも無残な顔になってしまう。

個人的“鉄の掟”破りのせいで…。

6.0

スペイン映画の「オープン・ユア・アイズ」のリメイク作品とのことですが、この元の映画は未鑑賞。話では結構元に忠実らしいです。ちなみにペネロペ・クルスは元の映画でも同じ役をやっていたそうです。

さて、なんともネタバレ回避が難しい映画なので、概要すらきちんと書けるか不明ではあるんですが…。

主人公のデヴィッドは、いわゆる「金持ちのボンボン」で何不自由しない生活を送るプレイボーイ。顔だってトム・クルーズですからね。そりゃモテるでしょうよ。そんな彼の遊び相手、要は早い話が“SF”であるジュリー(キャメロン・ディアス)ですが、彼女は困ったことに「遊ばれている」とは思っておらず、本気で彼に惚れています。「4回もヤルなんて特別よ!」と舞い上がっているご様子。確かにそれも納得、不遇の日々を送る僕でさえ4回は無理ですからね。

そんな彼女の思いを気にもとめないデヴィッドは、ある日自分の誕生日パーティに親友が連れてきたソフィア(ペネロペ・クルス)に一目惚れしてしまいます。「ストーカーがいて困っている」とジュリーをダシにお近付き、良い感じになったところでその日はお別れ。「美味しいものは極力我慢して食べない主義」だそうです。そりゃあそんだけの金とルックスがあればそうでしょう。

が、人生はわからないもの。「永遠に続く」と思われた悠々自適の生活も、本気でストーカーと化したジュリーによって打ち砕かれます。彼を自分の車の助手席に乗せたジュリーは、どうやら彼がソフィアに本気になってるらしいことから理性を失い、「4回も私の中に入ってきたくせに!!」と激高、彼を道連れにしようとガイドレールをぶち破り、橋の下に落下…。ジュリーは死亡、デヴィッドは一命は取り留めたものの、手術により顔は見るも無残に変形してしまい、自暴自棄な日々を過ごしながらもソフィアへの思いを断ち切れず…というお話。

長い概要になりましたが、これはまだ一端です。

冒頭に書いた通り、僕がまず最初にこの映画の評価としてよく聞いたのが、「わかりにくい」というご意見。確かに非常にわかりにくいです。舞台としては、どうやら殺人犯として捕まっているらしき謎のマスクマン的なデヴィッドが男と話をしているシーンが“現在”で、その話の内容として、その事故に至るまでの過程やらその後やらのお話を展開する“過去”、その過去の話の中にたまに混ざってくる“夢”、と3つの構造になっているんですが、この夢と過去の境目が曖昧(これは理由があって、なんですが)のためにどの話がどうでどうつながるのかがサッパリ、という感じ。

もうちょっとうまいやり方あるんじゃないの、と思いながら観てましたが、最後まで観ると「あえてそうした」が正解なのかとわかり、またその解答編のおかげで理解は進むこともあるので、じゃあまあそこは許しましょう、という思いにはなったんですが、ただ、僕がこの映画を評価できない唯一にして最大の理由が、自分の中での「禁じ手」を使っている、という点。

そのことを(なぜ禁じ手と考えるのか、という理由も含めて)書いてしまうとモロネタバレになるので書けないんですが、僕はこういうオチに関してはほぼ認められないんですよね。この映画だからではなく、昔からずっと。もちろんそれをぶち破る作品が出てくれば、間違いなく「こういうオチだけど最高だね!」とかいい加減なコメントを吐く自信もありますが、この映画に関してはそこまでのものはなかったな、と。

ただ、やや恋愛寄りな話の展開の部分を除けば、話の構造、テーマ、そして帰結(オチの形ではなく話としての終わりの意味で)は結構面白いものがあるとは思いました。無理難題を言えば、これこそクリストファー・ノーランが撮っていたら、かなり評価できるものになっていたような気がします。おそらくは、もっとSF(セフレじゃなくてサイエンスフィクションの方ね)に寄せる感じでしょうか。見せ方もだいぶ変わるでしょう。こっちはだいぶ恋愛要素が強く、最終的に「ああSF(同)だったのか」と後付けで知らされるような話の作りになっているので、その辺の噛み合わせがうまく行ってないような印象がありました。

おそらくはこの映画のジャンルは「恋愛ベースのSFサスペンス」という感じだと思いますが、それならきっとこの映画の見せ方はちょっとマズイというか、あえてミスリードを狙っているような意図を感じます。その“素直じゃない”作り方が、ちょっと気に入らない、というのもありました。

まあいずれにしても、この映画は“禁じ手”がすべて。それだけに、すごくもったいないな、と。

ただその禁じ手を使わない以上、話として成り立たないとも思うので、結果的には僕には合わない映画、ということでしょう。

ネタバ・レかい

ぶっちゃけ内容はほぼ忘れてるんですが、せっかくこういう項目も作ったので書いておくと、上で「禁じ手」だって言っているのはいわゆる夢オチのことです。夢オチってもう創作物としてもっともやっちゃいけないものだと思ってるので、「夢オチかー!」って思った時点で僕の中の評価が激下がりするんですよね…。なので、「なんだかんだ言って夢オチじゃん」みたいな感覚で冷めたのは覚えてます。

ただ、夢オチにしては面白かったと感じたような記憶もあるし、もう一回観たらまたもうちょっと違った感想を抱きそうな気もします。割と好きな込み入り具合だし。2回目だと話の内容も理解しているだけに、またちょっと違った感想を抱きそうで…なんだかんだでもう一回観たいかも。

ちなみに夢オチで「なんだよ夢オチかよー!」ってガッカリしたのに…? っていう映画に「ディアボロス/悪魔の扉」があるんですが、あれもまたいつか観たいなと思ってます。あのオチは秀逸だったなぁ。

このシーンがイイ!

「誕生日おめでとう」と脚見せするキャメロン・ディアス。これしかない。いやらしすぎる。

あとラスト前のセックスシーン。これはやらしい意味ではなく、怖い。

ココが○

内容云々以前に、「バニラ・スカイ」というタイトルが素敵。そんだけ。

ココが×

“禁じ手”を除けば、やっぱり見せ方の部分でしょうか。

ただこれも物語の性質を考えるとこうせざるを得ない部分もあるし、難しいところではあります。結局はやっぱり話が自分には合わないんでしょうね…。

MVA

むぅ~ん悩ましい。ペネロペ・クルスはちょっと地味かな、という気がしました。悪くはなかったんだけど。それと、英語オンチが生意気なことを言いますが、僕としては珍しく英語の発音が少し気になったんですよね。それがスペイン訛りなのかなんなのかはわかりませんが。ただ惜しげも無くおっぱいがご挨拶してくれた辺りはきちんと評価したいと思います。いいぞ! おっぱい!( ゚∀゚)o彡°

トム・クルーズはいつも通りきちんとハマっているし、僕は嫌いではないです。が、この人の場合、「この役になっている」というよりは、「トム・クルーズがこういう状況になりました」みたいな感じというか、あくまで役も彼自身の延長線上のような感じがあるので、今回はちょっとMVAという感じではないかな、と。でも事故後のキモ顔晒しといい、やっぱりちゃんと二枚目だけで終わらないのはイイ。役どころもピッタリだし。ボンボン。

一人いいなと思ったのはカート・ラッセルなんですが、でもこの映画はこの人にしようかな、と思います。

キャメロン・ディアス(ジュリー役)

SFでありストーカーであり…物語の鍵を握る一人。

単純に女性的にもすごくいい時期だったこともあってかわいいっていうのもありましたが、役的にホラーじゃねーかっていうぐらい怖かったりもして、なかなか魅せるな、と。

怖い怖い。こういう人、ほんとにいそうだし。

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