映画レビュー1618 『宇宙人東京に現わる』

以前「2001年宇宙の旅」のWikipediaを読んでいたところ「キューブリックがこの映画に触発されて作った」とあり、ほんまかいなと思いつつ一応観てみたいなと調べたらU-NEXTにあったので観ることにしたよ、というお話です。

宇宙人東京に現わる

Warning from Space
監督

島耕二
的場徹

脚本
原案

中島源太郎

出演

川崎敬三
苅田とよみ
八木沢敏
山形勲
南部彰三
見明凡太朗
斎藤紫香
フランク・熊谷
河原侃二
永井ミエ子

音楽

大森盛太郎

公開

1956年1月29日 日本

上映時間

87分

製作国

日本

視聴環境

U-NEXT(Fire TV Stick・TV)

宇宙人東京に現わる

かなり真面目に作られた日本版アルマゲドン。

7.0
突如として日本にやってきた宇宙人、なんでも地球に危機が迫っているというが…
  • 友好的な宇宙人が日本にやってきて「地球滅亡の危機が迫っている」と警告してくる
  • なぜ日本なのかの理由付けも定番ながらしっかりしていて悪くない
  • 危機回避策も後年散々出てくる方法でなかなか先進的
  • 完全に中に人が入ってます的な宇宙人のデザインは御愛嬌

あらすじ

超B級映画なんだろうと笑うつもりで観ていたら思いの外ちゃんとしていてびっくり。

世界中で謎の円盤が発見され騒然とする中、日本各地で今度はヒトデ形の謎の生物が数体発見され正体はなんだと大騒ぎです。
ヒトデ形の連中は「パイラ人」という宇宙人だったんですが、彼らは一旦母船(?)へ帰還し「人間はこの姿を見ると逃げちゃうんスよね」と会議した結果「不服ながら醜い人間の姿に擬態して彼らに警告を発せねば」ということで偶然目にしていた人気歌手、青空ひかり(苅田とよみ)の姿になって湖に浮かび、発見を待つという豪快な手法で人間とのコンタクトを取ります。
そこにハイキング的にやってきた面々が彼女を拾い、娘代わりに家にいさせることにしますが挙動がおかしい彼女に「宇宙人じゃないか」と不信感を抱きつつ、なんやかんやあって「そうです私はパイラ人です」と名乗りまして、なんでも今はまだ肉眼では見えない新天体が数十日後には地球に衝突、滅びを迎えてしまう…という衝撃の事実を伝えてきます。
ということで非常事態に突入した地球は果たして助かるのか…といったお話です。

驚きの先進性

最初に書いた通り、キューブリックがこの映画に触発され「2001年宇宙の旅」を作るきっかけとなった作品らしいんですが、内容的にはまったく似通ってもおらず、その話が事実だとすれば単純に「宇宙SF面白そうだな」ぐらいの影響を与えたような感じでしょうか。海外の方がもっとそういう映画あったんじゃないの…? と思いますが本当のところはよくわかりません。
そんなわけでまったくあちらの映画とは違い、単純に言うと「友好的な宇宙人が地球に危機が訪れていることを知らせに来てくれて、対策として原水爆ミサイルがいいんじゃないかと言ってくる」というお話です。
で、軍拡競争に勤しむ各国よりかは原爆被害にあった唯一の国である日本の方が話を聞いてくれそう=被爆国の立場から各国に協力を願い出ればミサイルを供与してくれるんじゃないか、それによって問題の新天体が破壊できるのではないか…と。つまり対処法がまんまアルマゲドンとかディープ・インパクトなんですよね。
この流れには若干啓蒙的な、言ってみれば少々の政治的思惑を感じないでもなかったですが、裏を返せばまだこの頃は太平洋戦争の傷跡が生々しく、それ故に声を上げたい意志が社会的にも強く働いていたのかもしれません。
今だと逆に文句を言われそうなところに時代の変化と平和を訴える難しさを感じてしまいますが話が逸れるので置いといて、この映画の話。

問題のパイラ人はヒトデ形で明らかに「人が入って動いてます」とわかる動きでトコトコ歩いたりするのでチープだなとゲラゲラ笑ってたりしたんですが、実際B級感を感じさせるのはその点ぐらいで、中身は至ってまともな作品でした。
宇宙人が問題を伝えに来るも対策はなかなか上手く行かず、はてどうするか…となった先にこの映画の見せ場がある…んですがそこは少々強引かつご都合主義的な展開でもあるので、最後の方はちょっと尻すぼみかなとは思います。
ただ全体的に至って真面目に、真っ向から「宇宙人到来と地球の危機」を描いていて、まさか1950年代の邦画にこんな映画があったとは、と本当に驚きました。
タイトル的にもっとB級で、怪獣的に宇宙人がやってきてワーワーとバトルになるのかと思っていたんですが、まさかの友好的な宇宙人かつ地球滅亡モノになっているとは思いもせず、それこそ後年散々こすられる「核ミサイルで衝突回避」をこの時代に語っていたとは…。
類似の設定は他にもあったかもしれませんが、日本でこういう映画が作られていたというだけで驚きです。当然ながら邦画における宇宙人SFのパイオニア的作品とのこと。
ちなみにパイラ人の間では「地球に入っては地球に従え」ということわざがあるそうです。ほんとかよ。

世間的には低評価

正直冷やかし半分でネタ的に観たようなものだったんですが、まさかのちゃんとしたSFで世の中わからんな〜と感心してしまいました。
これは(キューブリックも言及してるんだし)結構評価されているのでは…? とIMDbを見たところ、2026年7月現在4.8という激低評価で横転しました。4.8て…。IMDbで5点を切っているのは相当な駄作だと思っているだけに横転です。(横転の念押し)
そこまでひどくないと思うんだけどな〜。
確かにところどころ安っぽさはありますが、時代を考えればこの内容はもう少し評価してあげても良くない…? と思うんですがそんなことはないんでしょうか。
キューブリックも生きていたら「(触発されたとか)そんなことは言ってない」って黒歴史認定しそうで怖い。

このシーンがイイ!

すごくどうでもいいシーンなんですが、誘拐シーンの直前、どうするどうすると天文台でてんやわんやのときに中央に進み出て「対策しなければならないんじゃないですか!」みたいなことを言った制服を着たおじさんが言い終わった後に特に周りからのリアクションもなく所在なさげにちょっと俯いて恥ずかしそうな雰囲気になっていたところがすごい笑いました。あれなんだったんだ。

あと「パイラ人って響きもなんかおかしい!」ってハイキングしてるヤング()たちが「パーイラー!(ぱーいらー)」ってやまびこ楽しんでるシーンも妙におかしい。あれもなんだったんだ。

ココが○

上に書いた通り、脚本は今でも違和感のない先進性があって良かったと思います。筋書き自体はシンプルなものの、上映時間も短いし悪くないと思うんですよね。
それと古い邦画は全部そうと言えばそうなんですが、やっぱり今とはまるで違う日本の風景が見られるのは貴重だし楽しいですね。

ココが×

ところどころの安っぽさ。
ただそれも含めて味でもあると思います。

MVA

ヒロインを演じる方が当時新人だったようですがその後の活動もあまり見えてこないので、一発屋なのか泣かず飛ばずだったのかはわかりませんがその印象を裏付けるようにイマイチパッとしなかったのが残念。
ということでこの方に。

山形勲(松田英輔役)

メガネの博士で、人間に擬態したパイラ人の女性「銀子」を引き取った家の主人。
物語的にもキーマンだし、演技的にも一番しっかりしていてよかったと思います。
それにしても彼を誘拐した怪しい男は結局どこ行ったんだ…?

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