映画レビュー0391 『ありあまるごちそう』
これも「フード・インク」同様、ビデオニュース・ドットコムで紹介されていた、食に関するドキュメンタリー映画です。
この手の話はなかなか答えも出ないし気が重くなるのであんまり気は進まないんですが、一応流れで観ることにしました。
ありあまるごちそう

考える部分は多いものの、やや情報不足。
僕個人の基本的なアレコレは「フード・インク」の方にかなりつらつら書いたので、その辺は割愛しつつ、テーマとしてやはり比べないわけにはいかないので、「フード・インク」との比較も交えながらのレビューです。
「フード・インク」は畜産業を中心に、ある種恣意的なドキュメンタリーにすることで「悪いのはこいつらだぜ」とわかりやすく伝えてくれる内容でしたが、こちらはもっと中立的で、要素として「現状こういう問題があるよ」という話を若干提示しつつ、それに関する現場の映像を通して「あとは観た人が考えてね」というスタンス。
印象的なのはラストのネスレCEOのインタビューで、「フード・インク」では完全取材拒否だったネスレがトップを出してきた点からも、このドキュメンタリーが割と中立な立場を取っていることが伺えます。
中立的な立場というのはいいもののように思えますが、僕としてはこの映画はやや情報不足に感じました。
考え方の誘導がないのは良いことではあるけれど、見方によっては「箇条書きにした問題点を並べただけ」のものに見えるし、実際僕としてはそう感じました。
あまり集中していなかったせいかもしれないし、自分の能力不足かもしれませんが、問題と現状を断片的に語らせるだけでそれに対する解も用意していないし、現実を見せた取材映像とのリンクもあまり強くなかったように思います。
これは好みの問題かもしれないし、僕の考えが間違っている可能性ももちろんあるんですが、「フード・インク」とこの映画を比べた場合、よく言えば「こっちの方が中立的で色をつけてないし、ドキュメンタリーとして正しい」かもしれません。が、僕の見方としては、「衝突を避けて無難にまとめ、結果的にボヤけた内容」になっていると思いました。
「フード・インク」は明らかに世界を牛耳る大企業を断罪した内容になっていましたが、大げさに言えば、僕はそこに映画を通した世界への戦いがあったと思います。この映画はそれがなく、悪く言えば根性なし。映画で工場見学しておしまい、というような印象です。テーマがテーマだけに、これはすごくもったいない。ただし、ネスレのトップを引っ張り出してきたことには意味があるでしょう。
ちなみに、ボヤけていると感じただけに、内容的には「フード・インク」よりもソフトな印象でしたが、映像としては最後の方で鶏を処理していく工程がかなり長く詳細に映されるため、こちらの方がより生々しく、嫌悪感を覚える人も強いのではないかと思います。
そこに「中立を装いつつも生々しさで惹きつけようとする意図」を感じ、中立を標榜するドキュメンタリーとしてはいかがなものかと思ったりもしたんですが、ただ食の問題を捉えるドキュメンタリーというのはこれからの時代確実に価値があるものだと思うので、やはり「見て、考える」題材として、一定の価値はあるように思います。
命あるものを食べて生きていくこと、そのことに目を背けるのはやはり問題だな、と。やはりなかなか考えたところで答えも出ないんですが、当たり前の裏には厳しい現実があることを理解することで、食に限らずいろんなものに対しての考え方がまた少しずつ変わっていくような気もします。
というわけで、現実を知る一つのツールとして観て損はないと思いますが、どちらかと言えば「フード・インク」をオススメします。
このシーンがイイ!
空撮のシーンはなかなかどっちも強烈なものがありましたね。
あとはやっぱり、鶏の処理工程でしょうか。これを平然とやり過ごせる人はすごいと思う。
ココが○
控え目な上映時間。これ以上長いとちょっときつかったかもしれないです。
ココが×
劇中で語られていることはそこまでレアな情報ではないんですよね。観た順番が逆だったとしても、「フード・インク」の方が知らない事実は多かったです。割と普通に生きていれば知っている情報も多いので、あえてこの映画を観る意味というのは僕自身には感じられませんでした。
MVA
これまたドキュメンタリーなのでMVAも何も無いんですが、一応。
ジャン・ジグレール(本人)
通しで出ていたのがこの人ぐらいだから、っていう以上の理由はないです。むしろもう少し落ち着いて話して欲しかった。


