映画レビュー1197 『ウエスト・サイド・ストーリー』
ぶっちゃけまったく乗り気ではなかったんですが、元となる「ウエスト・サイド物語」は母親が最も繰り返し観た映画ということもあって連れて行けとうるさいので親孝行として行ってきました。
「ノー・タイム・トゥー・ダイ」以来の劇場鑑賞。まだまだ劇場は行きづらいですね…。
ウエスト・サイド・ストーリー
トニー・クシュナー
『ウエスト・サイド物語』
アーサー・ローレンツ
アンセル・エルゴート
レイチェル・ゼグラー
アリアナ・デボーズ
デヴィッド・アルヴァレス
マイク・ファイスト
ジョシュ・アンドレス
コリー・ストール
リタ・モレノ
ブライアン・ダーシー・ジェームズ
物語がまったく合わなかった。
- アメリカ系グループ「ジェット団」 vs プエルトリコ系グループ「シャーク団」のナワバリバトル
- しかし双方のリーダーに近い人物同士が恋仲に…
- 物語はほぼ原作忠実らしい
- セットとダンスは見事なものの…
あらすじ
そもそも乗り気でなかったこともあるし、その原因となる理由(後述するアンセル問題)もあってスタートから全然盛り上がらなかったんですが、さらに想像以上にストーリーが合わなくて申し訳ないですがもう全然ダメでした。
ニューヨークのウェストサイド・マンハッタンでは、地元のアメリカ人少年で構成されている不良グループ「ジェット団」と、プエルトリコ系移民たちの不良グループ「シャーク団」が常にバッチバチやりあっていますよと。
もはやあいつら許せんと高ぶった双方のメンバーは、ダンスパーティーが行われる夜に会合を持ち、正々堂々決闘してどっちの縄張りかはっきりさせようやと申し合わせます。
一方ジェット団リーダー・リフ(マイク・ファイスト)の親友で元リーダーの先輩格・トニー(アンセル・エルゴート)もダンス会場にやってきて、初ダンスパーティーにワクワクの女子・マリア(レイチェル・ゼグラー)と出会い、二人は恋に落ちます。
しかしマリアはシャーク団リーダー・ベルナルド(デヴィッド・アルヴァレス)の妹であり、いがみ合う双方の関係者が恋仲にってことで嫌な予感…!
迫る決闘を止めてとトニーに懇願するマリア。しかし聞く耳を持たない双方のリーダー…果たして戦いは、そして二人の恋はどうなるのか…!
とあるシーンで興醒め
まず大前提として物語がやや薄めの不良バトル物だなと不満はありましたが、そこについてはそもそもミュージカルなだけに普通の映画と比べるのは酷だと承知はしています。
ただそう言いつつも、後半のとある展開(ネタバレのため伏せます)が興醒めを超えた激醒めモノだったのでもうその時点で僕の鑑賞は終了しました。こんな陳腐な話あるかよ、と。その後はずっと脳内で「しょーもな」と言いながら観ました。
世間で言われるように、確かに今だからこその多様性云々を内包した重要なテーマが込められている…のもわかりますが、その辺語るにしてはあまりにも“とあるシーン”がバカバカしすぎて、「そんな人間いるか!?」と疑問でしょうがなかったです。
多様性云々を語るならもっと良い映画も他にあるわけだし。
一緒に観に行った母曰くストーリーの大まかな部分はほぼ原作(舞台ではなく映画の方)忠実らしいので、傑作と言われる(この映画も傑作と言われているようですが)原作を観ても同じように醒めていた可能性はありますが、その問題のところの描写まで同じかどうかまではわかりません。
ただそこが違ったとしても…やっぱり全体的に薄い話だし、良くも悪くも「昔の映画っぽい」内容ではあるので、原作を今から観たところで気に入るかどうかは怪しいところ。
ちなみに母は「原作は今でも何度も観たいけど、こっちはもう一度観たいとは思わない」そうです。ベルナルドもトニーも全然かっこよくない、と文句垂れてました。見た目の問題かよ。
場外でも評価を下げざるを得ない
またどうしても触れざるを得ないのが、トニー役を演じたアンセル・エルゴートの未成年性的暴行疑惑でしょう。
はっきりとした真偽は当事者以外不明ではありますが、話によればアンセルは以前未成年の女性を襲ったそうで、「合意の上だった」と言っているそうですが相手の女性は否定している、と。ちなみにその女性はアンセルが初めての相手だったとのこと。
アンセルは当時「自分のキャリアに傷がつくからこのことは黙っておくように」言ったそうで、まあ事実なら相当なクソ野郎ですよ。「ベイビー・ドライバー」で共演したケヴィン・スペイシーがお似合いですわね。
他にも同じような被害にあったと言っている人もいるらしく、相当タチの悪いタイプではないかと思いますが…それはそれとしても、やっぱり鑑賞前にこの疑惑の件が頭にあっただけにまー楽しもうにも楽しめない。
これで役柄もクズ野郎ならまだしも、主役の(前科者ではあるものの)いいヤツ然とした人物を演じているわけで、これまたどうしても興醒めしてしまう部分がありました。
この件が明るみに出たのは撮影後だし今さら(他の関係者に迷惑がかかる意味でも)やめるわけにはいかない、のもよーくわかるんですが、スピルバーグもこの件についてコメントを拒否したらしいし、その時点でもうこの映画に愛着を持てというのは無理な話でした。
撮影時期と疑惑発覚のタイミングは仕方のない部分がありますが、せめてアンセルにせよスピルバーグにせよ、もっと真摯に対応していたらこっちの鑑賞への気持ちの入り方も全然違っていただけに…この件によって作品の評価や客の入りが低くなってしまうのは当人たち自身の立ち居振る舞いによるところも大きいのではないかなと思うわけです。
ただ世の中的に「この映画そのものは」だいぶ評価が良いようなので、まあ例によって僕はちょっと変わっているのかもしれません。
詳しくはネタバレに書きますが、あのシーンだけでもリアルさがゼロな話だと思うんだけどなぁ…。この捉え方はちょっと厳しすぎるんですかね…。
このシーンがイイ!
決闘に向かう面々とデートに向かう二人が交差するシーンはとても良かったですね。あそこは盛り上がりました。
あとは「アメリカ」のシーンも良かったな。
ココが○
ダンスとセットはさすが。すごく良かったです。ミュージカルとしてのレベルは高いと思います。不満があったのはもっぱらストーリーの部分。タイトルでも「ストーリー」言うてるしね!
ココが×
ネタバレに書いた部分がもう最大の不満点です。不満というか怒り。特に自分が嫌うタイプの展開だったのかもしれない。
あとはアンセルの疑惑とそれに対する対処。場外で評判下げてちゃダメでしょ。
MVA
唯一文句なしに良かったのはこちらのお方。
アリアナ・デボーズ(アニータ役)
ベルナルドの恋人。
ダンスのキレも素晴らしかったし、演技としても文句なし。迷わずこの人でした。
ちなみに同じ役を原作映画で演じていたリタ・モレノが今作ではお店の店主として出ています。胸アツ…!
コリー・ストールがカツラかぶって出てるのも見どころ…かもしれない。意外といい男なんですよね、この人。