映画レビュー1321 『海賊じいちゃんの贈りもの』

今回はウォッチパーティより。

ちょっと調べたビジュアルとイギリス映画の時点でもう好きそうだな、と思って結構楽しみにしていたんですが…。

海賊じいちゃんの贈りもの

What We Did on Our Holiday
監督

アンディ・ハミルトン
ガイ・ジェンキン

脚本

アンディ・ハミルトン
ガイ・ジェンキン

出演

デヴィッド・テナント
ロザムンド・パイク
ビリー・コノリー
セリア・イムリー
ベン・ミラー
エミリア・ジョーンズ
アメリア・ブルモア
ルイス・デイヴィー
ボビー・スモールブリッジ
ハリエット・ターンブル

音楽
公開

2014年9月26日 イギリス

上映時間

95分

製作国

イギリス

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)

海賊じいちゃんの贈りもの

好きそうだなと思ったら超好きだった。

9.0
爺ちゃんの願いを叶える孫たちと、喧嘩ばかりしている大人たち
  • 離婚直前夫婦とその3人の子どもが一家揃って祖父の誕生祝いへプチ旅行
  • エゴと喧嘩ばかりの大人たちに対する真っ直ぐな子どもたちが眩しい
  • スコットランドのロケーションが良すぎる
  • イギリスコメディ好きには間違いのない一本

あらすじ

予想通りにめちゃくちゃ好きでしたね。ただ我ながら本当にこの手のコメディに弱い=上げ底感がすごいので、評価としては話半分に聞いといてください。

父親の爺さん、ゴーディ(ビリー・コノリー)の誕生日パーティーに出席するため、一家揃って故郷のスコットランドへ行くことにしたマクラウドファミリーですが、夫婦は別居中で離婚の危機に瀕しており、道中も喧嘩するような有様。

しかしゴーディは末期がんに冒されているため、無駄な心労を煩わせて体に障ると良くないと考え、子どもたちにも一家の状況を取り繕うように言いつけます。

到着するもパーティーまではしばし時間があり、準備を進める大人たちを置いてゴーディ爺ちゃんはマクラウド家の子ども3人を連れて海岸へ遊びに。

ゴーディは自らの先祖であるバイキングと同じような形で見送ってほしいと孫たちに語り、その後呼びかけに応じなくなりますが…果たして…!

ザワつくキャスティング

一見すると邦題がなんか安っぽいよなぁと思うんですが、これはこれでちゃんと内容を観てつけた感じがして実は悪くないです。

配給についてはよくわかっていませんが、なんとなくこの手のミニシアター系っぽいヨーロッパのコメディは割と考えてちゃんと邦題をつけている映画が多い気がするんですよね。仕事が雑じゃないというか。

この映画もその流れを汲んだ感じで、こういった映画がもっとシネコンでバンバンお客さんが入るようになれば多少は日本の映画文化も変わるんじゃないかなーとか適当に思ってますがまあきっとそんな時代は永遠に訪れないので置いておきましょう。

最初に書いた通り、例によっていかにも自分が好きそうだなと思ったら実際その通り好きだったタイプの映画で、もう言うまでもなく最高でした。いくらでも観られる系。

流れとしてはある程度予想通りに収まるお決まり感もあるので、自分でもなんで“飽ききった”アメリカ系の同様のコメディとここまで評価が変わるのかなと不思議ではあるんですが、やっぱりイギリス映画にはアメリカ映画とは違った文脈みたいなものが感じられ、そこが好きなんだろうなと思います。

あんまりいい加減なことは言えませんが、やっぱりなんとなくアメリカ映画のこの手のやつと比べると、イギリス映画の方がウィットに富んでいるような気がするんですよ。適当に言ってますけどね。

ちょっと知的というか、「ただ一緒にトラブルを経てよりを戻しました」みたいなどうでもいいアメリカ映画の感覚とは違って、それなりに登場人物に思いがあったり、芯のようなものが感じられる気がして、そこがすごくリアルだし現実感もあって良いのかな、とか。

それと良い意味で世界が狭く、無駄に環境を広げないところも良さかなと思います。主人公の周りの人たちだけで完結する箱庭感みたいなものが感情移入を助けているような。

最近観た中で一番この映画に近いなと感じたのは「ウイスキーと2人の花嫁」なんですが、あれは「ウイスキーが好き、飲みたい」という一心で話が進むバカらしさの中のいじらしさに芯があったし、それに加えて「顔の見えるコミュニティ」である小さな島という限定した環境の話なのがわかりやすさと親しみやすさに繋がっていたとかいう噂なんですが、今作に関しても舞台はほぼ爺ちゃん地元のスコットランドの数か所(なんなら家と海岸ぐらい)だけだし、主要人物も主人公の家族でほぼ固まってるし、他に出てくる人たちも狭いコミュニティの中にいる人たちばかり。

そのまとまり感の中、やや重めのテーマを軽快に描くスタイルはやっぱりイギリス映画らしい、イギリス映画だからこそだなと思うんですよ。

軽快というのはジャンルとして、つまりコメディとしての演出的な面はもちろんですが、単純に展開が早いのもありました。すごくサクサク進むんですよ。

序盤は物語としては本当に特に意味のないどうでもいい家族の姿が描かれるんですが、それもすごくテンポが良いから別に「なんの話?」みたいに気になることもないし、むしろそのどうでもいいエピソードによって家族それぞれの性格が見えてくるのがすごくお上手でした。

さて登場人物としては、まずパーティーの主役である爺ちゃんがいて、彼には2人の息子がいます。

兄のギャヴィンはおそらく実家で妻とともに爺ちゃんの面倒を見ていると思われますが、かなりのお金持ちっぽいご様子。どっかで見たことあるなと思ったら「ジョニー・イングリッシュ」シリーズの助手の人でした。最高じゃん。

ギャヴィンには一人息子がいて、彼は10代後半ってところでしょうか。彼は彼であんまり出番はないんですが逐一美味しいところを持っていくいいキャラしてます。

そしてギャヴィンの弟が今作の主人公であるダグ。デヴィッド・テナントが演じて います。

デヴィッド・テナントと言えばもう僕としては「ジェシカ・ジョーンズ」のド変態ヴィラン・キルグレイブのイメージしかないんですが、あれを観ていた頃から結構好きだったので映画で見られて嬉しいぞと。さすがに今作は主人公なので変態感は鳴りを潜め、等身大の大人ではありましたが。

その妻アビーを演じるのは…あのロザムンド・パイク。もうパイクさんの時点でウォッチパーティもザワついてましたね。さすがに。「この妻大丈夫なのか」って。今回はゴーンしないのか、って。震えが止まらない。

「ジェシカ・ジョーンズ」のキルグレイブと「ゴーン・ガール」のエイミーの夫婦、って両方観た人であればどれだけヤバいかよくわかると思います。もうゾクゾクしちゃう。もちろんそんな話じゃないんですけど。

で、この夫婦には3人の子どもがいて、真面目で勤勉で優しく、そしてこの映画でもっとも“大人”な長女・ロティ、とにかく口が軽くて災の予兆しか感じさせない長男のミッキー、ただひたすらかわいい次女のジェスという面々なんですが、まーこの3人がすごくいい。

一応映画上の主人公はデヴィッド・テナント演じるダグではありますが、実際はもうこの3人の子どもが主人公なんだと思います。三者三様で素晴らしい。ジェスなんて一回しれっと鼻クソ食べちゃうシーンがありましたからね。カットにしないのもまた良い。

それとまた爺ちゃんが良いこと言うんですよ。いちいち。

「いちいち良いこと言う爺ちゃん像」そのままではあるんですが、高尚すぎず下品すぎない、絶妙なバランスで含蓄のあるセリフを吐いてくる爺ちゃん像もまたたまらないものがありました。

まあ結局そんな諸々からすれば、やっぱり主要人物のキャラクターがしっかりしているから面白い、のかもしれません。

その上テーマがそれなりに重みを感じさせる、価値観に関わってくるものでもあるので、ただ笑って終わりのコメディではないのもポイント。

うーん、やっぱりこれは好きにならざるを得ない映画だな、と改めて思います。

ご夫婦でもぜひ

ウォッチパーティ中も話題になっていましたが、見せ方によってはなんならサスペンスにもできそうなぐらい結構尖った話でもあるので、ゆるゆるコメディのようで意外とほろ苦さも感じさせる辺りがやっぱりイギリスっぽくもあって良いです。

割とズバッと言っちゃいけないことを言っちゃうようなところもイギリスっぽいし、くどいようですがやっぱりこの手のイギリス映画が好きな人であれば間違いなく楽しめる映画ではないかなと思います。

子どもはいるけどとかく夫婦喧嘩しがちなご夫婦にもオススメ。お子さんたちに「大人がどう写っているのか」がよくわかる、子ども視点が感じられる意味でもなかなか面白い映画でした。

例によって僕は子どもはおろか妻も彼女もいない定期なのでもうこれ以上レビューを書く気力が失せてきたわけですが、いい加減もうちょっと違う立ち位置からレビューを残したい思いが強くなってきました。この手の自虐はもう飽きたんだよ、と。

実際のところは伏せておきますが、当ブログを開始してからこれまで一度もリア充と化した時期がないので、つまり黙っててもこの時点で14年は独り身です。

なんだよこれ。なんだよ!!(なんだよエンド)

このシーンがイイ!

終盤、パイクさんがビシッと決め台詞を吐くんですが、そこがもう最高でした。「そうだそうだ!」しか言えない。

ココが○

話の良さはもちろんですが、忘れてはならないのがロケーション。「こんなところでのんびりしたい」とチャットの発言がかぶるぐらい羨ましさしかなかったです。

劇伴もロケーションの良さに合わせて当然良かったし、もう「スコットランドが舞台の映画は良い映画」と言い切ってもいいぐらいに最高でした。

ココが×

果たして子どもたちにここまで主体性があるのか…は少し疑問に感じる面もありましたが、ただ日本とは教育も違うだろうし個性もあるだろうしでその辺を細かく突っつくのも違うのかなと思います。

むしろもう隅から隅まで好きなタイプの映画だったので、この映画が好きではない人は一体何が気に入らないのか逆に教えてほしいぐらい。

MVA

当然皆さん良かったんですが、途中からこの映画はこの人しかいないなと思って観てました。

エミリア・ジョーンズ(ロティ・マクラウド役)

メガネの長女ちゃん。まじめ。

ずっとエミリア・ジョーンズと知らずに観ていたので、「この子よく見ると美人だし演技もすごく上手いしかなり大物になるのでは…?」とか言ってたらエミリア・ジョーンズだった、っていう。まだ「コーダ あいのうた」観てないけどさ…!

しかしその後の活躍もひどく納得できる演技上手っぷりとオーラがあったように思いますね。「コーダの主演」と気付く前からそう感じて観ていたので間違いない。とんでもなくお上手でした。

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