映画レビュー0317 『情婦』
午前十時の映画祭上映作品ということで、前から観てみたかったこの作品。
「情婦」というタイトルからもっとエロス的なものを想像してたんですが、まったくそういうことはありませんでした。残念だったね。
ちなみにお恥ずかしい限りですが、初ビリー・ワイルダーです。
情婦
見応えアリ。古くならない法廷モノの名作。
久々のモノクロ映画。疲れが溜まっていたからか、夜に観てたところあまりにも眠くなって途中で止め、翌日続きを観たんですが、そんなヌルい鑑賞にも関わらずいやはやよくできてるなぁと感心。今観るとイマイチと感じるものも多い「昔の名作」ですが、これは今でも色褪せない内容の映画だと思います。
病み上がりの名弁護士ウィルフリッド卿が、その名高い手腕を発揮して不利な裁判を有利に運んでいくものの、当のウィルフリッド卿は「何か怪しい…」とモヤモヤしていたところ…という法廷劇。
筋自体はシンプルなので、あまり語るような概要はアリマセン。ただ、当然ながら被告人であるレナードが有罪になるか無罪になるかは最後まで予断を許さない話になっていて、その本筋を追っているだけでも法廷劇として十分成り立っているんですが、さらにラスト15分ぐらいでグワッと物語が大きく展開していく作りが素直に面白かったです。よくできています。
ネタバレに直結するのであんまり書けないんですが、そのラストの展開が濃厚なので、鑑賞後の味わい深さもまた大きく、人情味を感じるようなウィルフリッド卿の最後の行動もすごく良くて、いかにも「古き良き名作」を観た思い。特に文句を言いたくなるようなところはありませんでした。やっぱり法廷劇ってハマると面白いよなーと再認識。この映画が後の「推定無罪」だとかその他諸々の「名作」と言われる法廷劇に影響を与えたんでしょうね。
古い映画だからか、開幕から終わりまできっちりと無駄なシーンもなく素直に展開していくので、「法廷劇ってなんか難しそう」とか「頭使わないと着いていけなそう」とかそういう心配は必要ありません。ただ筋を追っていくだけで理解できるし、最後の展開に「おおっそういう話なのか」と素直に驚けるのではないかと。
特にその最後の展開は、何が良いって人情味があるところですよね。各登場人物の気持ちもわかるし、納得行かないぜ!っていう終わり方ではないので、素直に受け止めて素直に面白かったな、と言えるような。そんな映画ではないかと思います。
余談ですが、今の時代だと男女逆になるかもな…とふと思った物語でした。時代を経て違う新しさを纏った作品…かもしれません。
このシーンがイイ!
やっぱりラストのウィルフリッド卿のセリフのシーンでしょうか。「そうでないと!」とニンマリ。
ココが○
古さ故かもしれませんが、法定劇としては至ってオーソドックスで、「いやそれは異議アリだろう」と思ってるとちゃんと異議アリ! となるし、小難しい話は一切無いのにきちんと法廷劇として成立してるしで、「法廷サスペンス」の入門編としてもかなりいい映画ではないかと思います。
他が難しい、ってわけでもないんですが、「法廷サスペンスって敷居が高そう」なんて思ってる人には、ちょっと観て頂きたいな、と。
ココが×
特にコレと言った不満はナシ。想像以上に「普通に観られる名作」でした。古いとなかなかその「普通に観られる」っていうのが難しいことも多いんですが。
男女とお金の話なので、今でもまったくリアリティを失っていません。
MVA
これはちょっと迷いましたが…この人かなー。
マレーネ・ディートリッヒ(クリスチーネ役)
いわゆるタイトルの「情婦」はこの人のことなんですが、最初に出てきた時からいかにも怪しいふてぶてしさを撒き散らしていて、「ああ、この人キーマンなのね」と思って観てたんですが、ナルホドそういうことなのか、と最後はちょっと予想外。いい演技でした。
でも他のウィルフリッド卿だったりその付き添いの看護師だったり、他にもいい役者さんが揃ってたからこそ活きたのかな、とも思います。