映画レビュー1606 『キャッシュトラック』
今まで何十年とシングルベッドで生きてきたんですが、ついに今年6月からセミダブルベッドに移行しました。
たった20cmなんてそんな変わらないんじゃないの? と半信半疑ながら導入してみたんですが想像以上に広くて超快適でこれはもう事実上王様ですね。王様になりました。
ということで今週のステイサム。
そろそろ僕の配信契約環境では彼メインの映画は枯渇してきたので、脇役の映画で続けるか否かといった感じになってきました。
そこまでして観るべきなのか…?
キャッシュトラック
ガイ・リッチー
アイヴァン・アトキンソン
マーン・デイヴィス
『ブルー・レクイエム』
ニコラ・ブークリエフ
ジェイソン・ステイサム
ホルト・マッキャラニー
ジェフリー・ドノヴァン
ジョシュ・ハートネット
ラズ・アロンソ
ラウル・カスティーロ
デオビア・オパレイ
クリス・ライリー
ニアフ・アルガー
エディ・マーサン
スコット・イーストウッド
アンディ・ガルシア
2021年5月7日 アメリカ
119分
アメリカ・イギリス
U-NEXT(Fire TV Stick・TV)

かなりガチシリアスステイサム、これはこれでアリ。
- ステイサムが何者でなぜ現金輸送警備会社に入ったのか、次第にその目的が明かされていく
- ガイ・リッチー作品とは思えないぐらいに遊びがなく、ガチでマジのステイサム
- 演出も洗練されていてさすがな一方、見せ方の上手さで話の違和感をごまかしている感もあり
- 一応紅一点はいるもののかなり男臭い映画
あらすじ
映画としてはかなりヒリヒリするような内容でだいぶ予想と違って面白かったんですが不満もあり、といったところ。
とある襲撃事件によって現金輸送専門の警備会社の警備員2名が射殺され、欠員が出たために募集したところ明らかに普通っぽくない男、パトリック(ジェイソン・ステイサム)が応募してきてギリギリ採用、通常は二人で業務にあたりますがOJT的に彼の面接官だったブレット(ホルト・マッキャラニー)と最初からパトリックとバッチバチで相性が悪そうなデイヴ(ジョシュ・ハートネット)の二人も共に乗り込んでお仕事を覚えるターンです。
あるときブレットが業務中に人質に取られる事件が発生し、おしっこ漏れそうな勢いで大慌てなデイヴに「自分の身だけ守っておけ」と命じたパトリックは襲撃犯の隙をついて皆殺し、三人無事生還で英雄視されますが「あいつ絶対やべーだろ…」とヒソヒソするブレットとデイヴ。
普通の警備員があんな冷静に皆殺しにできるはずがない、なにか裏があるはずだ…と裏ステイサムを見ていきましょう、という映画です。
丸くなったガイ・リッチー
元は2004年のフランス映画「ブルー・レクイエム」のリメイク映画だそうです。今調べたらU-NEXTにあった(相変わらず優秀)ので今度観ようかと思います。おそらく主人公だと思われますがステイサムの立ち位置の方の髪型がステイサムに似ていてちょっと面白い。
今作のステイサムは元職ではなく現職なんですが、“何の”なのかは知らずに観た方がおそらく楽しめると思われるので伏せておきましょう。とりあえず相変わらず強いです。そのポジションの割に妙に強いのもちょっと面白いところですがこれはリメイク元もそうなんでしょうかね。
簡単に言ってしまえば現金輸送専門警備会社を舞台にステイサムの個人的な復讐を描く映画なんですが、規模感がちょうどいいというか、彼の目的である復讐相手が誰なのかを探る要素と実際の相手とがあまり込み入っておらず、またガイ・リッチーの映画としてもこねくり回すような悪癖は観られず、比較的万人向けのクライムアクションスリラーとして評価されやすい映画ではないかと思います。
多分これ、それこそ「リボルバー」の頃…つまりリメイク元と同時代にガイ・リッチーが作っていたら相当こねくり回して複雑化させていたような気がするので、最近は丸くなったと言うか変な虚栄心が無くなったような気がしてこれはこれで良い作風。
昔のガイ・リッチーはロック、ストック以下略のようにハマると面白いもののそうでないと鼻につくことが多かった印象なんですが、ここ最近は“らしい”作りの良さがありつつ鼻につくほど主張が強くない感じになってきてちょうどいい塩梅になったように思いますね。自身の色と観客の共感がシンクロしてきているというか。あくまで僕個人の印象でしかありませんが。
それでですね。
「またどうせいつものステイサムなんでしょ」とあまり期待せずに観ていたんですが思いの外ガチな作りで中途半端感がなく、自分が好きな方面のステイサムではないもののこれはこれでちゃんとやってくれれば良し、みたいな映画だったわけですよ。
「いつものステイサム映画」と何が違うのかなと思ったんですが、やっぱりとことん真面目にやるぞ、ってところなんだと思います。
いつものは大体「それはないだろ」と(ふざけてないのに)ふざけてんのか、みたいなシーンが出てくる…つまり早い話が嘘くさい無双っぷりがあり、それが特徴でありつつもそれによって何かを毀損している部分があったと思うんですが、今作はそういった要素がなくきちんと芯の通った話になっているので良かったのかな、と。
確かに強いし現実味のないキャラクターっぽい要素はあったんですが、とは言えそれなりに引くべきところでは引くしストーリーから飛び出していないキャラクターだったので受け入れやすいものがあったのかなと思います。
いつもはストーリー<キャラクターだと思うんですよ。ステイサムって。
今作はちゃんとストーリーの中でコマとして動いてくれているキャラクターだったので、その分しっかりストーリーを味わうことが出来た…というような感覚です。この感覚伝わる!?
これも結局は監督=ガイ・リッチーのクリエイティビティによってもたらされていると思うので、やっぱりなんだかんだ監督の腕って重要だよねと当たり前のことを思いました。
いつものステイサム映画はやっぱりどうしても「ステイサムだから強けりゃいいでしょ」とか「これやらせとけばいいでしょ」みたいなものが透けて見えるんですが(おいワーキングマンおまえのことだぞ)、この映画はちゃんと「俺がステイサムを手なづけるから」と監督の意志が見えるような作りになっているというか。ガイ・リッチーは名調教師的な。
別の言い方をすればいつもは監督<ステイサムなのが今作は(ちゃんと)逆になっている感じ。
まあステイサムの映画デビュー作の監督ですからね。そういう関係性もあるのかもしれませんね。
脇役陣もしっかりしたメンバーが要所を締めていたと思うし、総合的に見て「いつものステイサム映画」とはレベルが違うのは当然、といったところでしょうか。
味付け上手
一方で見せ方が上手なのでごまかされがちですが、ところどころで違和感があったのも事実です。
いくらなんでも簡単に襲われすぎな警備会社(現金輸送車)、いい加減もっとちゃんと対策しろよとか。
とある役柄で出てくるアンディ・ガルシアの便利さとか。彼の立場を考えれば便利に使われてるその立ち位置はおかしいでしょと。
逃げていった襲撃犯たちのシーンもいろいろおかしいし。
細かいところをつつけば結構あちこちボロが出てくる話だなと思います。
ただそれも演出の巧みさとシリアスな雰囲気であまり目立たなくしているのが上手い。味付けでごまかしているというか。
で、それに乗ってあげてもいいなと思えるぐらいに上手に見せてくれたので面白かったね、という感想です。
笑いどころ(ほぼ)ゼロのステイサム映画ですが、むしろこっちを本筋にするべきではと思えるような力作でした。
どうでもいいステイサムからおもしろステイサムまで、いろいろ観てきたからこそ評価したい一本かもしれません。
このシーンがイイ!
ブラックフライデーでの一連のシーンは緊張感たっぷりだしそれぞれの動きが気になるしでさすがの見せ場でしたね。
あとどうでもいいシーンとしては全員が同じ方向を向きながら会話してるシーンが「そんなわけねえだろ」と面白かったです。ステイサムは反対側向けよ。
ココが○
ここまでシリアスなガイ・リッチー作品は観た記憶がないので、こっち方面も上手いんだと収穫でした。もっとこっちの作風も観てみたいですね。
ココが×
ポツポツと気になる箇所があるところ。まあ些細な点ではありますが。
MVA
相変わらず安定感のあるステイサムも良かったんですが芸がないのでこちらの方に。
スコット・イーストウッド(ジャン役)
元軍人のヤバいやつ。
ご存知クリント・イーストウッドの息子さんですが、今まではどうしてもその肩書が前提にある感じだったのが今作を観て初めて一人の俳優として認識できたというか、すごく偉そうですが「ちゃんとした役者」として評価できる人だなと思いました。親の七光りじゃないぞと。
めちゃくちゃクソ野郎なんですが、そのクソっぷりをなかなかいい感じに演じていて良かったんですよね。
やっぱり汚れ役がちゃんとできる人はいい役者さんだと思うので。
ずっと「こいつ絶対なにかやらかすだろ」と思わせる生意気な感じが良かったと思います。


