映画レビュー1176 『ヨンジャの全盛時代』

偶然ツイッターで目にした評価が気になって観てみました。例によってJAIHOです。

ヨンジャの全盛時代

Yeong-Ja’s Heydays
監督

キム・ホソン

脚本

チョ・ソンジャク

出演

ソン・ジェホ
ヨム・ボクスン
チェ・ブラム

音楽

チョン・ソンジョ

公開

1975年2月11日 韓国

上映時間

103分

製作国

韓国

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

ヨンジャの全盛時代

昭和っぽいメロドラマがむしろ良い。

7.0
ひたすら落ちていく女性と、彼女をひたすら愛する男
  • 出会った頃から一途に愛する男と、転落していく女性のメロドラマ
  • ひたすら弱者としてのヒロインの悲しさがありつつも、どこか温かい物語
  • 韓国の大俳優ソン・ジェホの若かりし頃の作品
  • ごまかし口笛シーンの衝撃

あらすじ

最近ちょっとバタバタしておりまして、鑑賞からちょっと間が空いてしまい、あんまり詳細を覚えていないという悲しみ。でもごまかしつつレビューしていきます。

かつて鉄工所で働いていたチャンス(ソン・ジェホ)は、社長宅で家政婦として働くヨンジャ(ヨム・ボクスン)に惚れ求婚するも兵役のため、一旦ベトナムへ。

3年後、戻ってきたチャンスは警察で偶然ヨンジャと再会するも、彼女は売春婦に身をやつしていたのでした。

ヨンジャはチャンスがベトナムへ行ったあと、勤務先の社長の息子に無理やり関係を結ばされ、しかもその関係が社長夫人にバレたことで家を追い出されてしまい、その後職を転々としつつ片腕を失う事故を経て、ついに売春婦として生きていくことになってしまいます。

その姿を見たチャンスは今も変わらず彼女への愛を持ってなんとか二人で暮らせるように努力していきますが…あとはご覧ください。

チャンスのキャラクターの良さ

まず大前提として一応お断りしておきますが、売春婦=社会の底辺みたいな見方は僕も好きではないので、職業的に低く見て諸々書いているわけではないよ、というのは言っておきたいと思います。

当然好きでやっている人もいるだろうし、誇りを持ってやっている人もいるだろうし。ただこの映画では物語上、「落ちるところまで落ちた」アイコンとして売春婦という職業が使われているため、それに沿った形でこっちも観たし書くよという前提です。

ただまあ設定としては一昔前であればよくあるものでもあるし、どうしても公的なセーフティーネットが機能していないときに「生きるために手っ取り早い職業」としてセックスワーカーを選択せざるを得ない現実があるのは今も変わっていないことは事実でもあるので、どうしても世間的な立ち位置は「弱者」に見えてしまう、というのは否めません。給付金出したれよマジで。

上記あらすじではだいぶ端折っていますが、チャンスがいない3年間「ヨンジャに何が起こったのか」はざっくりと過去描写で語られます。

社長のドラ息子にレイプされた挙げ句彼女が誘惑したと見なされて追い出され、その後就いた工場勤務は給料が雀の涙で生活できず、仕方なくキャバ嬢的な夜のお仕事に就くも適応できずにここでも落ち着けず…とまさに“職を転々”とすることになり、さらに(詳細は書きませんが)とある事故によって片腕を失ったことできっと何かが切れてしまったのか、諦めてしまったのか…売春婦の道を選択することになります。

とは言え売春婦としても片腕が無いのはハンディキャップになってしまうため、ここでも彼女の立場は弱いわけです。「過酷な3年間」を経てすっかり強く…というか開き直ったかのように性格も変わってしまった彼女は、そこで強かに生きていくことで“適応”しますが、そこに現れたのが「かつての自分を好きだった」男、チャンス。

変わり果てた自分を拒絶される恐怖もあったんだろうと思いますが、自暴自棄に生きるヨンジャに対し、それでも変わらず健気に愛情を注ぐチャンスの姿がなんとも泣けます。

チャンスはチャンスでやっぱり年代的な部分もあって、今となっては「それはどうなの」みたいな言動も見受けられるんですが、とは言えそこが実に昭和のメロドラマっぽさを強く感じさせて逆に新鮮というか、今作るんだったらきっともっと柔らかい人物像になっていたんじゃないかな、と思うんですよね。んで、多分それだと面白くない。

いわゆる(良くも悪くも)「男臭さ」みたいなものを感じさせるチャンスは、程よく不器用でたくましいながら殉愛を貫く、そのキャラクターがすごく良かったなと。

まあ完璧な男であれば話は早いんですよね。ついていけばいいでしょ、っていう。ただチャンスはそこそこ不器用で仕事も将来性のある安定した仕事には見えないし、どことなく将来に不安を感じさせる危うさがあって、そこに隙が出ると言うか、「いいから早くくっつけよ」とすぐに結論が見えてきちゃうような物語にならない辺りが上手いな、と思います。

もちろんそういう面を見てヨンジャが逡巡した、というのはなかったと思いますが、ただ“引き上げようとする側”であるチャンスも(ボイラー室で先輩のおっちゃんが言っていたように)決してヨンジャに全力を捧げられるほど余裕があるわけではないので、きっとヨンジャが抱えていたであろう「私は不幸を呼び寄せる人間なんだ」みたいな考えを打ち破るほどの力は無いがためにすんなりと行かないもどかしさがあり、そこがまたなんとも言えず良かったとも思います。

コメディでもあるらしい

おそらくこの映画、根底には(当時の)韓国の社会問題も織り交ぜつつの恋愛青春映画、なんでしょうね。

一応コメディでもあるみたいなんですが、ちょっとコメディとするにはハードすぎる部分もあるし、笑いがあるわけではないので「コメディ」と言われると若干違和感はあります。喜劇…なのかも微妙なところですが、ただ全体的にどことなく温かさがある映画なので、内容の割には観やすい映画でもあると思います。

時代的に古い映画なのでピンとこない部分もあるとは思いますが、ただこの転落の仕方は今でもありそうな気はするし、それでも強く生きようとするヨンジャの姿には励まされる人もきっといるでしょう。置かれた状況からすると信じられないぐらい強い彼女ですが、それを支えるチャンスの愛情があり、その力の強さを持って「全盛時代」なのかな、と勝手に解釈しましたがどうなんでしょうか。

派手さはありませんが良い物語だと思います。

このシーンがイイ!

どうでもいいシーンなんですが、社長のドラ息子が母親にヨンジャとの関係性を詰められたときに口笛吹いてごまかすんですよね。ここが一番衝撃を受けましたよ。マンガ以外で口笛吹いてごまかすやついるんだ! って。

ココが○

チャンスの一途さは誰でも「こうありたい」と思わせる魅力があって、そこがやっぱりこの映画の最大の魅力なのかなと思います。

ココが×

エンディングは好みが分かれそう。僕も「なるほどなぁ」と思いつつ、また違った結果を観たかったなとも思います。

MVA

主演のお二人どちらも良かったですが、こちらの方に。

ソン・ジェホ(イ・チャンス役)

一途な男。しかしチャンスって名前はどうなんだろう。

今どきなかなかこういう男っていないよなーと思って観ていましたが、だからこそ惹かれる部分があってよかったですね。

決して「昭和の男の方が良い」とは言いませんが、しかし今となっては失われた何かを持っているように見えるのも事実なので、時代の変化とともにいろいろ考えてしまう部分がありました。

とか言いながら自分もモロ昭和生まれですけどー! ヨホホホホー!

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