映画レビュー0307 『ヤング≒アダルト』

今回ご紹介は、「JUNO/ジュノ」以来の監督&脚本家コンビの映画。

「JUNO/ジュノ」はすごくセンスのイイ、ライトで観やすい映画だったので、同じく肩肘張らずに気楽に観られるんじゃないか…ってことで借りてみました。

ヤング≒アダルト

Young Adult
監督
脚本
出演
エリザベス・リーサー
コレット・ウォルフ
音楽
公開
2011年12月16日 アメリカ
上映時間
94分
製作国
アメリカ

ヤング≒アダルト

「美人で全男子憧れの存在」だったのも今は昔。37歳となった離婚経験アリのくたびれ女子・メイビスは、ある日元カレが無邪気に送ってきた「赤ちゃんの誕生パーティに来ないか?」というメールに嫌悪感を感じつつ、故郷の田舎へ車を飛ばすのであった…。

軽さの中に怖さがある。

9.0

シャーリーズ・セロンをきちんと観るのはほぼ初めてで、鑑賞前の印象としては最近予告編でよく目にした「スノーホワイト」での女王様っぷりがすごく綺麗で、イイ配役だなぁなんて思っていたんですが、この映画ではもう「くたびれダメ女子」っぷりがハンパなくハマっていて、とても女王様とは同一人物とは思えないほどの痛々しさがすごかったですね。さすが女優さんだ。メイクやら表情やら演技やら撮り方やらいろいろあるんでしょうが、この役の痛さ、そして演技らしからぬリアル感は素晴らしかったです。

そのシャーリーズ・セロン演じるメイビスは、37歳独身、離婚経験があり、多分バツイチ。作家とライターの中間…というか、基本、ゴーストライター。でも名は売れてないものの物書きとしてちゃんと食べていけてるようで、実際、元カレからのメールに反応して地元に帰ったときは、実家ではなくホテルで結構な日数を過ごしていたようなので、まあ高いホテルではないにせよ、あまりお金に困ってるような様子は無くそれなりに不自由しない生活を送っている模様。ただし、代表作は書店で叩き売られ、先行きに不安もある感じ。

そんな彼女が、はじめは嫌悪感を示していた元カレの「子供が生まれたよ」メールに悪いほうで開き直り、「退屈な奴隷生活から救ってやらないといけないんだわ!」とヨリを戻しに久しぶりに地元へ戻ることに。

ああ、開幕からかなり痛々しい。

やがて地元でかつてのいじめられっ子・マットと再会し、ダラダラと飲みながら相談しつつ正気の沙汰とは思えない「幸せな結婚生活を送る元カレとヨリを戻す作戦」を進めていく…というお話。

「こいつマジか」と思わず誰もが言ってしまうような強烈なキャラクター。久々に再会した子供が生まれたばかりの元カレに対し、「私を求めてるはずだ」なんて本気で思ってる「痛い女子」の主人公は、とても真っ当な人間とは思えませんが、「でもこういう人絶対いる」と思えるこのリアリティ、なんなんでしょう。

その辺のリアリティと、「かつてみんなの憧れの存在だったマドンナが歳を取り、痛くなった」という今まであまり描かれなかったような生々しいテーマは、世の中の多様性を感じさせる、いかにも“今っぽい”内容です。

若かった頃の栄光を忘れられず、「まだまだイケてる」と思い込んでいる主人公は、実際「美人だからこそできる」オシャレチェンジなんかもきちっと描かれていて、確かにまだまだ綺麗だし、見た目だけならイケてるかもしれない。

ただ、いかんせん中身が劇的にイケてない。

言動一つ一つに痛さがあって、それに気付いていない本人は周りからどういう目で見られるのか…という目を背けたくなるような現実を生々しく、でもこの監督&脚本家コンビらしいライトなテンポの良い展開で見せる、割と最近流行りの雰囲気を持った映画です。

話自体は全然違えど、日常感やテンポ、良い意味での軽さなんかは「50/50 フィフティ・フィフティ」辺りとも近いですね。

ただ、当たり前ですが「痛い女子を柵の外から観るだけ」の映画ではないわけで、実は観ている人も柵の中にいる、という現実感がすごく怖い。

自分はこんなに痛くないかもしれないけど、でも気付いてないだけかもしれない。痛い人を観る周りの目の冷たさは嫌だけど、でも自分もその目を持ってるかもしれない。

物語に近づけば近づくほど、他人事ではいられないリアルな怖さが、「あはははは…あはは…は………はぁ…」と少し身につまされるような、ライトな中に「笑ってるあなたは本当に“笑っていられる”人ですか?」という鋭利な問いかけを垣間見るような深さはなかなかで、改めて自分を問い直したくなるような映画でした。

大人になりきれない子どもの心を持った大人。まさに「ヤング≒アダルト」、タイトルの深さも恐れ入ります。

誰もが一つや二つ、持っているであろう心の傷に向きあう強さと、それを乗り越えるための通過儀礼を強烈なリアリティで描いた映画、「くだらねー、つまんねーな」って言っちゃう人は…向き合えない人なのかも…。

オススメです。

このシーンがイイ!

印象的なシーンも結構ありましたが、うまいなぁと思ったのはやっぱりオープニング。

一切音楽が流れないまま、ひたすら日常から「この人は痛い人です」とわからせてくれるメッセージ性は強烈でした。おまけに一発目に流れる歌の使い方がまたうまい。ほんとこの監督(と脚本家も)はセンスあるなーと思います。外さない人でしょうね、きっと。

ココが○

94分という短めの上映時間で、クドクド語りすぎず、ある程度観る人に任せて理解させる作りはお見事。

この映画は長いと一気につまらなくなる気がしますね。必要最低限のことだけを語って、あとは登場人物の性格と観る人の経験を信頼して作りました、というやり方が素敵です。

ココが×

結局のところ、劇的に何かが変わるわけではないんですよね。最終的にも「きっとこの人変わらないんだろうな」って思う部分はあります。

悪い言い方をすれば、一つ、踏ん切り付いたのかな、程度の話でしか無いです。そこがリアルでいいんですが、人によっては物足りなくなったりもするのかな、と。

MVA

主な登場人物は3人で、それぞれがしっかりハマっててすごく良かったんですが、一人選ぶなら…やっぱりこの人でしょうか。

シャーリーズ・セロン(メイビス・ゲイリー役)

この役をこれだけリアルに演じられる力量はやっぱり素直にスゴイな、と。「くたびれた感」がまたすーごいリアルなんですよねぇ。「オバちゃんになったなぁ…」みたいな感じが。

でもきちんとすると綺麗、っていう辺りのさじ加減。オープニングのインクにツバつけたりとか…もう痛くて痛くて。

マット役のパットン・オズワルドもすごく良かったです。やっぱりこういう三枚目の理解者的な人、好きだなぁ。

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