映画レビュー1568 『珈琲哲學~恋と人生の味わい方~』

この日気付いてしまったんですが、なんとU-NEXTにも「もうすぐ配信終了」があるとわかり、「俺は一生配信終了を追う生活から逃れられないんだ…」と体育座りしていました。
ちなみにU-NEXTで配信終了が迫っている映画をチェックするにはソートから確認するんですが、それもまたわかりやすくてありがたいです。
ということでそのコーナーから「インドネシア映画!? 珍しいやないか」と選んだ一本。

珈琲哲學~恋と人生の味わい方~

Filosofi Kopi
監督

アンガ・ドウィマス・サソンコ

脚本

ジェニー・ユスフ

原案

デウィ・レスタリ

出演

チコ・ジェリコ
リオ・デワント
ジュリー・エステル
ジャジャン・C・ヌール
スラメット・ラハルジョ

音楽

グレン・フレドリー

公開

2015年4月9日 インドネシア

上映時間

117分

製作国

インドネシア

視聴環境

U-NEXT(Fire TV Stick・TV)

珈琲哲學~恋と人生の味わい方~

ガワは良いものの微妙にズレてる。

6.5
多額の借金返済のため、カフェ共同経営者の2人が起死回生の一手で激ウマブレンド作るぞの巻
  • 幼馴染で一緒にカフェを経営する事務方とバリスタの2人
  • 運営方針やコーヒーへのこだわりで衝突しつつ、「完璧なコーヒー」を作れとの依頼にすべてを賭ける
  • 店での出来事や人間関係を通して成長していく人間ドラマの定番
  • “ガワ”は良くできているものの、あちこちに違和感や不満点があって残念

あらすじ

ずっと良さげな雰囲気で進むんですが、結局良さげなのは雰囲気だけで実は中身がイマイチだなとちょっと辛口な感想です。

インドネシアのジャカルタでカフェ「珈琲哲学」を経営するジョディ(リオ・デワント)は店の経営もあまりうまく行かず、父親が残した膨大な借金の返済に追われしんどい毎日を送っております。
彼の幼馴染で珈琲哲学のもう一人のオーナー・ベン(チコ・ジェリコ)はコーヒーに並々ならぬ情熱を傾けるバリスタで、そのこだわりの強さ故にジョディとは衝突してばかりの毎日です。
ベンは新聞でも紹介されるぐらいに有名なバリスタのようですが、ある日その記事を読んだと思しき人物が店に来て「完璧なブレンドのコーヒーを作ったら1000万ルピー出すからやらないか」と依頼してきます。なんでも彼の不動産契約相手がコーヒーマニアで、その彼の首を縦に振らせるために完璧なコーヒーが必要だ、と。
店の借金返済のための起死回生の一手になると踏んだジョディはベンとともに報酬を10倍に引き上げた上で承諾、ベンは最高のコーヒーを作り上げるべくこだわりの豆を仕入れ、研究に勤しみますが…あとはご覧ください。

ガワは一流

カフェ(コーヒーショップ)を舞台にしたヒューマンドラマ。
インドネシア映画というとどうしても「復讐は私にまかせて」が浮かんできて困惑するんですが、こちらはだいぶ洗練された“今っぽい”映画で、同様の欧米映画と比べても全く遜色ない作りになっております。
当たり前ですが今の時代どの国でも手軽に各国の映画が観られるようになっただけに、各国の映画のレベルが上がっていっているんだろうな…と想像したぐらいにはびっくりするほど発展途上国感のない映画でした。

なんというかクセがない。まったく。「復讐は私にまかせて」とは正反対なぐらいクセがない。
なので誰が観てもかなりスッと素直に話が入ってくる映画だと思います。
舞台となるお店もすごく綺麗で行ってみたくなる雰囲気があったし、ロケーションも素晴らしく映像も綺麗。演技もしっかりしていて演出もまったく違和感が無く、何より劇伴がテーマ(コーヒー)に合わせたかのようにとても心地の良い音楽ばかりで印象的でした。

だが…それらは全部ガワ…!
そう、ガワはめちゃくちゃ良く出来てるんですよ。本当にびっくりするぐらい。テクニックという意味では完全に一流だと思います。正直驚きました。
ただ、話自体がところどころズレてるんですよね。情報の入れ方というか。
説明が足りていない感じもなく、それなりにしっかり時間を取って背景の説明が入ったりもするのでパッと見では過不足がないんですが、肝心のところ、最も納得させるべきところだったり共感させるべきところだったりの表現が乏しいので「なんか急だな」とか「それはなくない?」みたいな感情が出てきちゃうんですよね。
若干ネタバレに近くなりますが一例として。
なんかシャキッとした大泉洋みたいな主人公の一人・バリスタのベン。
彼が途中からかなりクソ野郎感が強まってきてイライラさせるんですが、「まあそれもきっと最終的には成長していい奴になるんだろう」と思って見ていてもあんまりそういう感じがせず、最後の方で急に変化するのでこっちの感情があんまり乗ってこないんですよね。
殴ってきたやつが謝りもせずに気付いたら仲間に戻ってる、みたいな感じで。
もちろんその過程自体は描かれるんですが、そこでプラスもう一つ彼自身の内面描写が必要なところ何もなく急にまとまっていくのでちょっと複雑な気持ちにさせられました。急に終わったな、っていう。
彼の過去エピソードも結構重い話が入ってくるんですが、その実際のところも説明がないのでよくわからず、裏でストーリー展開上都合の良い悪役が動いていたようにしか見えないんですよ。
ただこれについてはもしかしたらインドネシアの人たちにとってみれば説明不要のよくある話で、「言わずともわかる」みたいなことなのかもしれないのでここだけピックアップして文句を言うのも良くないとも思うんですが。
一番ひどかったのはエンディング。
エンドロール始まってすぐにとあるシーンが入るんですが、そのシーンで衝撃を受けました。「それやるんだったらもっとフリ入れなきゃおかしくない!?」って。
かなり急なんですよ。そこの展開が。もちろん詳しくは(ここには)書きませんが。
そんな感じであちこち足りていない部分が見受けられ、なんというか…すごく綺麗なジグソーパズルだけど結構あちこち欠けてんな、みたいな感覚を覚えました。
全体的にいい感じの話になっている分タチが悪いというか、なんとなく雰囲気で「いい映画だった〜」となりそうなんですが実際はもうちょっとしっかり作れただろ、という思いが拭えません。

衝撃の3作目が気になる。

ちなみにお金の話が結構出てくるので参考までに調べたところ、2026年現在概ね100円=1ルピーなので円換算はおおよそ100分の1と考えておくとわかりやすそうです。
なので「1億の賞金」は日本円で言えば100万円。
ただ豆はドルと言っていたので単位がルピーだけ出てくるわけでもなさそうです。さすがに1億ドルは高すぎるので賞金はルピーで間違いないと思います。

なおこの映画はインドネシア国内で大ヒットしたらしく、続編も作られています。
今のところ3作目まで作られているようで、実際にポスターも見たんですが2作目は今作のエンディングの延長線上っぽいビジュアルで納得、3作目はなぜかジョディとベンが銃を構えて殺し屋感溢れるアクション風ポスターになっていて爆笑しました。
何があったんだよおまえら…!
ここまでジャンルが急変する映画は観たことがないので逆に観たくなりました。3作目。評判はだいぶ悪いようなんですが。
多分調べると出てくるので興味がある方はぜひ調べてみてください。この映画のジャケットとその続編の違いに「同じシリーズじゃないでしょ!?」と思うこと請け合いです。
ただタイトルにしっかり「ベン&ジョディ」って入ってるんですよね。
すごいわ、インドネシア。

ネタバレ哲學

観た人ならわかると思いますが、エンディング。
ベンがエルにサインを頼みつつ、ちょっと男女関係を踏み込もうとするセリフで終わります。
おかしくない!?
エルに興味持ってたのジョディの方だよね!?
あれをジョディに言わせるならわかります。でもベンは全然興味なさそうだったじゃん…。
なんなら嫌な奴ムーブしかしてなかったじゃん…。
あのエンディングでもう一段評価を下げたのは間違いありません。そうじゃねーだろ感がすごかった。
ああいうシーン撮りたかった(だけな)のかな? っていう。入れ込み方が雑すぎる。

このシーンがイイ!

やっぱり「パーフェクト」ができたときの感じはいいですよね。説明不要のいいシーンでした。

ココが○

とにかく劇伴がすごく良かったです。久々に音楽の良さを強く感じた映画でした。

ココが×

上に書いた話を除けば、「借金返済がままならない」と言っている割に店は最初っから繁盛してるっぽいので説得力がないというのも指摘しておきたいところです。そういうところから丁寧に描かないと共感できないよ、っていう。
それとこれは日本側の問題ですが、サブタイトルがマジでいらない。100%不要です。絶対「珈琲哲學」だけでいい。
実際U-NEXTはそうだったんですけどね。世間一般ではサブタイトルが付いているのが正しいタイトルのようです。

MVA

演技としては皆さん申し分なく、すごく良かったと思います。ベンのクソ野郎感も含めて。
ということで選ぶなら…この人でしょうか。

スラメット・ラハルジョ(セノ役)

激ウマコーヒー農園のおじさん。
雰囲気がめっちゃいいんですよ。好々爺感が半端なくて。「この人の悲しい顔、見たくない…!」ってすごい思いました。こんなに人が良さそうな雰囲気はなかなか出せません。

あとコーヒー批評家・エル役のジュリー・エステルも素敵でしたね。アップ&メガネ姿が最高でした。

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