映画レビュー1518 『リンダ リンダ リンダ』

お盆レンタル最後はずーっと観たかったこの作品。
ちなみにお盆レンタルの鑑賞順はTSUTAYA DISCASから送られてきた封筒から無作為に引いた順なので特に意図はありません。

リンダ リンダ リンダ

Linda Linda Linda
監督

山下敦弘

脚本

向井康介
宮下和雅子
山下敦弘

出演

ペ・ドゥナ
前田亜季
香椎由宇
関根史織
甲本雅裕
山崎優子
三村恭代
湯川潮音

音楽

ジェームス・イハ

公開

2005年7月23日 日本

上映時間

114分

製作国

日本

視聴環境

レンタルDVD(TSUTAYA DISCAS)

リンダ リンダ リンダ

何気ない日常の描き方が抜群、紛うことなき傑作です。

9.5
韓国からの留学生をボーカルに迎え、学園祭でブルーハーツお披露目のため励むガールズバンド
  • 「目に入った」から誘った韓国人留学生と元からバンドを組んでた3人の“新生バンド”が臨む学園祭
  • バンドメンバーが中心ながらバンド自体は脇に近く、それぞれの日常や高校生活が主体
  • 劇的なことは起こらず、日常的な等身大の学校生活を鮮やかに切り取った傑作
  • ペ・ドゥナが世界へ羽ばたくきっかけとなった一作

あらすじ

想像していた数倍良かったですね。めちゃくちゃ傑作だと思います。

文化祭を数日後に控えたとある地方都市の高校。
5人組のガールズバンドの1人であるギター担当の萠(湯川潮音)が骨折したことが原因でボーカルの凛子(三村恭代)とキーボードの恵(香椎由宇)が喧嘩し分裂。
恵の他に残ったドラムの響子(前田亜季)とベースの望(関根史織)はそれでもバンドをやるべく新たにボーカルを探そうと決め、「次に目の前を通った女子を誘う」と決めたところたまたまそこにやってきた韓国からの留学生・ソン(ペ・ドゥナ)を誘い、バンドを再結成します。
元々特に仲が良かったわけでもない、「顔見知り」程度だったソンと3人はバンド活動を通して次第に絆を深めていきますが、文化祭はもうすぐ。
果たして彼女たちのステージはうまくいくのでしょうか。

青春真空パック

ご承知の通りペ・ドゥナは僕の一番の推し女優なので、彼女の有名作品としてこれはいつか観なければ…ということで借りたんですが借りた直後に「20周年記念4K再上映」が決まった、というバツの悪さ。どうせなら劇場で観たかったぜ…!
一応名前の順番的にも主演はペ・ドゥナになっていますが、響子役の前田亜季と恵役の香椎由宇も主演に近く、トリプル主演といった感じ。
もう一人のメンバーである望だけ脇役感はありますが、彼女だけ役者ではなく実際のバンド(ウー)マンなんですね。でも全然気にならないぐらいお上手でした。
年齢的にはペ・ドゥナだけ少し上で当時25歳ぐらい、他のメンバーは18〜20歳ぐらいと実年齢にかなり近い役だったようです。
とは言えペ・ドゥナもまったく違和感のない混ざりっぷりでさすがでした。

タイトルからわかる通り、そのまま「ブルーハーツを学園祭で披露するガールズバンド」の映画です。ある意味それがすべてで、そこに向かっての数日間を観ていくだけです。
が、その「そこに向かっての数日間」の鮮度がもうずば抜けて素晴らしい。「青春映画の金字塔」と言われても納得しかない。演者さんたちの初々しさ含め、いわゆる「このときにしか撮れない真空パック」になっている映画でしょう。
本当に些細な、普通の高校生が普通の高校生活を送るだけの数日間で、「頑張って練習していい演奏を見せるぞ!」みたいな気負いもなく、とりあえず(メンバーチェンジもあったし)練習するぞと集まったときのちょっとしたエピソードだったり、高校生らしい甘酸っぱい恋愛だったり、優しいながら距離感を測りかねている先生だったり、日本らしいカラオケのルールに異を唱えるペ・ドゥナだったり、本当に「今もどこかで行われていそう」な一瞬を繋いだ映画といった感じなんですが、だからこそ登場人物誰もがものすごく“生きている”感覚が伝わってきて、もうずっと彼女たちを眺めていたいぐらい楽しい時間でした。
決して大げさなことは起こらず、恋愛にしてもスパイス程度であくまで添え物なのもすごく良い。
本当に「北関東の高校生たちの文化祭前の数日間を観る」感じ。
しかしそこに込められた笑いの配分もいい塩梅で、これ以上ない青春映画に仕上がっていると思います。本当にめちゃくちゃ良かった。なんなら今まで観てきた邦画の中でも一番かもしれない。
地味ながら留年した中島田さんとか、喧嘩別れしてバンドから抜けた凛子とか、中心メンバー以外の存在もすごく効いていて、「4人の青春」ではなく「とある高校の青春」になっているのも最高ですね。
果たして「青春」って何なんだと問われれば自分でも良くわからないんですが、なんかこう…青春なんですよ。全体が。
大人になると面倒を回避しようと事前に遠ざけてしまうようなこともそのまま直面してぶつかったりする様というか。
そういう場面がどこにあったよ、とかじゃないんですけどね。総体的にそういう雰囲気が見える話だったというか。
まあとにかくしてやられました。本当に。

留学生でなくてもいい気はするけどペ・ドゥナなのでヨシ

一点だけ、正直なところ「ボーカルを韓国人留学生にする」必然性はあまり感じられず、そこだけちょっと違和感があるというか…別に日本人の「ヒエラルキーの外にいるちょっと変わった女子」とかでも成立したと思うんですけどね。
ただ、それでもやっぱりそこはペ・ドゥナなので…。彼女がやってるからこそ魅力的に見える世界というのもあったと思います。
実際、監督が単純にペ・ドゥナと仕事をしたいと思ってダメ元でオファーしたら通った、という話のようなので、予め留学生にボーカルやらせる→ペ・ドゥナにしようではなく、ペ・ドゥナを使いたい→OK出たからボーカルは韓国人留学生にしようという順番っぽいし、話云々ではなくペ・ドゥナの女優としてのポテンシャルのおかげでこういう話になった、でいいんでしょう。
まあ早い話が「面白いからいいじゃん」ですよ。別に。
結果的にこの映画(と「空気人形」)に出演したおかげでペ・ドゥナは「映画と演技には国境はないんだ」と思ったそうなので、ペ・ドゥナの今の世界的な活躍のきっかけを作った作品としても非常に重要な一本と言えるでしょう。
いずれにしても彼女のファンであろうとなかろうと傑作であることは間違いないので、ぜひ一度観ていただきたいですね。公開20年後にしたり顔で言ってます。

このシーンがイイ!

印象的でいいシーン、いっぱいありましたね。
さりげないシーンですが、ソンと恵だけのシーンが(多分)2つあって、バス停のシーンとトイレのシーン、どっちもすごく良かったのはまず書いておきたいところです。
ソンがメンバー紹介をするシーンもすごく良かった。
あと「みんなパンツ見えてるよ」も笑っちゃうし。「嫌いじゃないけど好きじゃない」もすごく良い。
一番笑ったのは恵の「おめでとう」のシーン。なんだこれ、っていう。シュールすぎる。

ココが○

全部良いですね、もう。空気感から何から。セリフもすごく自然で違和感がまったくないのもポイントが高いです。
嫌なやつがいないのもいい。なんなら「グリッドマンユニバース」の学校生活はここに原点がありそうだな、と思うぐらいでしたが多分関係ないでしょう。

それと一つ書いておきたいのが、役名も役者さんも不明なんですが先生に何度か報告に来る(確か一番最初にも出てきた)男子生徒がものすごいリアルでめちゃくちゃ良かったです。
すごく特徴的というわけでもなく、普通に先生に相談したり報告したりするだけなんですが、そのセリフから言い方から何から全部がリアルでめちゃくちゃ上手だなと感動しました。密かなポイントです。

ココが×

特にありません。
ただ最後はもう1シーン、彼女たちの何かが欲しかった気はしました。
終わらせ方としては綺麗なので不満ではないんですけどね。心情的にもう一言ぐらい彼女たちの言葉を聞きたかったというか。

MVA

本当に皆さん良かったので悩ましいところです。
やっぱりペ・ドゥナ…と言いたいところですが芸が無い(?)ので今回はこちらの方にしましょう。

香椎由宇(立花恵役)

本来はキーボード担当ですがギター離脱のためギター担当に変更された系女子。
ガチ美人のビジュアル通り、ちょっと冷たそうなんですが実際はすごく優しく、ソンとの関係性がすごく良い。
ほぼデビュー作っぽいですが、もうこの頃(当時18歳)からすでに香椎由宇として完成しているビジュアルがつよつよです。綺麗すぎる。
冷たそうで気も強いけど優しいキャラクター、その感じがまたすごく高校生っぽいというか、不器用さが見える感じがすごく良かったですね。

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