映画レビュー1516 『チャンス』
お盆レンタル3本目。
結構な名作として知られている一本です。
チャンス
ジャージ・コジンスキー
『庭師 ただそこにいるだけの人』
ジャージ・コジンスキー
ピーター・セラーズ
シャーリー・マクレーン
メルヴィン・ダグラス
ジャック・ウォーデン
リチャード・ダイサート
リチャード・ベイスハート
ルース・アタウェイ
1979年12月19日 アメリカ
130分
アメリカ
レンタルBlu-ray(TSUTAYA DISCAS)

少し穿った見方をしてしまい、あまり好きになれず。
- 屋敷を出たことがない中年庭師がいきなり世間に出ていくことを余儀なくされる
- 偶然出会ったお金持ちの家に居候する形となり、思慮深く見られて持て囃される
- 全体的に皮肉っぽいコメディドラマは今の時代からすると少し合わない気が
- ピーター・セラーズの遺作であり、さすがの名演を見せる
あらすじ
ものすごく評価が高い映画なので楽しみにしていたんですが、結果合いませんでした。こういうときが一番つらい。
とあるお金持ちらしき家の屋敷に住み込みで庭師として働くチャンス(ピーター・セラーズ)。仕事をするかテレビを見るかしかない生活の彼は、ある日家主が死んでしまったことをメイドのルイーズ(ルース・アタウェイ)に知らされるもその意味するところがよくわかっていません。
やがて弁護士がやってきて屋敷を処分するため出ていくように言われ、何もわからないまま外へ出た彼は店頭で流れるテレビに集中していたところ停車していた車に挟まれて負傷、車に乗っていたお金持ちのイヴ(シャーリー・マクレーン)に検査と治療のため家に来るよう誘われます。
イヴ宅はかつて住んでいた屋敷以上の大豪邸、言われるまま滞在している間に屋敷の主人であり経済界の大物のベンジャミン(メルヴィン・ダグラス)に気に入られ、やがて大統領との会談にも同席するまでになります。
何もわかっていないまま周りにチヤホヤされどんどん立場が上がっていくチャンスですが、この先どうなるんでしょうか。
素直に受け止められない
以前、ウーピー・ゴールドバーグ主演の「チャンス!」を観たときにいくら調べてもこっちの映画ばっかり表示された記憶があり、「そこまで言うなら観ようじゃないか」といつか観るリストに入れていた一本がようやく日の目を見たよ、と。ちなみに「チャンス!」を観たのは14年前、見出しに「多分内容すぐ忘れます。」と書きましたが実際まったく覚えていません。
世間的にも「チャンス」と言えばこちらの映画っぽいですが、元々はニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき(ツァラトゥストラはこう語った)」を下敷きにした小説が原作の物語だそうで、「やっぱり古典が元になった映画は大体合わないよね」と己の教養の無さを恥じるばかりですがイマイチだったんだからしょうがない。
ピーター・セラーズ演じる主人公のチャンスは中年ですが、いわゆる(劇中で言明されてはいないものの)知的障害がある人物で、暇があったらテレビばっかり観ている人物。
半生についてはよくわかりませんが、おそらく何らかの縁があってかつての家主に「庭の仕事をすれば衣食住は面倒見てやる」みたいな形で住まわせてもらっていたんでしょうが、その家主が死んでしまったことで住む場所がなくなってしまった、というスタートです。
結局運良くまたも(しかも今まで以上に)大金持ちの家に住める形となり、余計なことを言わず思慮深いように見える会話の“間”が良いように勝手に解釈されて「これは大人物だ」的に評価されていき、どんどん祭り上げられていくわけです。
これ、どういう意図で作られた物語なのかで評価がだいぶ分かれるのではないかなと思うんですが、僕には「知的障害がある人物を勝手にありがたがる周りの人たちを皮肉っぽく描いて笑う」コメディに見えたんですよね。
なので、有り体に言ってしまえば「能力がないのにあると勘違いしている人たちを笑う」構造なので、つまりは結局知的障害者に対する差別に繋がっているんじゃないか…と思ってまったく笑えなくて。
ただ、そうだとすると僕自身「知的障害者には能力がない」と見なしている差別的な視座があるということになるので、それはそれでまた居心地が悪いというか自分も良くないなと感じちゃうしそのせいでなおさら楽しめないという。非常に難しいところです。
でも普通に考えても時代からしても、根底に「主人公は無能であり、その無能をありがたがる人たちを皮肉っている」構図があるのは間違いないと思うんですよ。知的障害云々関係なく。
そこに知的障害を持ってくるから差別だなんだ、となってしまうのかもしれないので、劇中で言明されていないこともあってそこ(知的障害)は除いて考えたほうがいいのかもしれませんが、それにしても結局主人公を無能に描き、その人を祭り上げていく周りを描くのはやっぱりどうしても居心地が悪い気がしました。
これが(どう作るのかはわかりませんが)シリアスなドラマか、もしくはもっとモロに笑わせようとしてくるコメディだったらまた違うんだと思うんですが、笑いのない皮肉なコメディ(喜劇)にしているのがたちが悪いというか…。
特にシャーリー・マクレーンとの色恋っぽい描写は本当に全然笑えなくて、どういう意図で作ったのか本当に気になります。どう観ても(神の視点が)チャンスもイヴもどっちもバカにしているようにしか見えないんですよね…。
そんな感じで終始「登場人物全員バカにした神(制作者)の視点」を感じてしまい、楽しめませんでした。
ひねくれちゃったのかも
僕のような学のない人間がなんだかんだ言ったところで的外れなんだろうとは思います。
相当に世間の評価が高いので、おそらくはそっちが確かなんでしょう。
自分には合いませんでしたが、評価している人の意見を見ると「チャンスの純粋さにグッと来た」みたいな意見が多いようなので、やっぱり僕がちょっと穿った見方をしていたのかもしれません。
ひねくれちゃって悲しいですね。我ながら。
このシーンがイイ!
ラストシーンはすごく印象的でした。綺麗だし、どこか幻想的だし。でもその意味するところはよくわかりません。
ココが○
視座が気になったのは事実ですが、映画としては退屈さを感じることもなく、その意味では悪くなかったと思います。
ココが×
上に書いた通り。
どこか差別的な面と人をバカにした視点を感じたのがすべて。
MVA
中年のシャーリー・マクレーンは初めて見ましたがまだまだかわいいですね。良かったです。
とは言えこの映画はやっぱりこの人でしょう。
ピーター・セラーズ(チャンス役)
ピーター・セラーズと言えば「博士の異常な愛情」の怪演の印象が強いんですが、すでに50を超えたこの時期にこんな「知的障害がありつつ思慮深く見える」演技でそれっぽく、どこか子どもっぽさも残した雰囲気を見せるのはやっぱり相当な演技力だなと感心しました。本当にすごい演技でしたね。
そしてこれが遺作になったという…。
元々心臓発作を起こしたあとにペースメーカーをつけていたそうで、二度目の心臓発作で亡くなったそうです。54歳没、まだまだ若いのに…。
爺さんになっても怪演してそうなタイプなだけに、もっと歳を取ってからの演技も見たかったですね…。


