映画レビュー1514 『天国に行けないパパ』
例によって公開はだいぶずれ込みましたが、鑑賞当時お盆休みということで配信にない「観たかった映画」を観るぞ企画としてTSUTAYA DISCASで5本ほどレンタルしました。
今日はその1本目です。
天国に行けないパパ
グレッグ・チャンピオン
ジョン・ブルメンタール
マイケル・ベリー
ダブニー・コールマン
マット・フリューワー
テリー・ガー
カジ=エリック・エリクセン
バリー・コービン
ジョー・パントリアーノ
トニー・パンテージズ
ザンダー・バークレー
1990年5月4日 アメリカ
97分
アメリカ
レンタルDVD(TSUTAYA DISCAS)

90年代の空気感にマッチした良コメディ。
- 平和に退職したい警察官が「血液検査の取り違い」の結果余命幾ばくもないと告げられる
- 「職務中に死亡」すれば息子に補償金を残せると知り、急に危険な現場に出向き始める
- しかしなかなか死ねず、むしろ表彰されたりとうまく行かない
- わかりやすいコメディながら深みもあり
あらすじ
事前に聞いていたほどでは…といったところでしたが、それでも好きなタイプの映画でした。
1週間後に退職を控えるシアトル市警察の刑事、バート・シンプソン(ダブニー・コールマン)は退職が近いだけにあとはもう平穏にこのまま職務を終えることができれば…と考えていますが、パトロール中にたまたま最近起こった銃器強奪事件の容疑者を発見してしまい、相棒のアーニー(マット・フリューワー)と追いかけるも「これ以上は危ない!」と中途半端にやめたことで署長から嫌味を言われる始末。
その後アーニーには「今更かよ」と言われつつ生命保険加入のための事前審査で血液検査を受けるべく病院に行ったバート、そこに偶然居合わせていたマリファナ使用歴を露見させたくないバス運転手がこっそり自身の血液をバートの血液と交換した結果、バート(本来はバス運転手)にはかなり稀少な不治の病があり、しかも末期症状で死が間近との判断がくだされます。
そのことを告げられたバートは動揺するも、「息子をハーバード大に入学させたい」夢のため、資金源として警察の補償金のことを思い出し、条件について確認すると「職務中の死亡に限り、30万ドル程度出る」と言われます。
退職まで残り数日。
果たしてバートは狙い通り、無事“死ぬ”ことができるんでしょうか。
組み立て上手
何で目にしたのかすっかり忘れましたが、「隠れた名作!」的な評判を聞いていつか観ようとリストに入れていた一本。
正直「そこまででは…」といったところでしたが、しかしいかにもゆるい、時代を感じさせるコメディっぷりはかなり好みの作りで良かったです。
これ多分現代で同じ話を作ろうとするといろいろ細かいところがうるさかったりすごく陳腐になっちゃいそうだったりで難しそうだなと思ったんですが、90年に入った辺りのご時世だとまだいろいろゆるいせいですごく話の内容なり雰囲気なりが合致しているというか、時代の空気的に「こういう話が作られそう」だし「受け入れられそう」な気がして、その時代感含めてたまんねーな、みたいな映画でした。多分全然伝わらないと思うんですが。
「死にたい人間がなかなか死ねない」みたいな話は割といろんな創作物で見かける気はするし、話自体は特に珍しいものではありません。
そんなありがちな設定ながらこの映画を面白く見せているポイントとしては、やっぱり「退職まで数日しかないのにそれまでに死ななければいけない刑事」という点でしょう。
リミットが迫っている分“急いで死なないと”いけないのになかなか死ねない、死にたいから危険な現場に行くのに死ねない、この辺がいかにもな笑いを誘います。
危険な現場が登場するのも刑事ならではだし、設定とテーマがしっかり合っているので破綻しないのがいいところ。
また別れた妻との間に一人息子がいて、その彼の未来を心配して行動するのもわかりやすくて良い。
その辺の周辺事情は少しずつ無駄なく提示されていくんですが、その攻勢の順序立てがしっかりしているのできちんとフリとして機能しているのも密かなポイントで、端的に言えば「話はベタでも組み立て方が上手なので面白くなっている」のがこの映画の力量なのかな、と思います。
コメディなのであまり声高にそういう面を押してくるわけじゃないんですが、観ていて「なんとなく情報の出し方が上手い映画だな〜」と思ったんですよね。
最初は「退職間近の閑職刑事」ぐらいの情報だったのが、子どもとの関係や元妻との関係も少しずつ小出しにしていってそれがフリとして機能してくるようになっていて、見せる順番とそれが生きる後半の脚本の構成力がしっかりしている印象がありました。
結果、やっぱりこの頃の映画はバカにできないな、という結論です。
なんというか「職人脚本家のお仕事」って感じだな、みたいな。いやみなさん職人なんだろうと思いますけど。
ちょっと今の時代のお手軽感とは違う、コメディのくせにちゃんとしてるな、みたいな気が(感覚的に)して、そこも含めて時代を感じたというか。
やっぱりこの頃の映画はいいよな〜と相変わらず思ったわけです。
山椒のような映画
最も単純に僕がその頃一番新鮮に洋画を観られてたからその頃の映画が好き、というのもあるとは思うんですよ。
でもやっぱり何度も書いていますが「映画が一番の娯楽」だった時代(の残り香がある時代)の映画というのは今の映画とはちょっと質が違うと思うんですよね。
ただのコメディでここまで感じることって無いと思うので、贔屓目があったとしてもやっぱり作りの良さというのはあったんじゃないかなと思います。
今の時代の映画には今の時代なりの良さがあるとも思うんですが、ただ総じて小粒なものが多い印象。
この映画も小粒そのものと言えばそうなんですが、小粒でもピリリと辛い山椒のような映画ですよ。
なんか爺のレビューみたいになってんな? 終わります。
このシーンがイイ!
途中バートが一人で暴走して犯人を追いかけるカーチェイスシーンがあるんですが、これがめちゃくちゃ力入ってて笑っちゃいましたね。コメディなのになんだこれ、みたいな。
ブルース・ブラザースといい、この頃のカーチェイスは力入れないとダメみたいなのがあるのか…?
ココが○
話はわかりやすく、でもそれなりにフリも効いていて作りが良い点。
「死を意識したあとの生き方」について考えさせられる辺りも良かったですね。ドラマだと説教臭くなるけどコメディだとゆるく考えさせてくれる感じが好きです。
ココが×
良い映画なんですが突き抜けて良いかと言われると微妙なところ。
この頃の映画が好きであればたまらないと思いますが、そうでない場合は割と普通かもしれないですね。
MVA
後から犯人役で若かりし頃のザンダーさんが出ていると知ってびっくりしました。全然気付かなかった…。
同じく気付かなかったんですがジョー・パントリアーノまで出ていてこれまたびっくり。意外と通好みのキャスティング。
そんな中、これまた通好み…かもしれないこちらの方に。
マット・フリューワー(アーニー・ディルス刑事役)
主人公バートの相棒の刑事。絶対儲からなそうなビジネスを夢見てます。
イケメンでもない地味な相棒なんですが、いかにも名バイプレイヤーと言った演技力と存在感が素晴らしかったですね。


