映画レビュー0321 『TIME/タイム』

劇場で予告編を観て「面白そうだな」と思いつつでも駄作だろうな、とレンタル待ちしていた映画シリーズ。

結構な劇場で公開されてそこそこヒットしたみたいですが、さて。

TIME/タイム

In Time
監督
脚本
アンドリュー・ニコル
出演
アレックス・ペティファー
ヴィンセント・カーシーザー
ジョニー・ガレッキ
音楽
公開
2011年10月28日 アメリカ
上映時間
109分
製作国
アメリカ

TIME/タイム

人類は25歳から歳を取らなくなり、腕に刻まれたデジタル時計で余命がわかるようになった近未来。毎日寿命が尽きる恐怖に怯えながら生活するスラムに住む男・ウィルは、ある日100年以上の寿命を持つ富裕層の男性を助け、その“時間”を譲り受けたことで追われる身になってしまう。

大衆向け薄味SF。

5.5

良くも悪くも想像通りの映画ではありましたね。「ガタカ」がものすごく良かっただけに、同じ監督・脚本ということで深い何かがあったりするかも、なんて期待してたんですが、明らかにこれは大衆向けのミーハー恋愛SFという感じ。どうせならサスペンスは匂わせるべきではなかった気がしますが、その辺はこの後じっくり。

この映画の舞台に生きる人たちは、みな25歳で外見上の成長が止まります。一部無理あるだろ、なんてキリアン・マーフィー的な人も出てきますがそれは置いといて、妻も娘も母親もみんな同じぐらいの年齢に見えるという男子的には夢のような世界です。

そこでは「25歳になると残り1年の余命のカウントが始まる」ようになっていて、その余命を貨幣代わりにして、コーヒーは1杯4分とかバスはドコドコまでで2時間とか、自分の命を切り売りしながら生活するわけです。当然、労働の対価も時間なので、働いたら何時間とか何分とか補充される仕組み。

ちなみに印象的だったセリフは、娼婦らしき女性の「10分1時間よ!」。普通に見れば何が何やらですが、この世界では「1時間ほどエロいことしたけりゃアンタの時間、10分頂戴するわよ」ということです。しかも外見は25だけど中身は60近いという。面白い。全然アリだね。外見中身の逆バージョンは今でも地方に行けばいそうですが、それはまた別の話でですね。

この世界では格差が存在していて、主人公ウィルの出身地であるスラムでは、みんなが残り僅かな時間を出来るだけ伸ばすようにもがきながら生きているわけですが、対して富裕層と言われる人たちは、何百年何千年、下手すると何百万年といった単位で時間を持つ人たちがいて、明らかな格差社会が描かれています。彼らは普通にしていれば永遠に死ぬことがありません。

ひょんなことからスラムではありえない“時間”を手にした主人公が、富裕層たちの住むエリアへ足を踏み入れ、その格差との戦いを始める…というストーリーです。

まず誰もが思うことでしょうが、この時間の概念は新しくて面白い。入口の説明的な部分も含めて、うまくやれば「インセプション」的にいけそうな期待も持てたんですが、まあ口コミやら噂やらで「うまくやらないよね」とわかっていたのでそこまで期待もせず。

序盤の話を観て、「実はこれは今の社会に対する風刺なのか…!?」と社会派的な期待も若干持ちましたが、「まあそんなことないよね」とわかってたのでそこまで期待もせず。(再)

搾取する側、される側。体制を作る側と、一般市民の戦い。そんな永遠のテーマになり得るいい題材だったにも関わらず、結局は男女が義賊のように時間を荒らしてちょっとオシャレに仕立てました、みたいな映画でしかなくて、予想はしていたもののガッカリしました。

映画自体の作りは決して悪くないと思うんです。そこそこ飽きずに観られたし。ただ、誰もが感じた「設定が面白い」ところの上を行っていないどころか下に行っちゃったのがものすごく残念。

ヒロイン・シルビアの父が怪しい電話をしてたり、キリアン・マーフィー扮するタイムキーパー(要は警察)の上にいる存在とか、明らかに「秩序を作る側」の存在を匂わせておいて、そこにまったく切り込んでいない点がひどく不満でした。だったらああいうシーン(シルビアパパの電話とか)、いらないでしょ。もはや続編ありきか、とも思ったんですが、他に特にそういう気配もなく、おそらくは緊張感を高めるための一種のマクガフィンだったのかな、と…。

それと微妙に絡んできたチンピラたちの存在意義も不明。おそらくは一騎打ちの場面を作りたかっただけなのかな、と思いましたが。確かに腕相撲のような殺し合いって、新鮮で毒もなくてある意味では面白いんだけど、物語上まったく出てくる意味が無いので作る側の自己満足でしか無い。浅いなー。浅い。だからミーハー向けなんだけど。

くどいようですが設定がかなり可能性を感じるものだっただけに、その素材を活かしきれてない不完全燃焼感が強い映画でした。

生き死にを語っている割にはあまり執着もしてないし、サラッとオシャレにしてます感がテーマに完敗。

個人的には、この設定を「カイジ」でお馴染みの福本伸行に書かせたら、ものすごい面白い話になるような気がする。逆に言えば、そういうシビアな世界を観たかったですね。

このシーンがイイ!

問題のシルビアパパの電話のシーン直後、キリアン・マーフィーがやってきて話すシーン。ここで期待したんですが、まあ結局は何もなく。

ココが○

設定に尽きるでしょう。逆に言えば、設定が面白いから「それなり」でも観られたとも言えます。

ココが×

上に散々書いた通り、テーマを活かしきれていない点がすべてでしょう。なかなかこのご時世、「新しいテーマ」って出てこないので、せっかくのアイデアを無駄にした感が非常にもったいないです。

MVA

アマンダ・サイフリッドは遠目だとかわいいのに、肝心のキスシーンとかだとイマイチに見えちゃったのが残念。なんというか、雰囲気キューティー。ジャスティン・ティンバーレイクはなかなか。際立ってどうこうは無かったですが、良かったです。

ただ今回は、あえてこの人に。

キリアン・マーフィー(タイムキーパー レイモンド・レオン役)

主要人物の中でもっとも25歳に見えなかった彼ですが、でも追う側だけにそれなりに“箔”が無いと余計映画が薄っぺらくなっちゃうので、まあそこは許してやってよ、ということで。

意外とこの人メインの映画は初めて観た気がしますが、きっちりとがんばってた気がします。冷酷なイメージがピッタリだけど、でも悪になり過ぎない感じが良かった。

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