映画レビュー1190 『空気人形』

本日はAmazonプライム・ビデオより。配信終了が迫ってきているとの情報を受け、ペ・ドゥナ主演作じゃー観ねばなるまいと観ました。

空気人形

Air Doll
監督

是枝裕和

脚本

是枝裕和

原作

業田良家

出演

ペ・ドゥナ
板尾創路
ARATA
高橋昌也
余貴美子
岩松了
柄本佑
オダギリジョー

音楽

world’s end girlfriend

公開

2009年9月26日 日本

上映時間

116分

製作国

日本

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

空気人形

切なくてちょっとおかしい。

8.0
愛用の“空気人形”に心が宿る
  • 空気人形に心が宿り、子どものように世に出ていく
  • それぞれうまくいかない人生を抱えた登場人物たちと“彼女”の現実的なファンタジー
  • 終盤につれてもう少し盛り上がりが欲しかったような気も
  • ペ・ドゥナの配役が見事

あらすじ

原作からそのまま持ってきたタイトルなんですが、「空気人形」と言うのは少しマイルドな印象を持たせるためのタイトルなんでしょうか。実際はいわゆるラブドールとかダッチワイフと呼ばれるやつですね。って今どきダッチワイフってあんまり言わないのかな…。

とあるアパートに暮らし、ビッグボーイの店員として働く秀雄(板尾創路)は自身が所持するラブドールに「のぞみ」と名をつけ、あたかも会話が成立しているかのように一人で会話をするなかなかの御仁です。

ある日「のぞみ」は突如一人で起き上がり、軒先の雫に触れて「キレイ」と呟くと…なんと人間になったのでした…!(いわゆるペ・ドゥナ化)

秀雄不在時に外に出て世間に触れていくのぞみは、偶然入ったレンタルビデオ店の店員・純一(ARATA)に惹かれ、そこでアルバイトも開始。

様々な人たちと出会いながら人間としての生活に慣れていくのぞみ。彼女の生活と純一、そして秀雄との関係はどうなるんでしょうか。

ペ・ドゥナ配役の妙

特に理由もなく人間化したラブドール。と言うか調べたところラブドールは高級品らしいのでやっぱりダッチワイフの方がなんかしっくり来る気がします。いかにも安物っぽい人形ですが、人間化するとペ・ドゥナですよ。アラサー真っ只中、かわいさほとばしるペ・ドゥナです。

なにせ“そういうアイテム”なだけにメイド服を着たりしてこれまためちゃくちゃかわいいんですが、アラサーでこれほど人形っぽさもコスプレも似合っちゃうペ・ドゥナのポテンシャルが恐ろしい。

彼女は日本語で演技をしていて、そんなにセリフが長くないこともあるんでしょうがあまり違和感もなくびっくりするぐらい上手です。細かいイントネーションもすごく上手い。

ただ、本当にほんの少しだけ違和感を感じるときがあって、それがどことなく「人間ではなく人形である」ことにリアリティを持たせているのがすごいな、と感心しました。

それが演技(演出)から来るものなのか、それとも母国語ではないから自然とそうなってしまうのかはわかりませんが、それを見越して起用したのであれば監督すげーな、と。

また「人形らしい」ビジュアルもすごく説得力があり、見た目だけで言えば日本人女優さんでもたくさん“それっぽい”人はいたと思いますが、同時にセリフの発し方に人形らしさを吹き込める配役としてのペ・ドゥナ、というのは本当に見事ですよ。いや去年から個人的最オシ女優っていうのもありますけど。

そんな彼女の活躍もありつつ、絶妙にファンタジックでおかしく、でも物悲しくてほんの少しエロティックな、他にないタイプの独特な映画だと思います。前回と2回連続で「独特な映画」って言ってますが良いんです。どっちも独特なんだから。

ポジション的に「秀雄の性処理係」でありながら別の男性(純一)に惹かれるという立ち位置の妙もあまり他にない不思議な人間関係(人形ですが)だし、人形としてしか見えていない秀雄と人形とは思っていない純一との対比も面白い。

その他元教師の爺さんだったりのぞみから“同類”と思われている女性だったり、あまり本筋には絡んできませんが脇役陣も妙に存在感があって不思議な生々しさがありました。

ペ・ドゥナに始まりペ・ドゥナに終わる

ですが終盤は少々盛り上がりに欠け、淡々としすぎている気がしてそこが少し好みとしては惜しかったような気もします。

ただ言わんとすることはわかるし、だからこそこういう作りなんだろうなとも思うので、これまたイチャモンレベルかもしれません。

まあでもなんだかんだ言いつつペ・ドゥナを見るだけでも一見の価値がある映画だと思います。おっぱいも出てくるし後ろ姿のフルヌードのシーンもあるんですがまあスタイルの良いこと。

それでも絶妙にエロくならない辺りも良い。そこにダッチワイフ的なものの悲哀が見て取れるとかなんとか…。

ネタバレ人形

観終わったときは最後なんでのぞみ死んじゃったの? とモヤモヤしたんですが、思い出しつつ書いていて気付きました。あれは純一が死んでしまったためにのぞみの“心”も死んで人形に戻ってしまった、ということなんでしょうね…。そう考えるとなかなか(観終わったとき以上に)切ない。

しかし「めんどくさい」のはわからないでもないけど…人形がペ・ドゥナになってたら鼻血が出るほど喜ばないか!? あそこは共感できなかったなー。

このシーンがイイ!

爺さんの家に行ったときのシーンが好きです。あと秀雄の職場でのシーンもなんか妙に刺さったな…。

それとベタですがオダジョーの登場シーンも良かったな。

監督がやりたかったらしい「息を吹き込む」シーンは確かに妙なエロさがあってここもまた良かった。

ココが○

不思議な世界観と、そこに説得力を持たせるペ・ドゥナの存在。さすがです。

ココが×

上記の通りややピークの盛り上がりに欠けるかな〜と言う気はしますが、そこはやりすぎると胡散臭くもなるし難しいところですね…。

MVA

板尾さんの“それっぽい”悲しき中年像は素晴らしくもあり悲しくもあり…自分もこうなるんちゃうかとか関西弁でしんみりしちゃいましたね…。

とは言えやっぱりこのお方。

ペ・ドゥナ(のぞみ役)

上に書いた通り、日本語もめちゃくちゃうまい上に人形っぽさを感じさせる見た目の良さとほんの少しの違和感。

コミカルさも持ち合わせてるし稀有な女優さんだなと思います。やっぱり良い。

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