映画レビュー1191 『東京物語』

本当に今更感ハンパないタイトルですが、ようやく初鑑賞です。

東京物語

Tokyo Story
監督
脚本
出演
音楽
公開

1953年11月3日 日本

上映時間

136分

製作国

日本

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

東京物語

残酷で温かい。

8.5
子どもたちの元へ両親が“上京”してきたことで明らかになる家族の姿
  • 片道15時間の時代に両親が尾道から東京まで上京してくる
  • もてなす側の子どもたちは迷惑さと面倒くささを抱えつつ対応
  • 誰もが経験する「親との距離」を残酷なまでにあぶり出す
  • 女優陣が見事

あらすじ

言わずと知れた小津安二郎の代表作、もっと言えば「七人の侍」と並んで世界で最も有名な日本映画の一つでしょう。海外でもオールタイム・ベスト的なものが行われれば大体上位にランクインしてくる化物映画です。

例によって鈍い人間なのでそこまで言われるほどハマれなかったんですが、しかし確かに今もなお変わらぬ家族の姿を描いた傑作であることには異論ありません。

尾道で暮らしている周吉(笠智衆)とその妻・とみ(東山千栄子)は、息子たちに会いに東京へ旅行に出ます。

まず下町で小さな病院を経営している長男の幸一(山村聡)の家に泊めてもらいますが、東京見物しようとしたところに急患が入ってしまい、結局出かけられずにぼんやり過ごします。

その後(多分)近くで美容院を営む長女の志げ(杉村春子)の家に行きますが、ここもまた忙しく両親にかまっている暇もないようでまたぼんやり。

そうこうしているうちに尾道に帰ることにするかと話し合う二人、しかしその後とある問題が発生します。大体そんなところだよ!

親子の距離感の生々しさ

観ていけば徐々にわかってくるようにはなっていますが、中心となる平山家のざっくりとした人間関係を一応書いておくと、周吉・とみの夫婦は次女で教師の京子と尾道暮らし、長男の幸一は奥さんの文子と息子(つまり周吉夫婦の孫)の實と勇の4人家族で都内住まい、長女の志げは夫の庫造と都内で美容院を営み、次男の昌二は戦死していて妻の紀子も都内住まい(幸一と志げとは少し離れた場所っぽい)で未亡人、三男の敬三は大阪に住む国鉄職員、というような一家です。

当時は尾道から東京まで電車で15時間かかったそうですが、なぜそれだけ時間をかけて都内に行ったのか、その理由のほどははっきり語られないものの、まあ「暇だし久しぶりに子どもたちの顔でも見に行くか」ぐらいの感覚だったんでしょう。しかし遊びに行くと皆忙しく、丁寧に応対してくれはするもののどこか厄介者感が漂っていて居場所がない…と言うちょっと切ない家族の姿です。

さすがに古い時代だけあって子どもたちは両親に対して基本的に敬語で応対するし、今からすればすごく敬っているように見えはするものの、実際は今と変わらず面倒くささを抱えていて、やれ「そんな良いお菓子出すことない」とか「(二人だけで)熱海に行かせよう」とかいかにも邪魔だと言わんばかりの本音が非常に生々しく、ある意味では残酷です。

その残酷さがもっとも如実に現れるのは映画終盤、とある展開が起こった後の話なんですが、そこの部分はさすがにネタバレ(今更ネタバレを気にする映画かよと思いつつ)なので詳細は避けますが、しかしそこにこそ「家族ってこうだよな」と思わせる大きな説得力があり、これは今になっても古くならない名作だなと思いますね、やっぱり。

はたから見れば残酷と言うか、「こいつ冷たいなぁ」と思わせる言動が出てくるんですが、一方でそうではない部分もちゃんとあるし、「親子の距離感」からするとそれが両立するんだよな、とすごく腑に落ちる。

逆に赤の他人だったら多分ああいう言動(どこと書けないのがわかりにくくて申し訳ないですが)はきっと出てこないと思うんですよ。遠慮しちゃうし、さすがにタイミングも考えるだろうし。

でもそれが子どもだと「それはそれ、これはこれ」で自分の中で成立しちゃうのがすごくリアルだなと思ってそこが一番感銘を受けました。

周吉ととみはこの時代にありながら全然偉そうじゃない、良いご両親っぽいんですけどね。だからこそ逆に“厄介者”っぽさがより際立つ面もあって、そこもまた残酷だしすごいなぁと。

今から観るのも全然アリ

一方で二人を一番大事にしてくれるのが血縁のない義理の娘である紀子、って言うのがまたいろいろ感じさせるわけです。

しかも夫がいるならまだしも夫はとっくに(数年前に)戦死しちゃってるんですよね。

もはや平山家に尽くす必要はない立場で、劇中でも周吉ととみの二人からそう言われるにもかかわらず、甲斐甲斐しく二人の世話をし、またそれをさして悪いとも思わず頼る(ある意味では押し付ける)長男長女の姿にまたいろいろ考えちゃうんですよね。

ひでーなとも思うし、でもその気持ちもわかるし。完全に紀子に甘えてるんだけどその認識もなく、軽く「悪いね」ぐらいの感覚で頼る。その“軽さ”が絶妙に嫌な気持ちにもなるわけです。

何かそこそこ面倒なことを手伝ってあげたときに軽く「ああありがと」で済まされちゃうあの感じ。紀子なんて1日会社休んで観光案内してますからね。それも特に感謝するでもなく「やってくれて当然」ぐらいの感じで済ませる義兄と義姉はどうなのよと。

そんな諸々から家族の嫌な部分と逆に良い部分といろいろ普遍的な姿が見えてきて、これは残酷だけど温かい話だなと両面備えているところがまたすごいなと思うわけです。

また今以上に“家に入る”ことの意味合いが大きい時代なだけに、結婚そのものについてもまたいろいろ考えてしまうわけで…いやできるあても無いだけに絵に描いた餅ではあるんですが。

ただやっぱり結婚も色々めんどくさいよな、とかいろいろ思いますね。いきなり知らない人たちがごっそり家族としてお付き合いが始まるわけですからね。それでも紀子のように接することができるのは…もう聖人じゃないかって話ですよ。

そんなわけで「家族」にフォーカスした物語として、今なお普遍的な姿が描かれる、まさに紛うことなき傑作でした。

そりゃあそれなりに古さを感じる面はあるものの、芯の物語は今観ても全然古くないので、これから観るのもアリアリのアリですね。古い日本の情景が見られるのも密かなポイントです。

ネタバレ物語

上でボカした部分について。

観た人ならわかると思いますが、上に書いた一番いろいろ考えさせられた部分は「母が死んですぐ形見の相談をする志げ」の姿。

観客の気持ちを次女の京子が代弁してくれるセリフもあるんですが、同時にその遠慮のなさが親子だよな、って妙な説得力がすごい脚本だなと思いました。

その直前では志げはわんわん泣いてるし、決して母の他界が悲しくないわけではないのは間違いないと思うんですよ。あれはポーズで泣いてるんじゃないでしょう。

でもそれはそれで、「死んじゃったものはしょうがない」から形見も遠慮なくもらおうとする態度、って言うのがすごく合理的だし親子だからこその遠慮のなさだよな、っていう。

合理的と言う意味では「喪服を持っていくかどうか」相談するシーンもものすごくリアルで、冷たい子どもだなと思いつつもそれもまたすごく現実感があったなと。

これこそが親離れなんだろうし、変にいい話にしないで生々しいものにしているのが普遍的な映画になるポイントなんだろうなと思います。この時代にこれを作ったのは確かにすごい。

このシーンがイイ!

具体的に書くとネタバレになっちゃうので少しボカしますが、幸一と志げが両親について相談するシーンはどれも生々しいし残酷ですごいですね。何回か出てくるんですがどれも残酷。

ココが○

上にも書きましたが、接する態度こそ前時代的ではあるものの、その行動原理や感情面は今も変わらず生々しいところがすごく良いですね。こんな残酷な話だと思っていませんでした。

ココが×

これと言っては特に無いです。やっぱりどうしても淡々としているのは否めませんが、劇的なら良いと言う映画でもないのでそこは仕方がないかなと。

MVA

笠智衆が相変わらずたまらないんですが、この映画はこの人だなと思います。

杉村春子(金子志げ役)

美容院経営の長女。

この人が一番残酷で、でもリアルですごく良かったのと、そもそも演技がめちゃくちゃ自然ですごく良かったです。さすが僕ですら名前を知っているだけあります。

原節子もさすが「伝説の女優」だけあって見事でした。この二人が特に良かったですね。

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