映画レビュー1189 『ゴッドスピード』

少し間が空いてしまいましたが、また今年もダラダラと更新していきたいと思います。数少ない来訪者の皆さま、よろしくお願いします。

今年一発目は特に新年感も無く面白そうだなと思ったこちらの映画。例によってJAIHOです。

ゴッドスピード

Godspeed
監督

チョン・モンホン

脚本

チョン・モンホン

出演

マイケル・ホイ
ナードウ
レオン・ダイ
トゥオ・ツォンホア
マット・ウー
チェン・イーウェン
ビンセント・リャン

音楽

ツォン・スーミン

公開

2016年11月18日 台湾

上映時間

111分

製作国

台湾

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

ゴッドスピード

台湾版KAMIKAZE TAXI。

8.5
無理矢理乗せた客が“運び屋”だったがために巻き込まれちゃう系運転手
  • 粘って乗せた客がクスリの運び屋だったために事件に巻き込まれちゃうタクシーの運転手
  • マフィア側の話もふんだんに織り込まれる人情ロードムービー
  • 一般人とヤクザがほんの少し交錯するある一日を情感たっぷりに描く
  • 劇伴が良い

あらすじ

監督・脚本には絡まず出演のみですが、あの「Mr.BOO!」のマイケル・ホイが主演と言うことで、てっきりコメディ仕立てのほっこりロードムービーかと思いきや結構バイオレンスでびっくりしました。でもそれだけしっかりとした良い映画だった気がします。

求人情報を見て“クスリの運び屋”の職を得たナードゥ(納豆)は、「安くするよ!」とうるさいタクシー運転手(マイケル・ホイ)に根負けして目的地まで乗せてもらうことにします。

ケチ極まりない運転手にウンザリしつつも目的地にたどり着いたナードゥ、無事荷物も届け終えてお仕事完了かと思いきや…あとはご覧くださいませ。

独特の魅力を持った映画

上記あらすじは少し進んでからのお話で、オープニングはヤクザの危機一髪話から始まります。これが後にどう繋がってくるのかは観てからお楽しみ(ってほど重要なエピソードでも無いんですが)というところ。

そんな作りからも見て取れますが、割と「これ何の話なんだろ」みたいに少し取っ掛かりにくいスタートからジワジワと登場人物たちの繋がりが見えてきて、やがて大きな事件に繋がっていくほんのりバディもの的なロードムービーでした。

ちなみに「納豆」の読みがナードゥだそうで、役名も役者名も一緒です。演じている彼は若干四千頭身の後藤っぽかったので勝手に「後藤」と呼びながら観ていましたが、彼もコメディアンだそうです。

一応独特の雰囲気の中にちょっとした笑いも散りばめられていて、確かにコメディと言えばコメディなんですが、それよりもずっと生活感のあるドラマと言うか…生々しさが観客の共感を呼ぶような、ドラマチックでありつつ等身大の登場人物たちが感情移入を手助けしてくれる、地に足のついたなかなか良いお話でした。

中身はだいぶ違いつつも、ヤクザものとタクシー運転手の人情ロードムービー的な面からちょっと「KAMIKAZE TAXI」っぽさもあって、アレほど情緒に寄せてはいないもののこれはこれでなかなかグッと来る良い映画でしたね。

また微妙に寂れている感じのロケーションがすごく良くてですね…。ちょっと昔の日本っぽい雑多な雰囲気もあるし、映像面でも独特の魅力を持った映画だと思います。これは台湾映画に慣れていないせいもあるんでしょうが。

一つ触れてておきたいのが劇伴。これまた独特の魅力があってすごく良いんですよ。アジアらしい曲のセンスと言うか。

とある曲(一応伏せておきます…がネットで見かけるレビューはこの話ばっかりだったりする)が効果的に使われていて、それも日本人的にグッと来るんですが、ただそれを除いても全体的に劇伴にアジアンテイストのオリジナリティがありつつうまく世界観を演出している気がして、総じてレベルの高い映画ではないかなと思います。

これもハリウッドで作られていたら、きっと「またこのパターンか」と思うようなベタな着地点で終わりそうな気もするだけに、やっぱりここに来てアジア映画の新鮮さが響きますね。たまりません。特にくたびれたマイケル・ホイの雰囲気がしみじみ良い。

ヤクザはヤクザで良い

ちなみに「ゴッドスピード」と言うタイトルから、めちゃくちゃスピード狂のタクシー運転手が厄介事から逃げ回る映画なのかと勝手に思っていたんですが、実際は「ゴッドスピード」とは旅に出る人に「成功を祈る」「幸運を祈る」と言うような意味だそうです。無学さ故にコメディを期待してしまった悲しみ。でも面白かったので良し。

ところどころ「アレはなんだったの?」とか「この後が気になる」ところとかがあって、この中身だけでビシッと「最高だ」とはならないちょっとしたモヤモヤ感もあるんですが、ただそれはそれで「これからも人生は続く」的なメッセージと受け取れなくもないと言う。こじつけです。

その他の点としては、ヤクザはヤクザで味があり、そこにも物語があるのが良いなと思います。ただの悪役だったり添え物だったりしない、なんならもう一方の主役としての存在感すらある。

チンピラ+タクシー運転手が中心にいるだけであとは脇と言うわけでもない感覚が、これまた独特な魅力を感じさせるなと思うわけですよ。

ヤクザと一般人(タクシー運転手)はほんの少し交錯するだけなんですが、その接点からそれぞれの人生が垣間見えるシナリオ、好きですねぇ…。

新年早々に良いもの観ました。今年はJAIHOのおかげで例年以上にマニアックな映画が増えると思うので、今からいい出会いが楽しみですね。

ゴッドネタバレ

ちょっと調べれば死ぬほど出てくるのであえてネタバレ項に隠す必要も無いんですが、この映画、エンディングの一番良い場面とエンドロールで谷村新司の「昴」がかかります。

これがまた曲調的に(歌詞は微妙に合わないような気もするけど)絶妙でなんとも言えない感情を呼び起こす、とてもいい選曲だと思うんですが…ただ初出版ではないっぽいのが少し気になりました。

別に谷村新司に詳しくは無いんですが、セルフリメイクなのかなんなのか…昔聞いたことがある「昴」よりかなり色気を出した歌い方なのがすごく気になったんですよね。いやらしい歌い方と言うか。

昔はもっとストレートに歌ってたと思うんだけどなぁ…そんな細かいこと気にする人間もあんまりいないんでしょうけどね。

余談でした。

このシーンがイイ!

ちょこちょこありましたが、やっぱり“あの曲”がかかってくるエンディングの辺りですかねぇ…。

ココが○

上に書いた以外の部分で言えば、「友達」ってセリフが出てくるのがものすごく良かったですね。それを言うように見えない人が、はっきりと言うところになんだかしびれました。

ココが×

もうちょっとすっきりしてほしかった部分はあるんですが、多分それをやっちゃうとハリウッド的なありきたりの映画になっちゃうんでしょう。この映画はこれでいいんだと思います。

一つ書いておかないといけないのは、そこそこバイオレンスな場面があるところ。かなり生々しいし痛そう。あれはダメな人はダメな気がするし、自分も観てて「これ以上はちょっと…!」って感じでした。そこで終わったから良かったんだけど。

MVA

「運転手のおっさん」と思って観ていましたが、マイケル・ホイはこのときすでに70代中盤でもう「爺さん」なんですよね。でもそう感じさせない妙な現役感がすごく良かったと思います。

彼も本当に良かったんですが、一番良い意味で引っかかったのはこの人。

レオン・ダイ(大寶役)

役名の読み方はよくわかりません。呼ばれてたシーンもあったと思いますが忘れました。ヤクザのボス。白シャツ。

いい男になった小木っぽいなと思いつつ観ていましたが、これがなかなか良いんですよ。迫力もあるし能ある鷹は爪を隠す感もあるし、若干にじみ出る人間臭さもあるし。

特にやっぱり拷問シーンがすごく印象的でした。こういう人が一番怖いんだよな、って…。

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