映画レビュー1560 『カリガリ博士』
今回は自分が観てきた映画の中でも最古の映画になります。
「マッシブ・タレント」でニコラス・ケイジがやたらと推していた映画の1本で、気になっていたんですがアマプラにあったので観てみました。
ちなみに古すぎるからかなんなのかわかりませんが、今回はCMが入りませんでした。
なんか人気(再生回数の多そうな)映画だとやたらCM入るのでアマプラは人気によってCMの入り方が変わるっぽい気がしますね。
カリガリ博士
ローベルト・ヴィーネ
ハンス・ヤノヴィッツ
カール・マイヤー
ヴェルナー・クラウス
コンラート・ファイト
フリードリッヒ・フェーエル
リル・ダゴファー
ハンス・ハインツ・フォン・トワルドウスキー
1920年2月27日 ドイツ
71分
ドイツ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

意外と込み入った内容かつセットが素晴らしすぎて意外と観られる。
- 村のカーニバルで夢遊病者の見世物を出したいと怪しげな博士がやってくる
- その後立て続けに殺人事件が発生、夢遊病者が怪しいと目をつけられるが…
- 見るからにアーティスティックな素晴らしいセットが唯一無二
- 世界初の長編ホラー映画
あらすじ
画質も劣悪なサイレント映画なんですが、意外といろいろ伝わるものがあって鑑賞前の想像よりも全然楽しめました。
ある男が振り返ります。
「あんな奇妙な出来事に出会ったことは無いぜ…!」
その男、フランシス(フリードリッヒ・フェーエル)は以前友人のアラン(ハンス・ハインツ・フォン・トワルドウスキー)と一緒に村にやってきたカーニバルを見にお出かけ。
彼らはカリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)がやっている「夢遊病者の見世物小屋」を行ったんですが、出てきた夢遊病者・チェザーレ(コンラート・ファイト)は博士曰くなんでも予知できるとの触れ込みだったので、アランが「僕はいつまで生きられる?」とフラグ感丸出しの質問を投げたところ、「もうすぐ死ぬさ! 夜明け前にはな…!」と衝撃の事実を告げられ、なんや胸糞悪いでと帰宅した2人ですがその夜予言通りにアランは殺されてしまいます。
おまけに直近で役所の職員が殺される事件も起きており、連続殺人事件にざわつく界隈。
当然「チェザーレ怪しくね?」と疑いを向けられる博士とチェザーレ、フランシスは彼が惚れている女性・ジェーン(リル・ダゴファー)とその父親とともに2人の身辺調査を開始しますが、果たして真犯人はいかに…!
世界初の長編ホラー映画
時代的に当たり前ですが、モノクロかつサイレント映画です。
サイレント映画はあえてその方式を採用した比較的最近の映画「アーティスト」を除けば観たことないな〜と思っていたんですが普通にチャップリンの映画とか観てましたね。節穴です。
ただそんなことよりも「世界初の長編ホラー映画」という肩書の方が重要ですよ。まったくそんな意識もなく観たんですけど。
一応これ以前に「世界最初のホラー映画」もあるみたいなんですが、そちらは14秒しかない上にのぞき窓から観るようなものだったらしく、いわゆる今の形式に近い「座ってしっかり観る」タイプのホラー映画としてはこれが世界初だよと。
なんか映画の歴史に触れている感じがする…! さすがおれ、本物の映画好き…!
と思いそうですが最初に書いてしまった通り、単純に「マッシブ・タレント」で妙に頭に残ったから観ただけでサーセン。
あの映画ではもう1本、例の傑作「パディントン2」も言及されていてあちらはマッシブ経由で観た人がいっぱいいたようなんですがこっちも観てる人はそんなにいなさそうだぞとスケベ心で観たわけですが。
ぶっちゃけ失礼ながらこれも言ってみれば「映画好きのアチーブメント」の一つとして観たようなものなんですが、そんな気持ちとは裏腹に思いの外しっかりした内容に大変申し訳ございませんでしたと謝罪の心。
いやだってマッシブ・タレントでニコケイが言ってたんだよ? ネタだと思うじゃん?
ところが全然ちゃんとした映画というか、なんなら後年の様々な映画のまさに源流となっていそうな面もちらほらあり、いやなかなかすごい映画だなと。
ただ悲しいかな画質の悪さや初期作品故のシンプルさもあり、「うおおおおおおすげえ!」とまでは行かなかったのでやや中途半端な評価にはなっています。でもホント、予想していたよりも全然面白い映画でした。
「あの映画なんて間違いなくこれの影響下にあるでしょ…!」と思った映画もあったんですが、モロそちらの映画のネタバレにつながるので自重しておきます。
ただそれぐらい今に至っても影響があるぐらいの作品、というだけでいかにこの映画がすごいのかがよくわかるのではないかなと。
100年以上前の映画ですよ? すごすぎない?
サイレント映画なのでセリフは最小限、よって基本は動きや表情、シチュエーション等をいろいろ読み取った上で行間を想像する必要があり、今の普通の映画とはまるで違う筋肉を求められる感じがあります。
昨今のなんでも説明してくれるヌル映画と比べるとその不親切さが逆に良いですね。ちゃんと頭使って観ろよ、って娯楽になっている感じが。
つい最近、画面右上に「タイトルと何話目かと一言コメントみたいな字幕が出っぱなしのドラマ」が放映されて舐めんじゃねえと話題になっていましたが、これは僕が数年前に地上波で「インセプション」が放送されたときに偶然チラ見して激怒したのと同じやつだなと思い出しました。
100人が100人理解できるように情報を提示していくのは50人が理解できるものよりも明らかに“考えて理解する楽しみ”を奪っているのは間違いないと思うので、こうした方法が進めば進むほど視聴者・観客がバカになっていくのは目に見えています。
というか逆説的ですが「受け手がバカだからこうしてやってる」みたいに送り手の方が受け手をバカにしている感じがバカみたいで腹が立つんですよね。こういうの。
それぐらい理解できるし、理解できない人がいてもいいだろうと思うんですが、テレビ局はクレームが怖いのかはたまた「わかるようにしてやってる」と上流気取ってるのかわかりませんが、その姿勢そのものが気に入らないぜと思っている昨今、あえてこのサイレント映画のようなスタイルはアリな気がしました。
セットが素晴らしすぎる
ただ一応お断りしておくと、「世界初の長編ホラー映画」という触れ込みではありますがあまりホラー感はありません。むしろサスペンスの方に近いかも。
なのであんまり怖さを期待して観ると(映像が古く画質が良くないことも相まって)がっかりするかもしれませんが、その後への影響の大きさと物語の構成の部分、そして何よりモノクロでもわかるセットの素晴らしさは今観てもまったく色褪せていないと言っていいでしょう。
本当にセットに関しては開始数分後にはもう「このセットすごくない!?」と虜になるぐらいに際立っていて一見の価値があります。
あまりアートには詳しくないので表現も拙くなってしまいますが、もう見るからに「芸術家が作った」感じがするんですよね。ちょっと幻想的で、デフォルメもされていて。
リアル志向のセットではないのがすぐにわかると思うんですが、それもこの時期の映画の規模感(予算)やそもそも撮影技術的にロケが難しかったりしたのであろうこと、そして何より物語そのものの意味合いを考えれば、理屈としてこの形に帰結するのも理解できるんですがそれにしてもセンスがありすぎてびっくり。
ぜひその辺も気にして観て頂ければと思います。
アチーブメント目的のつもりがちょっといい経験したな、と満足するぐらいには楽しめました。
このシーンがイイ!
博士が家でチェザーレ起こしてご飯食べさせてるシーンがなんかかわいくて笑っちゃった。自分で起きないけどモグモグはするんだ!?
あと文字が刻まれるシーンもすごく印象的で良かったですね。
ココが○
シンプルに見せかけてのひねりの利いた展開、そして何より美術面。現存してたらめちゃくちゃ高くなってそう。
ココが×
わかりきってはいますが映像はノイズも多いしセリフも少ないからわかりづらいしで現代人にとってとっつきにくいのは間違いありません。
Wikipediaの記事を読んでも「その情報どこにあったの!?」と思うようなポイントもちらほらありましたが、ただまあ上に書いた通り不親切さも楽しめるのが良いところだと思うので鑑賞後に補完するのもアリだとは思います。
MVA
やっぱりこの方でしょうか。
ヴェルナー・クラウス(カリガリ博士役)
興行師ですが怪しさ満点。見るからに怪しい。そこが素晴らしい。
調べたらまだ30代中盤なんですよね。
そういうメイクだったり見せ方だったりもあると思いますが、それにしたって爺感あったし見事でした。


