映画レビュー1557 『パーフェクトブルー』
アマプラも飽きた(?)ので今回はネトフリです。
何かで「すごい映画」と聞いていたのでウォッチリストに入れていました。
パーフェクトブルー
今敏
村井さだゆき
『パーフェクト・ブルー 完全変態』
竹内義和
岩男潤子
松本梨香
辻親八
大倉正章
秋元羊介
堀秀行
篠原恵美
幾見雅博
1998年2月28日 日本
81分
日本
Netflix(Fire TV Stick・TV)

アニメならではの作り。
- 周りの評価もあってアイドルグループ脱退から女優へ転身、しかしアイドル時代とはまるで違う仕事が増える
- 本人は納得し、自らを鼓舞して頑張るも徐々に追い詰められていく
- 同時に身の回りで連続殺人事件も起き、次第に虚構と現実の境目が曖昧に
- 絵柄の古さがネック
あらすじ
なるほど確かに噂通り、なかなかすごい映画でした。アニメ自体そんなに観ない上にサイコホラーのような作風はとても新鮮に感じられましたが、好きな映画かと問われると好きなタイプの映画ではないかなと。
3人組のアイドルグループ「CHAM」のセンター霧越未麻(岩男潤子)は、ある日のライブでグループからの脱退及び女優として活動していくことを宣言します。
これは(恐らく物語開始以前にやったのであろう)彼女の演技を評価していたというテレビ界の人間の言を受けた事務所の社長・田所(辻親八)の方針であり、本人はまだアイドルにも未練がありそうな様子ですが、とは言え嫌というわけでもなく割とあっさり「頑張るぞ」的に気持ちも切り替えているようです。
女優転身後に出演することになったテレビドラマ「ダブルバインド」では初登場時のセリフも一言だけという端役中の端役だった彼女ですが、回を重ねる毎に役が大きくなっていき、ある回ではレイプシーンを演じることに。
またその演技が評価されてかはたまた下衆な目が蔓延るのが世の常故か、その後はヘアヌード写真集(時代を感じる)の仕事を引き受けたりと明らかにアイドル時代とは一線を画した活動を続け、旧来のファンやアイドル時代から面倒を見てきたマネージャーの日高ルミ(松本梨香)は複雑な心境の様子。
当の本人も過激な仕事に悩まされつつ、それでも女優として一皮剥けなければ…と自らを鼓舞してこなしていきますが、一方で「アイドルの未麻“本人”」が更新し続けているというWebサイトを見て、その正確性に気味の悪さを覚え、次第に精神的に追い詰められていきます。
やがて「ダブルバインド」の脚本家が殺害される事件が起きるなど身の回りにも不穏な影が忍び寄り始め益々追い込まれていく未麻。
一体彼女はどうなるんでしょうか。
現実なのか虚構なのか
僕ですら名前を知っている今敏の初監督作品です。
ただ調べて知ったんですが今敏監督って46歳で他界しているんですね…。早すぎる。
1990年代の映画なので仕方がないのは重々承知しつつ、でもやっぱりちょっと絵柄が古くてとっつきにくい感じはありました。ちなみにキャラクター原案は今をときめく話題のトレース大先生、江口寿史だそうです。最初に出てきた「CHAM」の3人、髪型が違うだけでみんな同じ顔してて笑っちゃったんですけどそれも御愛嬌です。
アイドルから女優に転身を図るも過激な仕事が増え、本人もファンも関係者もちょっと複雑な感情にとらわれる中で連続殺人事件が起きて…的な内容のお話ではありますが、その辺の舞台そのものはあまり重要ではない…というかメインは未麻の内面と外界との境界線がどこにあるのか、その「あやふやな表現そのもの」という感じの映画でした。割とノーラン辺りにも近いニュアンスを感じます。
途中からかなり「これが現実なのか虚構なのか」意図的に混濁させてくる演出が多く見られ、またいわゆる「夢オチ」的なシーンも何度か挟まってくる上にそもそも「ドラマ撮影で未麻が演じている役なのか未麻本人なのか」といった曖昧さも入ってくるので四重の世界からどれが真実なのかの判断を迫るような面もある混沌とした作品で、そこが面白くもあり人を選びそうな感もあり、といったところ。
ただ「どれが真実なのか」も実際はそんなに意味がなく、その混濁した世界そのものが未麻の置かれた環境と精神状態なんだろうと思うと、いかに彼女が過酷な日常で頑張っているのか、その状況を知ることで産みの苦しみというか…等身大の女性が日常の延長線上でやっていたアイドルからプロフェッショナルの女優に転身する困難さを知る思いというか。
やっぱり「人に見られる仕事」の大変さがわかるよねという平凡な感想と、その大変さを描くことで一人の女性が混沌とした世界に引きずり込まれる人間のメンタルの危うさみたいなものを感じさせる作り、これは本当に良く出来ているなと思います。
「真実をわかりにくくするためのごまかしで混沌とした世界を描いている」のではなく、追い込まれた主人公をフィルターにして世界を観ることで混沌とした世界に“なってしまう”ような構成力がすごい。
またその「現実なのか虚構なのかあやふやな世界」を描いているシーンを観ていて思ったんですが、これ実写でやるとどうやっても陳腐になりそうなんですよね。ものすごく。
ただそれがこの映画ではきちんと恐怖演出になっているので、そこにしっかりとしたアニメとしての強みが反映されているように見えてそこもすごく感心しました。アニメだからこそ出来る表現が多い映画だなと。
それがファンタジーとかSFとかであればまだ想像の範囲内というか割と受け入れやすいものだと思うんですが、それをホラーとしてやるところに(ホラーもアニメもあまり通ってきていないせいもあって)すごく新鮮さを感じて、なるほどこれはすごい映画だなと。
「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキーが影響を受けたと公言しているそうですが、なるほど言われてみれば「ブラック・スワン」もこんな感じの雰囲気があったな…と思いつつ、(個人的にあまり評価していない)あっちよりもこっちの作品の方がいろいろ上手い気がしたのでさすが本家やで、みたいな。適当なことを言ってますけども。
リメイクしてほしいようなしてほしくないような
実写の下手なホラーよりも全然怖さを感じられる話だったし、海外での評価も高いのが頷ける一本ですね。
ただ最初にも書きましたが、「好きか嫌いか」と問われれば少なくとも「好き」とは言いづらい、もう一度観たいとは思わないかなという微妙なポジションの映画でもありました。(アニメ自体あんまり観ないのもありますが)
多分それは物語そのものよりも絵柄の好みな気がするんですよね。これ、絵柄がもっと好きなイメージだったらより響いたような気がするんですが、ただこの(古さを感じる)絵柄だからこそ立ってくる妙な気味の悪さみたいなものもあったと思うのでなかなか難しいところです。
でもおそらく今のアニメ制作環境はこの頃とは比較にならないほど進化しているはずなので、やっぱり今の時代に合わせたリメイクが出来たら観てみたいな…とも思いますが監督は他界してるだけにこれもまた難しそう。
下手なリメイク作るんだったらやらない方が百倍マシなのは言うまでもないことなので、これはこれで完成形として評価するべきなんでしょうね。当たり前ですが。
このシーンがイイ!
ネットでは「例のシーン」で有名らしいんですが、女優になって最初の“体当たりシーン”とでも言えばいいでしょうか。あそこは心情がいろいろと伺える気がしてやっぱりこっちもザワザワしました。
あとネスケ(ネットスケープナビゲータ)の画面が懐かしすぎて笑いました。ネスケ…もうわからない人多そう…。
ココが○
精神的に追い込まれていくサイコホラーをアニメだからこその表現で描く、というのは初めて観たのでやっぱりすごいなと思います。影響を受けたアニメも結構あるんでしょうね、きっと。
ココが×
気分がいい物語ではないのでそこは好みが分かれるところでしょう。
それと同時に(時代的なものもあって仕方がないとは思いますが)あからさまなストーカーがあからさまな醜男で、今の時代からすると少し問題かもしれない気がしないでもないです。美醜によるレッテル貼りのような感じで。
MVA
正直あんまりピンとくる人もいなかったんですが、それはそれだけ自然だったのかなという気もします。
なのでまあ無難ですがこちらの方に。
岩男潤子(霧越未麻役)
ぶっちゃけ声優さんとしてそんなに上手いとは思えなかったんですが、そのちょっと素人感がある感じが逆に役にあっていたような気がします。そこを狙って演じていたとしたら相当上手いんですが。


