映画レビュー1440 『マッシブ・タレント』

公開当時から超観たかった本作。「ニコラス・ケイジが架空のニコラス・ケイジを演じる」映画です。そんなん面白いに決まってるやん…!

マッシブ・タレント

The Unbearable Weight of Massive Talent
監督

トム・ゴーミカン

脚本

トム・ゴーミカン
ケヴィン・エッテン

出演
音楽
公開

2022年4月22日 アメリカ

上映時間

107分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

マッシブ・タレント

映画愛×ニコケイ愛=傑作!

9.0
ニコラス・ケイジ大ファンの誕生パーティへ、しかし彼には黒い噂が…
  • 落ち目の俳優ニコラス・ケイジが高額ギャラに目が眩み誕生パーティへ
  • 呼びよせた男は「農園経営者の大金持ち」のはずがカルテルのボスらしく…
  • スパイ的にCIAに協力するニコケイ、捜査を進めるはずがどんどん仲良くなる2人
  • コメディ一辺倒ではない映画への愛も感じるズルい映画

あらすじ

予想通り面白かったし予想以上にも面白かったですね。意外とちゃんとした映画でした。

かつて何度も大作で主演したレジェンド俳優、ニック・ケイジ(ニコラス・ケイジ)。今や見る影もなく、役欲しさにプロデューサーに猛烈プッシュするも迷惑がられる痛い落ちぶれっぷりです。
彼にはマネージャー経由で、彼の大ファンという農園経営者のハビ(ペドロ・パスカル)から自身の誕生パーティへ出席してほしいというオファーが届き、一度は断りますが高額のギャラに目が眩んで結局承諾、早速彼の屋敷へ行って歓待を受けます。
酒を飲んだり泳いだり自由気ままに過ごすニックですが、ある夜バーから出ると急に拉致され、聞くと相手はCIA。なんでも「ハビは国際的な武器カルテルのボスで、スペインの首相候補の娘を誘拐しているから捜査に協力してほしい」とのこと。
イマイチCIAの言うことも信じられないニックですが成り行き上やむなく協力することになり、誕生パーティの騒ぎに便乗してスパイ活動に携わりますが…あとはご覧ください。

言うまでもなくニコケイファン必見

英語疎い勢としては「マッシブ・タレント」ってバカにしたタイトルなのかなと思っていたんですが、直訳すると「膨大な才能」なので、皮肉の可能性もありますがどちらかと言うと「ニコラス・ケイジの偉大さ」を表現したタイトルなのかなと思います。
一応役名はニック・ケイジなんですが、もう劇中でも普通に「ニコラス」って呼ばれてたりするんでまんまニコラス・ケイジです。のっけから出てくるのが「コン・エアー」のエンディングですからね。懐かしすぎる。
僕の中でもニコラス・ケイジのピークと言えばやっぱり「ザ・ロック」か「コン・エアー」か、って感じなので解釈一致でこの時点(開始1分)でウヒョウヒョ言ってました。
本人役とは言えまんま本人ではなく、あくまで“架空のニコラス・ケイジ”なので「面白おかしくニコラス・ケイジが本人役を演じた」映画なんですが、とは言えその“架空のニコラス・ケイジ像”も最近のミーム化したニコラス・ケイジの立場を存分に活かした形の、言葉は悪いですがいい感じにネタっぽく扱ってくれているので驚くほど昨今のニコラス・ケイジ観に合致した、何一つ背伸びしていない人物像が最高です。そんなの面白いに決まってる。
そもそもオープニングの「コン・エアー」にしろセリフに出てくる「ザ・ロック」にしろ「コレリ大尉のマンドリン」にしろ、完全にリアルとリンクしているので「架空のニコラス・ケイジです」って言われたところでまんま本人としか思えない、っていうのも確信犯っぽくて最高ですね。一応架空って言うけど本人だと思ってね、って感じで。架空ならせめて「コソ・エア一(こそ・えあいち)」とかウソタイトルにしてくれよみたいな。家族絡みはだいぶ違うんだろうとも思いますが。
ちなみに他にも「ナショナル・トレジャー」だったり「リービング・ラスベガス」だったり「フェイス/オフ」だったり、これでもかとニコケイ映画の話が出てくるのでニコケイ映画好きはもうそれだけで楽しめるでしょう。僕個人としては出てくるタイトルの半分ぐらいしか観ていませんが、それでもニヤニヤしちゃう美味しさがありました。

中盤まではニックとハビのバカ2人()がイチャイチャしてるシーンばっかりで内容もあってないような感じなんですが、ただそもそもハビがニックを呼び寄せた理由は「自分の書いた脚本でニック主演の映画を撮りたい」という夢が元になっているので、その「映画製作」が根底にあって後半に向けてストーリーが動いていく作りも映画好きとしてはなかなかたまらないものがあり、くだらない小ネタの連続の先に「ハビが実はカルテルのボス」と「ハビの映画作りの夢」が混ざり合ってエンディングに向かっていく作りは意外とよく出来ています。
実は今から振り返るとこの後に観た昔の某有名映画をオマージュしているのかなと思うような展開もなかなか良かったです。ただのネタ映画じゃないぞ、っていう。
「ニコラス・ケイジがニコラス・ケイジを演じる」という掴みからネタ映画っぽく見られがちな映画なのは間違いのないところですが、そこもちょっと裏切ってちゃんと映画してるよ、というのはすごくズルいしそこも込みでやられちゃったというか、ニコラス・ケイジだけでも面白いのにちゃんと本筋も面白くしてくれたからそりゃあ好きになっちゃうよね、というのは言っておきたいところです。

「パディントン2」推しについて

もう一つ書いておきたいのは、妙に「パディントン2」を推してくるんですよ。この映画。「パディントン2は傑作だ」って。最初にハビが言うんですが。
確かにパディントン2は傑作ですよ。間違いなく。僕も満点付けてますからね。
ただ、その額面通りに「パディントン2は傑作だしコメディ寄りで名前を挙げやすいから脚本に使った」と思いそうなところですが、実は僕はここに深い意味がある…と踏んでます。
というのも、「パディントン2」はご存知の通り、“落ち目の俳優”を我らがおヒューが演じてます。しかも監督の当て書きで。
ソースはありませんが、今作は言うまでもなく当て書きでニコラス・ケイジがニコラス・ケイジを演じているわけですよ。落ち目のね…!
つまり、この映画のニコラス・ケイジのポジションと「パディントン2」のおヒューが丸かぶりするので、2人を重ね合わせて「傑作だ」って言ってるんじゃないかなと思うんですよね。あっちが傑作なんだからこっちも傑作だろ? って。
同時に(架空の)ニコラス・ケイジ自身が「パディントン2」のおヒューを見て自分と重ね、感じ入る部分があって「傑作」という評価を飲み込むんじゃないか…と。
劇中で(架空の)ニコラス・ケイジは俳優の引退を決め、その後ハビのもとへ向かうシナリオになっているんですが、その俳優業への思いと「パディントン2」の傑作っぷり(及びおヒューの立場)を重ね合わせて、映画全体を(実際の)ニコラス・ケイジへの応援歌に転化しているのでは…というと考えすぎでしょうか。
絶対そうだと思うんだよなぁ。
「パディントン2」のおヒューとこの映画のニコラス・ケイジを重ね合わせているのは間違いないと思います。これはきっと「パディントン2」をただ観ただけではわからない人も多いはずで、おヒューファンだからこそ指摘できるポイントでしょう。

とドヤ顔を披露したところで終わろうと思います。めちゃくちゃ面白いのでぜひ観てください。

このシーンがイイ!

2人でLSDキメて逃げるシーンで爆笑しました。間違いなく一番笑ったシーン。
あとコレクションがバレちゃうシーンもくだらなすぎて爆笑しました。ちゃんとキモいクッションまであるのが最高すぎる。

ココが○

もうニコラス・ケイジをいじる、って決めた時点で勝利ですよね。人選が的確すぎる。そしてそれを本人がノリノリでやってるのも最高。
その上映画としてもちゃんと作られているのでそりゃあ面白いよね、というわかりきったお話。映画好きかつコメディ好きなら間違いなく楽しめるでしょう。

ココが×

これと言って特にありません。浅いっちゃ浅いけどコメディだしね。

MVA

ペドロ・パスカルがめちゃくちゃかわいい映画だなと思います。彼のファンも間違いなく必見ですが、やっぱりこの映画はこの人以外選べません。

ニコラス・ケイジ(ニック・ケイジ役)

言わずと知れた落ち目の大スター。架空の本人役。
もう1つの人格として若い頃の自分も登場するんですが、彼の勢いもまた素晴らしい。その別人格のアイデアも本人が出したそうなので、これはもうやっぱり「ニコラス・ケイジの映画」でしかないですよ。
ネタ的に消費されているのを受け入れて、それを美味しく消化する度量と才能はまさに「マッシブ・タレント」といったところでしょうか。文句なしです。

それと余談ですが、ニコラス・ケイジの娘役の子がかわいいなと思って観ていたんですが、彼女はケイト・ベッキンセイルの娘で「みんな元気」ではケイトの小さい頃の役を演じていたそうです。当然ですが大きくなったね…!

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