映画レビュー1441 『インスティゲイターズ 〜強盗ふたりとセラピスト〜』

8月にTwitchでチャンネル課金するとAppleTV+が3か月分無料になる、という謎のキャンペーンをやっていたので、ちょうどいいやと課金してAppleTV+再加入を果たしました。
いまだにランキングには「テトリス」が入ってるぐらい相変わらず映画の品揃えはほとんど変わらず、95%はドラマに力を入れているっぽいAppleTV+ですが、数少ない新作映画として出てきたこちらの映画、メンツがメンツなので観てみるかなということで。

インスティゲイターズ 〜強盗ふたりとセラピスト〜

The Instigators
監督
脚本

チャック・マクリーン
ケイシー・アフレック

出演

マット・デイモン
ケイシー・アフレック
ホン・チャウ
マイケル・スタールバーグ
ヴィング・レイムス
アルフレッド・モリーナ
トビー・ジョーンズ
ポール・ウォルター・ハウザー
ジャック・ハーロウ
ロン・パールマン

音楽
公開

2024年8月9日 各国

上映時間

101分

製作国

アメリカ

視聴環境

AppleTV+(Fire TV Stick・TV)

インスティゲイターズ 〜強盗ふたりとセラピスト〜

締まらなさが逆に良い。

8.5
強盗計画あっさり失敗、逃げる2人の行く末は
  • “即席強盗チーム”による強盗計画はあっさり失敗、その後始末と逃亡の先に待つものは
  • 出てくる人物の殆どがダメ人間なのでゆるく楽しめる
  • 総じてパッとしない映画ではあるものの、その締まらなさが好きな人にはたまらない
  • 役者陣も通好みで豪華なのもポイント

あらすじ

思ったよりグッと来ない、気の抜けた炭酸的な映画だなと思いましたがそこが逆に心地いいというか、多分(演者とともに)それなりに歳を取った観客としては「これぐらいがいいのよ」って感じの映画でしたね。

離婚し息子と会うこともままならない元軍人のローリー(マット・デイモン)はセラピー通い。実はもう死ぬことを決めているっぽい彼は半ば自暴自棄になっており、とある強盗計画に参加を決めます。
その強盗計画には彼の他にもいかにもなダメ人間が参加しているわけですが、いざ実行となると即席チーム&全員ダメ人間が災いしてどこまで行ってもうまく行かず、結果さしたる金額も取れないまま逃走する羽目に。
実行中に離脱させられた一人を残し、ローリーと前科アリのアル中コビー(ケイシー・アフレック)の2人で逃避行、しかし強盗計画がうまく行かなかったがために計画の黒幕からも追われることになってなかなかしんどい状況ですが…無事逃げることができるんでしょうか。

グダグダさがいい

マット・デイモンと言えばベン・アフレックと親友、つまりはベンアフの弟であるケイシー・アフレックとも長い付き合い(のハズ)ってことで、お互いをよく知る演者2人によるダメ人間バディ映画 with セラピスト、って感じでしょうか。
強盗計画、マトデにケイシーと来るとどうしても「オーシャンズ」シリーズを思い浮かべますが、残念ながらあの映画のようなオシャレ強盗というわけには行かず、今回の強盗は最初の計画からして杜撰も杜撰です。
ターゲットは市長選当日の夜、長年市長を勤めている汚職市長(ロン・パールマン)の元にあらゆる利権に絡んだ金がごっそり運ばれてくるからそれを狙おう…という話でその導入からして結構面白そうなんですが、しかしうまく行かずに…というお話。
終始ゆるいしグダグダ、でも2人ともそれなりにおっさんなので逃げるにもキレがない。そのゆるい逃亡劇をちょっとコメディ仕立てで楽しんでね、ってな感じですが、これがまあなんかジワジワたまらないものがありました。
単純に2人が好きだからっていうのもあるとは思います。おそらく「海外の俳優はみんな同じに見える」みたいな人が観て「全然面白くなかった」って言われても文句言えないぐらいにパッとしない。
でもそこがなんか良いんですよね。こっちも歳取ったからかなと思うんですが。
自分自身がそうだからだと思いますが、人生がうまく行かないダメ人間たちの話に弱いだけに、この映画もそういった路線として眺めるとなんとなく腐せない感じがあるんですよ。
グイグイ来るような面白さはまったくないんですが、なんとなくジワジワと面白い、スルメのような映画というか。
おまけに主演2人はもちろんですが、アルフレッド・モリーナとかトビジョとか出てきちゃうもんでなおさらしみじみたまんねーな、ってなるんですよ。
それで監督はダグ・リーマンですからね。ダグ・リーマンは世間的にはボーンシリーズのイメージが強いんでしょうが、僕はボーンシリーズ以外の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」とか「Mr.&Mrs. スミス」とか「バリー・シール」みたいな作品が好きなので、なんと言うかちょっとズレた今作も好きだな、っていう。
世間的には結構微妙な評価でそれもすごくよくわかるんですが、もういろいろあくせくするのも疲れたしとにかく楽に生きていきたいよね、みたいな怠惰な人間にはこの映画のダラダラとしたリズムが合っているんだと思います。
意識高い、熱い人たちには向いていない映画でしょう。きっと。

疲れない映画もいいじゃない

結末もあんまり納得感はなかったんですが、でもなんか全体的にゆるいからそれもいいかな、みたいなこっちの基準もゆるゆるになっちゃってそれもまたズルい映画だなと。
まーでも極めて冷静に評価すれば、「そこそこ」の映画だろうと思いますよ。きっと。
ただどうにも僕が好きな要素が散りばめられちゃってるもんで、そりゃあ評価も甘くなっちゃうよねって話です。
なんかこう…こういう犯罪系映画は「騙すぞ!」みたいな方向に行くとこっちも「騙されるもんか」って予想しながら観て大体予想が当たってがっかりするか「それはねーだろ」って冷めちゃうかなんですが、この映画はそっちの方向にはまったく行かずにただゆるい逃走劇をニヤニヤしながら観るだけなのでいくらでも観られちゃうんですよね。観てて疲れないし。
ときには気張った映画ももちろん必要ですが、「これぐらいでいいんじゃない?」みたいなこういう映画もやっぱり大事ですよ。
なんとなくですが、まったくジャンルは違うものの「RRR」みたいな力の入りまくったインド映画に対するカウンターみたいな映画だと思いますね。どっちが良い悪いではなく、こういう力の抜けた映画も消費カロリーが少なくて観やすいよね、っていう。
個人的には最近そっちばっかり行きがちなのでそれはそれで良くないとも思うんですけどね…。

とりあえず「歳を取った頭脳なきオーシャンズはこうなる」みたいに観えなくもないので、あのシリーズが好きな方は観てみると良いのではないでしょうか。
もっともあのシリーズが好きな人はきっとこの主演2人がずっと一緒に演技しているだけでもたまらないだろうし、言われなくても観るでしょう。
惜しむらくはやっぱり…AppleTV+限定なのがなぁ…。

このシーンがイイ!

「ダウンタウン」がかかるシーンがめっちゃ好きですね。笑っちゃって。
あと詳しくは言いませんが終盤のトビジョの感じも好き。

ココが○

終始冴えない感じが逆に良い。冴えないおっさんたちの共感を呼びます。
ちなみに脚本も担当しているケイシーは、マトデとともに「ミッドナイト・ランが好き」とあの映画に言及していたそうなので、あの映画っぽいバディ感も込められている…のかもしれません。

ココが×

あちこち「そうはならんやろ」というところは出てくるので、まあコメディらしくリアリティはあまりありません。それでいいんだけどね。
もっとも「人生行き詰まったダメ人間たちの強盗」なんてどれもこんなものなのかも…という気もする。

MVA

タイトルに入っているぐらいなんですがそこまでセラピスト推しの感じもなく、ちょっと存在感が中途半端だったような気がしますが…主演の2人が強すぎるだけなのかも。
ということでこちらの方に。

マット・デイモン(ローリー役)

元軍人で人生諦め組。多分自暴自棄的に計画に参加したと思われますが、熱心にメモを取る(けど覚えられない)真面目さがおかしい。
最近のマトデとしてはかなり珍しい気がする「真面目だけど能力が低いダメな人」。真面目さがにじみ出ているからこそちょっととぼけた感じの理解力のなさが余計におかしい。
あんまりパッとしない映画のパッとしない主人公ではありますが、そのパッとしなさの演技がお見事で、やっぱりマトデもすごく上手くなったなぁとしみじみ。
この前観た「最後の決闘裁判」の役との違いよ…!

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