映画レビュー1430 『RRR』
言うまでもなく公開当時から観に行きたくてしょうがなかったんですが行くことができず、配信待ちしてたんですが人気作だからなかなか来ず、じゃあDISCAS使うついでに、ということで借りました。100円。お安い。
RRR
S・S・ラージャマウリ
サーイ・マーダヴ・ブッラー
N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア
ラーム・チャラン
アジャイ・デーヴガン
アーリヤー・バット
シュリヤ・サラン
サムドラカニ
レイ・スティーヴンソン
アリソン・ドゥーディ
オリヴィア・モリス
2022年3月25日 インド
179分
インド
レンタルブルーレイ(TSUTAYA DISCAS)
ちょっとヒットしすぎ?
- キッズ救助のため急遽タッグを組んだ2人はやがて親友に、しかし相反する立場で…
- 「王道娯楽映画インド風味付け」で初心者(?)でも安心
- 物語自体はかなりドメスティック
- 自分が期待していた“面白さ”は控え目
あらすじ
“普通に”面白かったんですが、猫も杓子も褒め称えていたのでかなりハードルが上がっていたのも事実で、個人的にはバーフバリ(2作目)の方が面白かったです。
イギリス領時代のインドのお話。
とある村で気に入られた少女・マッリがイギリス人総督に連れ去られた後になんやかんやあって──
少女を救うべく偽名の「アクタル」としてデリーにやってきたビーム(N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア)は列車事故の現場に居合わせていたんですが、その事故によって少年が孤立してしまい危険な状況に。
ビームは同じく現場にいた警察官のラーマ(ラーム・チャラン)と阿吽の呼吸で少年を救い、それがきっかけとなって2人は交流を重ねて親友に。
しかし警察ではマッリを救うべく行動している正体不明の男であるビームの逮捕が最優先事項とされていて、彼を逮捕することができたものには昇進が約束されており、その最も有力な警察官がラーマだったよ、と。
お互いの素性を知らぬまま交友を重ねる2人ですが、やがて当然のっぴきならない事態となるわけで…あとはご覧ください。
レベルの高さと物足りなさ
まー本当に「バーフバリ」の時以上に世間的に話題になった作品だと思いますが、僕の個人的な感覚でも「今までインド映画を観たことがない」と思しき友だちの結構な数が「RRR観た! 面白かった!」と言っていて、体感的にもかなり一般に浸透した映画のように感じます。
聞こえてくるのは絶賛評ばかり、そしてあのラージャマウリ監督…ということで僕としても相当な期待を持って観たんですが、結果的には「インド的な味付けの王道娯楽映画だな」という感想で、「バーフバリ 王の凱旋」を観に行った時のような「衝撃すぎて笑う」シーンはほとんどなく、良く言えば世界に向けて受け入れやすい直球勝負の大作、悪く言えば若干マイルドにして一般に迎合した作品、というような印象です。
もちろんそのレベルは高いのでこれだけヒットしたのも間違いないんですが、僕としてはやっぱりインド映画には「そんなの普通考えねーよwww」みたいな勢いのある非常識シーンを期待してしまうだけに、そっち方面のシーンがほとんど無かったのは物足りない。一言で言えばぶっ飛んでない。
非常に真っ当に王道娯楽路線を突き進んだ映画なので、「面白いんだけど俺がほしい面白さはこっちじゃないんだよなぁ!?」みたいな。いやきっとその期待している面白さは邪道なんだろうとは思うんですが。
ただこれを観て「インド映画すごい! 面白い!」ってなるのはもちろんいいことなんですが、僕は「もっと面白いよ!?」って言いたくなるんですよ。ヤシの木で飛ぶんだよ!? って。
でもそこに期待するのはやっぱり邪道なんだろう…と堂々巡りしております。
で、まあある程度勝算があってその辺のぶっ飛び要素を軽めにして“当てに行った”ような映画だなと思った一方で、ストーリー自体はかなりドメスティックなんですよね。インドの建国の父の話、みたいな。主人公2人も実在する独立運動家がモデルになっているそうです。
エンディングでも一切馴染みのないおっさんたちの肖像がバックにデカデカと映される中踊ったりしてて。「え、誰??」っていう。
多分インド以外のどの国でも「誰??」ってなったと思うんですよ。言ってみれば坂本龍馬とか豊臣秀吉をバックに歌って踊るエンドロールみたいな感じだったので。
あれを観る限り、当初から海外でこんなにヒットさせるつもりで作った映画ではないのかなぁと思ったんですがどうなんでしょうね。たまたま国内向けの話だったのがデキが良かったために海外でも大ヒット、みたいな感じなのかなと思うんですが…。
そんな印象なので、僕の周りのインド映画慣れしていない人たちがこぞって観て「面白かった!」って言ってるのはすごいなと感心すると同時に、さっきも書いた通り「これ以上にインド映画っぽいインド映画、あるよ!?」と言いたくなるわけです。(インド映画っぽいインド映画という概念)
果たしてこの「初めてインド映画を観た層」が面白かったと感じたのは、その「ザ・インド映画」的な濃厚さよりもわかりやすい王道路線だったからなのか、それとも単純にインド映画そのもののレベルが高かったからなのかはわかりませんが、仮に前者の「わかりやすい王道」故だったとしたら今度はストーリーがドメスティック過ぎるので、そのギャップが面白いなと思うんですよね。超ドメスティックな話なのに初めて触れた人たちが面白い、と言うギャップ。
韓国映画とかもそうですが、やっぱり良くできた映画はあんまり内向きか外向きか、とか関係ないのかもしれないですね。むしろその国により興味が湧いていいのかもしれません。
そう思うと「映画外交」的な意味でかなり功績を残した映画と言えるでしょう。主要賞ではないとは言えアカデミー賞まで受賞しちゃってるし。
バーフバリがベンチマーク
周辺事情のお話ばかりになってしまいましたが、まあ物語自体は特段あーだこーだ言うようなものでもないんですよね。わかりやすいし、細かく考察するような話でもないし。
若干雑なところも当然あるだけに、やっぱり「面白いけど期待以上ではない」かなと。期待しすぎたのもありますが。
逆にこの映画に「うおーーーーー!!」ってなれる人は羨ましいというか、どこまでそんなにのめり込む要素があったのか聞きたいところ。
別にそれが悪いとかセンスがないとかいう話ではなく、僕はそこまでの熱量を感じられなかったので教えてほしいなという感じです。
まあ、自分の感覚からしてそうなんですが、この映画を鑑賞したのが「バーフバリ前」なのか「バーフバリ後」なのかでだいぶ印象は変わりそうな気がしますね。
これを観たあとにバーフバリ観た人のリアクションが一番知りたいかもしれない。
このシーンがイイ!
肩車で暴れるシーンは“それっぽく”て笑いましたが、一番笑ったのはエンドロールにメインキャスト面してダンスに混ざる監督です。何してんねん!
ココが○
さすが評価されているだけあってよくできてます。ダンスもキレッキレ。
ココが×
言い飽きてはいますがやっぱり長いのは長い。あんまり「長いな」と感じることも無かったのでいいんですが、それでもやっぱり長い。
あとはもう少し突き抜けてほしかったところ。
MVA
インドのルー大柴ことアジャイ・デーヴガンが出てたのが嬉しかったですね。
んでまあ主演どっちでもいいっちゃいいんですが、こちらの方に。
N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア(コムラム・ビーム役)
少女を救うべく行動する野人系主人公。
ラーム・チャランの方はいかにもイケメン枠って感じでしたが、こちらは人懐っこさもあって良い主役だったかなと。