映画レビュー0806 『バーフバリ 王の凱旋』
去年から映画ファンの間でかなり話題になっていたこちらの映画。
海の日直前、何の気なしに「三連休だし映画でも観に行くか〜」と最寄りの映画館をチェックしたらなんと公開中ということで急いで行ってまいりましたよ!(ジャケ絵を描いたのでアップが少し遅れました)
鑑賞後は「バーフバリ!」しか言えなくなるという語彙力喪失映画と聞き、かなりハードルが上がった状態での鑑賞となりましたが、さて…。
バーフバリ 王の凱旋
全力マンガ的インド版マッドマックス。
- 観客に向けて全方位から全力攻撃を仕掛けてくるインドパワーの恐ろしさを味わえる歴史フィクション
- ご多分に漏れず長いもののその分どっぷり浸かった感に浸れるインドパワー
- 洋画に慣れてるといろいろ不思議な部分があってそこがまた癖になる
- マジなのか狙いなのかわからない笑いどころ多々
正直、事前の口コミがあまりにも好評すぎたので、やっぱりちょっとハードルが上がりすぎた感じはありました。そもそもそう言えばこういう「歴史モノ」的な映画ってあんまり好きじゃなかったよなぁ、と思い出しつつ。
(だいぶ方向性の違う映画ではありますが)同じインド映画である「きっと、うまくいく」「PK」と比べてしまう部分がどうしてもあって、この2作は本当に自分史に残るレベルで傑作だったと思っているだけに、それと比べると少し落ちるかなぁという印象はありました。
しかし、それでもですよ。
やっぱり世の中が語彙力を喪失し「バーフバリ!」と叫び続けている理由もわかる、一言で言えば「他にない」感が強烈な映画でしたね。やっぱりインドすげー、それしか言えない。
ちなみに当初日本で公開されたのは編集された141分のものだったようですが、そこで人気に火がついて「完全版を見せろバーロー!」という声が高まったことで本国仕様の完全版が公開となり、やがてあちこちの劇場で公開されるようになったおかげでうちの近くにもやってきましたよと。ということで僕が観てきたのはその完全版の方です。約3時間の長丁場。
主人公はアマレンドラ・バーフバリというヒゲなんですが、彼は劇中における(多分)インド最大の王国、マヒシュマティ王国の次期国王として内定していて、「王になるんだったらいろいろ知っとかなアカンで」と現国王である母・シヴァガミに言われ旅に出るよ、というところからスタート。
実はド頭で後の前フリにもなるシヴァガミのある行事と、それを完遂させるために象を服従させるバーフバリ、というシークエンスがあってですね。もう何言ってんのかわかんねーよ、って話だと思うんですが。その象の手なづけっぷりからしてもう規格外と言うかすごいんですよ。っていうかよくわからないままそのシークエンスを見せられて終わっていくんですよね。
え? 何これめっちゃ面白いんだけど笑っていいの? マジでやってんじゃないの? っていう。
結局全編に渡ってこういう「マジでやってんのか笑わせに来てるのかわからない」ような爆笑シーンが頻出するので、真面目な僕は「笑ったらインドの人たちは傷つくんじゃないか」と心配しつつゲラゲラ笑いました。もう。何なのこの映画。
そんなわけでですね、王国一の剣士と言われる(王家に一生仕える身分的な)奴隷剣士のカッタッパというオッサンとともに旅に出たバーフバリは、旅に出て早々に一目惚れしちゃってですね。小国の王族である彼女の暮らす王宮に使用人として暮らし始めちゃう、っていう。見聞広めるとかどうなったんだよ、と。
まぁとは言えお嫁さん探しも一応旅の目的の一つだった部分もあったのでそこは良いじゃん、というノリで見過ごし、やがてその彼女の王国に迫り来る、国家レベルの人海戦術を繰り出す謎の盗賊団との戦い他を描きつつ、バーフバリの一生をしかとその目に焼き付けよ、という映画です。(いい加減な説明)
おっと書き忘れましたが、実はこの「王の凱旋」はバーフバリシリーズ2部作の2作目にあたる映画でして、前作に「バーフバリ 伝説誕生」という映画があります。
普段であれば絶対に1を観てから観に行くタイプなんですが、今回ばかりはあまりにも映画クラスタによる「観ろ」圧がすごかったのと、あらすじも流れるから1を観て無くても大丈夫だよ的な情報も得ていたので我慢できずに先走ってきたわけです。
で、まず最初にそのあらすじが流れるんですね。日本語ナレーションで。字幕版を観に行ってもあらすじは日本語ナレーションでした。
それで…なんかわかったようなわからなかったような謎のあらすじではあったんですが、これが実は…結構“今作の”ネタバレをしているというか…不思議なあらすじだったんですよね。後からわかったことではあるんですが。
これはおそらくこの2部作の作り故なんだろうと思うんですが、時間軸的には2→1→2という感じでちょっと行き来するんですね。というのも1の主人公が2の主人公の息子で、その1の背景をより深掘りするために2(の前半〜中盤)があり、そこから1に戻った後に再度2に戻って決着、みたいな流れになるんですよ。
なので…まだ未見なのではっきりわかりませんが、おそらくは1ですでに今作の中盤のクライマックスまではネタバレしているんでしょう。
僕はあらすじは完全に1のみの内容だと思っていたので、途中で「あれ? これあらすじで話してた内容じゃない?」と気付いて結構驚いたんですが、そういう構造的な部分でどうしても1と絡み合っちゃう面があるために少しそのクライマックス前後の展開のドキドキ感が薄れちゃったような気はしました。そこは残念だったなー。
まあ、ただ…ぶっちゃけストーリーとかどうでもいいというか、ネタバレなんて小さいことだぜ的な勢いのある映画なのもまた事実なので、あんまり細かいことに気を取られて楽しめなくなるよりは、その場その場で展開される物語についていくだけ、っていうのが一番良い見方なのかもしれません。
話としては大河ドラマのような歴史モノで、国家権力やら家族愛やら夫婦愛やら戦争やら王の器やらと言ったアレコレをインドパワーで封じ込めた一大スペクタクル政治ドラマだと思うんですが、当然ながらインド映画らしくあらゆるジャンルを内包したサービス精神も感じられるし、なんというか「このジャンルでこういう笑いは差し込まないだろうしこれは笑わせに来てるわけじゃないんだろうゲラゲラ」みたいな、すごく不思議な感情の動きを感じる映画なんですよね。
見た目的には(未見ですが)ちょっと「ベン・ハー」っぽいなとか、でもなんかもうバーフバリはニュータイプっぽいしなんなら「ワンピース」に近いなとか、バカバカしさも振り切って思いっきりやりたいことをやってる感じは「マッドマックス」っぽいなとか、一言で「こういう映画!」と言えないごった煮感と勢いとインドパワーがマジインドでした。もうなんなの。インド。マジでなんなの。ちょっと今までの「映画脳」を超えてくる感じ。
はっきり言って主人公補正はエグすぎるぐらいだし、もうあちこちでツッコミどころは満載なんですよ。だからってじゃあ一つ一つ突っ込んでたらもう完全に野暮なわけです。ボーヤー。誰が見てもボーヤー。「ツッコミどころ満載だけど突っ込んだら負けなのは誰もがわかる」という点でもものすごく珍しい映画だと思いませんか。思いませんかね?
結局は楽しんだ者勝ちな映画、ってことなのかなー。本当に不思議な映画でした。
ちょっとニュアンスは違うかもしれませんが、鹿を見て「あれは馬だって馬だってー!!」と力強く言われたらもう馬として見るしかない、むしろマジレスして鹿だって言い張る方がかっこ悪い、みたいな力強さがあり、そのカリスマ性のようなものが劇中のバーフバリとリンクしていたとかしていないとかいう噂です。すごいぜインド。
ということでね。ハードルが上がりすぎてはいたものの、結果的にはやっぱり観ておくべきだったし観て良かったなと思いました。っていうかそう思わないと人としてダメだろぐらいの謎の勢いがある映画です。もうほんとなんなのインド。そのうち観てるだけで病気が治る映画とか作りそうな勢い。謎の効能。それがインドパワー。
順番逆になりますが、そのうち必ず1も観たいと思います。というかこれももう一度観ないといけない気がしてきた。
インド料理屋に行ったら味わう前に「美味しいデショ? 美味しいヨネ? おかわりするヨネ??」ってカレーを盛られる感じ。でもそれが嫌じゃない、みたいな。
なんなのマジで。インド。
このシーンがイイ!
途中の戴冠式は圧倒されました。すごくかっこよくて良いシーンだと思います。
一番笑ったのは終盤のヤシの木的なものを使った例のシーンかな。すげー笑った。「嘘でしょwwwww」って。
あと「2本矢は無理ですよ」からのバーフバリね。あれも「出たよwwwwww」ってすげー笑った。
ココが○
もう何なんでしょうね。何が良いとかじゃないんですよね。
ただまあ一つ書いておくなら、やっぱり笑えるってところでしょうか。ここまで笑いがすごい映画だと思わなかった…。「人間の動きじゃねぇwwww」みたいなのもしょっちゅう出てきます。
ココが×
長い割に終盤の配分が少なめに感じたのが少し残念。バランス的にはもう少しクライマックスに時間を割いて欲しかったような気がします。
あとは…やっぱりちょっと長いかなぁ。「きっと、うまくいく」「PK」もそうでしたが、開始1時間ぐらいはやっぱりちょっと退屈で眠くなりました。
MVA
役者陣もなかなかみなさん個性的でしたが…割と順当にこの人にしようかな。
サティヤラージ(カッタッパ役)
奴隷剣士カッタッパ。もう一人の主人公と言っていいでしょう。
こんなおっさんがもう一人の主人公とか渋すぎますが、しかし良い演技に味のある佇まいでとても良かったと思います。