映画レビュー1429 『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』
DISCAS2本目はかなり昔に観ようとメモった記憶のみが残っていたインド映画。
タイトルだけで「あっ、これ観たかったやつ」と借りたんですが、今になって確認すると監督・主演・ヒロインがあの「ハッピー・ニュー・イヤー」のトリオなんですね。こりゃあ期待大やで…!
恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム
ファラー・カーン
ムスタク・シェイク
ファラー・カーン
シャー・ルク・カーン
ディーピカー・パードゥコーン
アルジュン・ラームパール
シュレーヤス・タラプデー
キラン・ケール
ジャーヴェード・シェイク
2007年11月9日 インド
169分
インド
レンタルブルーレイ(TSUTAYA DISCAS)
後半がお見事。
- 持ち前のポジティブさと行動力で脇役俳優ながら売れっ子女優といい感じに
- しかし彼女は秘密裏にイケメン敏腕プロデューサーと結婚していた…!
- 絶望で終わる前編を経ての後編が本番
- 相変わらずパードゥコーン神が神
あらすじ
想像通り非常に良かったですね。インド映画らしいいろいろが楽しめる、インド映画初心者にもオススメしやすい良作だと思います。
売れない脇役俳優のオーム・プラカーシュ(シャー・ルク・カーン)は「ちょっと彼女に会いに」とスター女優のシャンティプリヤ(ディーピカー・パードゥコーン)の看板まで行って語りかけるというなかなかイッちゃってるオタクっぽいお方です。
親友のパップー(シュレーヤス・タラプデー)と二人三脚で「どうすれば売れっ子俳優になるか」と頑張っておりますが相も変わらず芽が出ないまま、脇役としてちまちまお仕事を重ねる日々。
盗んだ招待状で新作映画の上映会に潜り込んで強引にシャンティプリヤと顔合わせしたりと“若気の至り”的な行動力でお近付きになり、やがて同じ映画にキャスティングされ(当然オームは超脇役ですが)同じ現場に挑んだところ、トラブルによってシャンティプリヤが火事現場に置き去りにされる事件が発生しますが、当然激惚れオームは一人火の中に飛び込んで彼女を救い出し、それによって親しくなった2人はデートしたりとなかなかいい感じでございます。
しかしある時彼女の控え室の隣の部屋にいたところ、彼女の部屋にやってきた敏腕プロデューサーのムケーシュ(アルジュン・ラームパール)との会話を聞いてしまったオームは、その時すでに2人が結婚していたこと、それをシャンティプリヤが公表したいと願っていたことを聞きショックを受けます。
その後さらに悲劇に見舞われるオームとシャンティプリヤですが…あとはご覧くださいませ。
前半はただの前フリ
最初に余談なんですが、今回レンタルしたブルーレイ、何回再生しても後半少ししたところ(寂れた撮影所シーンの終わりまで)で必ず冒頭の注意書き(無断複製禁止とかああいうやつ)に戻ってしまい、チャプター指定しても後半部分を選択すると同じく必ず冒頭に戻ってしまう動作を繰り返していて「これが輪廻か…!」と打ちひしがれまして、問い合わせして別のディスクを送ってもらってもまったく同じ症状が出てしまったので、これは再生機(PS5)側のバグでは…? とホコリを被っていたPS4で再生したところ普通に観られました。何だったんだよ…!
レンタル版のみの問題なのか、PS5のシステムソフトウェアのバージョンによって違うのか等いろいろわからないこともありますが、同じような症状に悩まされた人がなんとかこのネットの僻地までたどり着いてこの情報に出会ってくれたら嬉しい限りですが改善策はわかりません。別のハードで再生してねっていう。
他のソフトでも発生するのかもわかりませんが、かなり調べても同じようなケースは見当たらなかったので相当レアなバグ(?)だと思われます。なのでおそらくPS5側の対応もなさそうなのがつらい…。
さて、話を戻しまして本編の話。
タイトルの通り「輪廻」がテーマの映画なので前半と後半で主人公が変わります。「マガディーラ」もそんなような話でしたがやっぱりこのテーマ自体がちょっとインドっぽいですね。宗教観というか死生観というかそういうようなものを感じて。
で、ぶっちゃけますが前半に関しては正直全然面白くなくてただの前フリです。例によってちょっとしたダンスシーンとくだらないギャグを織り交ぜつつ、後半の前フリとしての役割しかありません。
まあ前半が面白くないのもインド映画あるあるの一つですよ。前半から面白い映画ってあんまり記憶にないぐらいおなじみ。バーフバリは前半から笑ってたけど。
後半はタイトル通り前半の主人公が輪廻転生した人物が主人公になるんですが、ショボい脇役俳優でもいい人だった前半と打って変わって(金持ちの家ということもあり)とにかく自信過剰で嫌な奴になっているのが(これも定番の流れとは言え)面白いところ。
余談ですが前半は割とだらしなボディだったシャー・ルク・カーンも後半になると即座にバッキバキのシックスパックをアピールするシーンが挟まれ、「シャー・ルク・カーンは水を弾くシックスパックを見せないといけない契約でもあるのか…?」と笑わされること間違いありません。まったく同じようなシーン、ハッピー・ニュー・イヤーでも観たぞ。
やがて当然ですが前世の記憶を取り戻した彼は、前世の無念を晴らすべく計画を立てるわけですが…まあその辺は観ていただくとして、前世のいろいろをフリに現世の話を盛り上げる作りはなかなか良かったです。
「そんなはっきり前世の記憶が戻ることある!?」と思わなくもないですがその辺はやっぱりお国柄もあるだろうし、映画なのであんまりその辺突っ込んでもしょうがないかなということで壮大にスルーして観ましょう。
ちなみに当然ディーピカー神も後半にも登場しますが、「輪廻して前世の記憶がある」のは主人公のシャー・ルク・カーンのみでディーピカー神は「シャンティプリヤにそっくり」なただの頭が悪そうなギャルとして登場します。余談だけどそのギャルディーピカー神がまたいいんだわ…! メガネでオフモード全開のディーピカー神が特に最高でした。
しかし当然「ただのギャル」だけでは話が進まないし…と観ていったところ、「輪廻」の前提を利用したちょっと捻りの効いた展開がなかなか素晴らしく、なるほどこれは面白い物語だなと思います。
ここまである意味でオカルトと言える軸をベースに物語を組み上げられるのはインド映画ならではだと思うので、話の展開としてはありきたりだとしてもあまり他にないストーリーになっている分面白さが感じられるのが強い。
おまけにシャー・ルク・カーンとディーピカー・パードゥコーンの共演なので見ごたえもあるよ、と。
ちなみにディーピカー神はこの映画がヒンディー語映画のデビュー作となったそうで、さぞかし鮮烈なデビューとなったことでしょうね。のっけからスター女優として描写されててもまったく違和感がないし。
当時二十歳ぐらいなんですが、この7年後に公開となるハッピー・ニュー・イヤーの頃と比べてもまったく違いがわからない程度に顔面が完成されすぎているのが衝撃です。マジビジ。(マジ美人)
お決まりのパターンとはちょっと違う
どうしても半分ぐらいさして面白くない話を追わなければいけない分ちょっと評価が下がりますが、しかし我慢して観ただけ後半しっかり面白いのも事実です。
例の僕一人が提唱しているいわゆる「ディア・ハンター方式」ってやつですね。
なかなか終盤の盛り上げっぷりは見ごたえがあるし、タイトルと反してただの甘々恋愛映画ではないのもポイントが高い。というか最終的には恋愛映画と言って良いのか迷うぐらいにちょっと映画の方向も変わってくるのがまたインド映画らしくて面白いところです。
ラブコメと言ったらもう十中八九が「出会って喧嘩してくっついて終了でしょ」とパターン化されているように思うんですが、この映画はそういうお決まりからも少し外れてくれるのでそこも高ポイント。
やっぱり欧米の映画ばっかり観てたらあかんな〜と改めて思わされる良作でございましたことよ。
このシーンがイイ!
最後の歌のシーン、曲自体の良さも含めてすごく良かった。その日の夢に出てきたぐらい良かった。ちょっとシリアスで。
どうでもいいシーンとしては、授賞式的なシーンで出てきたアクシャイ・クマール主演の架空の映画がくだらなすぎて爆笑しました。本編観たいぞ。
それとエンドロールが最高。この監督の映画はエンドロールに愛があるのがとても良い。
ココが○
結局「ラブコメのお決まり」とはちょっと違う内容なのが一番のポイントなのかなと思います。おヒュー主演じゃこういう映画絶対無いよな、みたいな。(好きだけど)
ココが×
やっぱり前半の清々しいまでの前フリっぷりでしょうか。まああの傑作「きっと、うまくいく」や「PK」も前半は退屈だったし、最終的に面白いのであればいいか、と思いますが。
MVA
うーん、やっぱりこの人か…。
ディーピカー・パードゥコーン(シャンティプリヤ/サンディ役)
ヒロインのスター女優→ギャル。
もう容姿が強すぎるので出てくるだけで100点なんですが、演技もやっぱりお上手なんですよね。とてもヒンディー語映画デビュー作とは思えないぐらい堂々としてるし。
文句ありません。本当に綺麗だし上手。