映画レビュー1569 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

今年一番の話題作ではないでしょうか。公開翌日の先週土曜日に観に行ってきました。
原作本も読んでいてすごく好きな作品なので、映画化の話を聞いたときは期待半分不安半分でしたが…さて。
(予告編リンク載せてはいますが未見・原作未読の方は観ないことをオススメします)

プロジェクト・ヘイル・メアリー

Project Hail Mary
監督

フィル・ロード&クリス・ミラー

脚本
原作

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
アンディ・ウィアー

出演

ライアン・ゴズリング
ザンドラ・ヒュラー
ライオネル・ボイス
ケン・レオン
ミラーナ・ヴァイントゥルーブ
ジェームズ・オルティス

音楽
公開

2026年3月20日 アメリカ・日本

上映時間

156分

製作国

アメリカ

視聴環境

劇場(IMAXレーザー 2D)

プロジェクト・ヘイル・メアリー

原作小説の映画化作品としては過去一に近い。

10
昏睡状態から目覚めると、寝袋のようなものに入ったままチューブを口に突っ込まれていた上に記憶喪失で…
  • 一人謎の場所で目覚めた男、過去の記憶を思い出しながら自分が何をしているのかを把握していく
  • 地球は危機にあり、その対策のためどうやら宇宙にいるようだが…
  • 大ヒットSF小説の映画化、内容はかなり原作に忠実で余計なことをしていない誠実な作り
  • 陽のライアン・ゴズリング良すぎる

あらすじ

性質上、過去一レベルで(軽重問わず)ネタバレを回避するべき作品だと思うので、もうさっさと観に行けよと言いたいところですが一応ざっくり中身に触れない形でレビューします。

謎の一室で昏睡状態から目覚めたグレース(ライアン・ゴズリング)。寝袋のようなものに入った状態で、口には管が突っ込まれていて即吐き出し、ロボットアームがなんやかんや言ってきますがわけもわからずゴロゴロ転がったりしていくうち、どうやらここは宇宙船の中ということがわかります。
記憶喪失状態のため、自分が何者かもわからず、なぜここにいるのかもわかりませんが、徐々に少しずつ過去の出来事や「なぜここにいるのか」、自分が何をするべきなのかを思い出していきますが…あとはご覧ください。

内容にあまり触れずに感想書きます

ということでまったく何が何やらわからないあらすじですがご容赦ください。そういう話なので。
これ、予告編だと(一発目ですら)「そこまで観せんじゃねえよ!」といきり立つぐらいかなり重要な要素がいきなり飛び出してきて憤慨するんですが、原作者は「ネタバレ気にしなくていいよ(それぐらい傑作だから)」と自信満々だそうです。
まあ確かに観終わったあとから振り返れば「ある程度ネタバレを知ってても良いものは良いと言えるぐらいレベルの高い映画」ではあったと思いますが、ただこの作品(原作含む)はそもそも謎めいたスタートから「そういう話だったの!?」という驚きを挟んで最後まで進んでいくとさらに楽しめる的なものなので、もう最初から余計な情報は入れないほうが良いに決まってます。うるせーよ作者と。ここは文句を言っておきましょう。絶対に予告編もその他の情報も入れずに観たほうが良いです。(予告編載せておいてなんですが)

で、内容にはあまり触れずに感想を書きましょう。
まず自分としては珍しく「映画公開前に原作小説既読」というパターンだったので、例によって「原作小説がある映画はいろいろ端折って中途半端になりがち」な傾向が強いだけに最初に書いた通り期待半分不安半分だったわけですよ。「ダ・ヴィンチ・コード」みたいになったらたまったもんじゃねーなと。(しつこく文句を言う勢)
それなりに上映時間が長い映画とは言え、原作は上下巻の本なのでかなり端折る必要があるだろうし、となるとあの辺を削るんだろうか…もしかしてあのエピソードは無くなるのでは…ラストも変わっちゃうのでは…といろいろ考えていたんですが、その辺の不安は全部外れまして、逆に「どうやってあの原作をこんなに濃厚な形で閉じ込めたの!? マジシャン!?」とびっくりするぐらいしっかりと原作の“記憶に残っている印象的な部分”をまるっと映画化した内容になっていて、その取捨選択のセンスが素晴らしいなと感服致しました。本当に。
僕の中では小説が原作の映画で最も出来が良かったのは「L.A.コンフィデンシャル」なんですが、あれは映画オリジナルの内容が非常に良かったので今回とはだいぶ違うケースなんですよね。
今作はかなり原作に忠実で、映画オリジナル要素として追加したと僕がはっきりわかったのは2シーンぐらいなんですよ。
それも映画化に際して必要だろうなと納得感のあるシーンだったので全然不満もなかったし、削除したところはそんなに目立って多くない(ように感じられた)ので本当に素晴らしい映画化だなと。
最近「たまに甘い飲み物が飲みたくなるけど糖類は摂りたくないから無糖で美味しいの教えて」とChatGPTに無茶言ったら糖類ゼロのカルピスウォーターを勧められ、飲んでみたらこれが「ちょっと薄いカルピスウォーター」って感じですごく美味しくてすげーなと感動したんですが、そんな感じです。(どんな)

それとネタバレにならない部分で声を大にして言っておきたい点が一つありまして、それは主人公・グレースのキャラ作り。
というのも彼はメガネをかけているんですがそのかけ方、ホールドの仕方がめちゃくちゃ“グレースっぽくて”最高だったんですよ。
原作にその描写はなかった(メガネをかけてる描写自体なかった)と思うんですが、これがものすごくハマっていてキャラ作りすげーな! とこれまた感動しました。
監督か脚本家か原作者かはたまたライアン・ゴズリングなのか誰のアイデアなのかはわかりませんが、メガネ一つでキャラクターのそれっぽさを感じさせる見せ方は本当に驚きで、小道具一つながらものすごいものをぶっこんできたなと衝撃的ですらありましたね。あれは本当に発明と言っていいぐらいの上手さだと思います。
初めてキャスティングを聞いたとき、ライアン・ゴズリングと聞いて「上手いのはわかってるけどまた?」とちょっとウンザリしてたんですよね。「ファースト・マン」でも宇宙行ってたじゃん、みたいな。
まーしかし観終わってみたらもう「ライアン・ゴズリングしかいねえ!」って歓喜ですよ。グレースはライアン・ゴズリングだったんだ! と。
そのメガネのかけかたにせよ、演技一つ一つにせよ、完璧すぎて文句の出ようがありません。
考えてみたら「ドライヴ」に始まる陰のライアン・ゴズリングはいつも同じ感じだな…と思って観ていましたが、「ナイスガイズ!」と今作のような陽のライアン・ゴズリングは本当に最高だなと改めて感じました。まじで。

公開中にぜひ

今回はどうしても原作が先に(頭に)あったので「いかにその原作をしっかり映画化するか」の基準で観て「これはもう文句なし、参りました満点」と思って満点評価にしましたが、物語そのものも(映画だけ観ても)すごく良いものなのは間違いないので、やっぱりこれはかなり高得点をつけて然るべき映画だと思います。
僕がそもそもこの手のSFが好き、というのもあるんですけどね。というかそれもあって原作に興味を持ったという流れなんですが。
まさに「未知」への興味がグイグイと引っ張っていく力強さの前半に、後半は少しジャンルが変わった引力で見せきる物語になっていて、時間的には長いながらもまったく長さを感じさせない作りの良さも見事でした。
軽快で笑える部分も多くあり、テンポよく過去の話も盛り込んでダレない構成は原作同様素晴らしいと思います。
ぜひ劇場で、できればIMAXその他充実した環境で観て頂きたい…!

プロジェクト・ネタバ・レアリー

偉そうに原作との差異を云々カンヌン書いておりますが、そこまで詳細に覚えているわけでもないので的外れなことを書いている可能性があります。
まず僕が気付いた「追加シーン」2つですが、1つはストラットがカラオケするシーン。めちゃくちゃ良いシーンでしたね、あれ。
もう1つがラスト前、ストラットがグレースのレポートを観ているシーン。あれは見せすぎかなとは思いましたが「地球が助かったのか否か」を描かないのはいくらなんでもアレなので映画的に用意するべきシーンだったと思います。
逆にごっそり削られていたのは終盤グレースがロッキーを助けに行った後のシーン。あそこでロッキーがグレースと再会するのはかなりのエモポイントなのでじっくり観たかったとは思いますが、テンポを優先してああなったのかなとこれはこれで若干の不満はありますが許容範囲内でした。
その他ロッキーのあのセリフが無い、とか言っている人もいてみんな細かいこと覚えてるな〜と思いましたが僕はそんなに気になりませんでしたね。のほほんとしすぎかもしれませんが。
また映画から入った人の中には「なんでただの中学教師にあんな強引に行かせるのか」と言っている人もいたそうで、確かに原作を読んでいないとその辺もあんまり伝わらないのかもしれません。(どう考えても適任者なのはわかると思いますが)
原作では目的地(タウ・セチ)に着くまでの食料その他節約の観点から昏睡状態にして運ぶ(そのせいで他の2人は死んでしまった)必要があり、その昏睡状態にする薬の適正云々があってグレースしかいない、という話が出てくるんですがその辺りもカットされているのでわかりづらい面はあるかもしれません。
まあでも時間の限られた映画への転換を考えれば、この辺りは順当な作りになっているのではないかなと思いますね。というか面白かったら原作も読め! と筆文字で言いたい。

その「強引に連れて行く」シーン、もしかしたら削られるんじゃないか…と不安だったんですがきちんと残してくれて安堵しました。
あれがあるとないとで印象が180度変わってくると思うんですが、平気で削りかねないのがハリウッドですからね。本当に安堵しましたよ。
最初からヒーローとして行ったわけではなく、無理矢理放り出された人間がヒーローになった、というのはやっぱりこの話のキモの一つだと思うので、当然ですが入れてくれて良かったです。
いや原作を読んでいれば入れるに決まってると思うでしょ? 何言ってんだお前と。その気持ちもわかります。
が、それは映画に裏切られてきていない人の綺麗な瞳からしか出ない言葉ですよ。
こちとら散々裏切られてきたので濁りきった目で「おまえらカットしねえだろうな…!」とハリウッド方面を睨みつけていたので安堵したわけです。
その辺もあって「不安半分」が大きかったわけですが。つまり本当のところは期待半分不安半分ではなく期待2割不安8割ぐらいだったんですが。
その分出来が良くて評価が上がった、というのもあるでしょう。
劇場でなければかなり泣いていたと思います。
もー目から鼻から拭うのが大変でしたよこっちは。
元々エモい物語だとは思っていましたが、映像になってよりそれが顕著になったというか、友情物語の側面がかなり強調されたように感じられ、正直ここまで泣くとは思いませんでした。
現場でどういう撮影がなされていたのかはわかりませんが、「普通の演技」ではない状況下であんなエモい演技ができるライアン・ゴズリング、やっぱりすごいわ…と脱帽です。

このシーンがイイ!

どのシーンが良いとか言うのもネタバレになるのでなかなか書きづらいところですが…。
わかりづらい&差し障りないところで言うとカラオケのシーンですね。
あれ、映画オリジナルですよね? すごく良いシーンだなとグッと来てしまいました。

ココが○

映画化のレベルは上に散々書いた通りですが、それに加えてやはり映像の良さと劇伴の良さも書いておきたいところです。
映像は本当に息を呑む綺麗さだったし、きっちり感情面が伝わって来やすい劇伴もとても良かった。
なのでやっぱり総合的に力の入った、抜かりのない映画と言えるのではないでしょうか。

ココが×

終盤カットされたところが「えー! もうちょっと観たかったな…」と思いましたが、それぐらい。
映画のテンポを考えればやむを得ないところもあるので、まあ納得はしています。

MVA

なにげにカールが良かったなと思いつつ、まあこの人しかいないでしょう。

ライアン・ゴズリング(ライランド・グレース役)

主人公。それ以外は観て頂いて。
まー本当に「またライアン・ゴズリングかよ」からの「完全にライアン・ゴズリングがグレースだった」と主従が逆転するかのようなハマりっぷり。お見事 of お見事でした。
この役、もっと上手くできる人は想像つきません。めちゃくちゃ良かったです。
稀に出てくる「この時期のこの人にしか出来ない役」の一つでしょう。

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