映画レビュー0058 『L.A.コンフィデンシャル』
かつて世間が「タイタニック」に沸いていた頃、あまのじゃくの自分は「ケッ! 何がタイタニックだよ! ケッ!」と友達二人(当然のように男)を連れ、銀座のみゆき座まで映画を観に行きました。そのとき観たのが、この作品。
劇場は当然のようにガラガラでした。
ずっと廃盤でしたが、最近ようやく復刻され、購入。通算で4度目ぐらいの鑑賞でしょうか。自分の中では、歴史に残る名作です。
L.A.コンフィデンシャル
脚本、音楽、配役、演技、全部カンペキ!
大まかに言えば、一つの殺人事件を発端に、その他の事件が登場人物と共に収束していく話ですが、その芯となる事件の構造がしっかりしつつ、さらにクセのある魅力的な登場人物が深みを与えつつ、刑事の出世やら恋愛模様やら友情やらが絡み合う話をわかりやすく展開していきます。
これだけ深みのある、味わい深い物語でありながら、理解しやすい内容にまとまっている映画はなかなか無いと思いますね。
複雑怪奇で「なんかすごそう」と思わせたり、登場人物が大量に出てきて話を膨らませたり、という方法を取らずに、人物を絞って、これだけ魅力的な話を作り上げるのはスゴイの一言。
そういった物語の見せ方のうまさに加えて、やっぱりこの映画の一番の良さは、クセのある刑事3人のキャラクターと配役でしょう。
暴力的だけど女性に優しい刑事をラッセル・クロウが、出世欲に溢れるイヤな同僚刑事をガイ・ピアースが、逮捕劇をスクープさせて裏金を稼ぐ狡猾な刑事をケヴィン・スペイシーが、それぞれ演じているんですが、これがもう本当に「それっぽい」。
特にラッセル・クロウとガイ・ピアースはこの作品が出世作と言われていますが、それもうなずける本物っぷりがとにかく素晴らしい。
事件が進むにつれて、それぞれの成長や、関係性の変化が見えるのがまたイイ。
ところどころで「男の友情」を感じる場面があって、そこがまた「いいなぁ~」と思わせるんですよね。
極め付きは音楽。
1950年代のロサンゼルスが舞台のためか、どことなくノスタルジックな雰囲気のある音楽がまた素晴らしいのです。
たまたまテレビを付けた時にやってた、テレ朝の「交渉人」でこの映画の音楽を丸パクリしてるのには度肝を抜かれましたが、逆に言えばそういう場面で気付かされたぐらい、非常に印象深い映画音楽なんですよねー。
特にエンディングでのメインテーマの流し方は鳥肌モノ。
最初から最後まで、本当に隙のない名サスペンス映画だと思います。
思えば、自分が「サスペンス好き」だと認識したのは、この映画を観てからだったかもしれません。
ココが○
当然10点なんて付けちゃう映画は全部良いに決まってるんですが、例えば1950年代っぽい衣装であったり車であったり、そういう雰囲気がまた良かったりするんですよね。
あとは特にケヴィン・スペイシーが、ですが、表情だけで結構演技している部分があって、その辺りを観る楽しみもあります。
ココが×
もちろんほぼありませんが、強いて言えば、最後が結局ドンパチで決着付いちゃう点と、そのドンパチが少し信憑性無いような戦いなのがほんの少し残念かな、と。
MVA
この映画を観た人には、大体「どの刑事がよかった? 」って聞くんですが、僕はもう初見の時から断然、この人でした。
ケヴィン・スペイシー(ジャック・ヴィンセンス役)
人にオススメする度に言っているんですが、この人のこの映画での「能ある鷹は爪を隠す」感がたまらないんですよ。
他の二人と比べても、一人だけ大人な感じがするし、ものすごくスマート。
途中で刑事魂に火を付けられるシーンがあるんですが、そこでの決意の表情も素晴らしい。この演技はもう文句の付けようが無いです。
この映画で初めて彼を観たんですが、一発でファンになりましたね。怪しい役ばっかりじゃないんですよ、彼も。