映画レビュー1580 『監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影』
先週はボヤボヤしてたら休みが終わっていたので更新を忘れました。
さてこの日はなんとなくU-NEXT以外から探そうかな気分だったのでネトフリのドキュメンタリーを観ることにしました。
監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影
ジェフ・オーロースキー
デイヴィス・クーム
ヴィッキー・カーティス
ジェフ・オーロースキー
スカイラー・ギソンド
カーラ・ヘイワード
ヴィンセント・カーシーザー
マーク・クロフォード
2020年9月9日 インターネット
94分
アメリカ
Netflix(Fire TV Stick・TV)

現代人必見です。
- Google、Twitter、Facebook、Instagram等の錚々たる企業の元従業員たちが証言するドキュメンタリー
- SNSがいかに人々の時間を奪うことに腐心し、フィルターバブルに閉じ込めているかを語る
- ドキュメンタリーとしては珍しく「現代社会はこうなっている」的なドラマパートあり
- 今の時代、誰にとっても他人事ではない内容
あらすじ
タイトルからして面白そうだなと観ましたが、案の定面白かった&怖かったので皆さん観て頂ければなと。
例によって何も無い空間に椅子だけ置いてインタビューに答える的なよくある形式のドキュメンタリー。
答える人たちは元Google、元Twitter、元Facebook、元Instagramなどの今や誰もが知っているIT大企業の元従業員の皆さんです。それなりに高いポジションだった人も結構出ています。
彼らが「今の(主に)SNSは、いかに滞在時間を長くするかに腐心していて、矢継ぎ早に繰り出されるおすすめを観ていくことでどんどんその人の依存度を高めている」というような話をしていきます。
またこの構造によって人々はフィルターバブルに閉じ込められ、要は「観たいものしか観ない」状態になっているがために軽々と陰謀論に引っかかり、それによって世間が二分されていくような問題についてもデジタルコンテンツ方面から解説していく形のドキュメンタリーになっております。
とりあえず観よう
細かい説明は省きますが、まあ大体これだけ読めば「なるほどそういう話か」とわかると思うので、興味があればぜひ観て頂きたいところ。
結局内部で働いている人たちにしてもSNSの弊害については認識していて、それでも「マネタイズ=依存させるためにこういう仕組みを取り入れよう」と改良を重ねていくうちにモンスターが出来上がりました的な感じですね。
印象的だったのは従業員の人たちですら「子どもにはSNSをやらせない(やらせたくない)」と言っていた点で、要は構造自体にかなり問題があることについてサービス提供者側も認識しているという話なんですよね。
聞けば聞くほど始めは「そんなつもりはなかった」ものが巨大化して行って手を付けられなくなってしまった感もしてきて、そこも含めて今の問題の難しさを感じさせます。
非常に論点も考えるべきポイントも多いドキュメンタリーだったので、ここであれこれかいつまんで説明を書くよりはあらゆる人に一回観て考えて頂きたいなと思うんですが、中でも僕が非常に考えさせられたのは途中に出てくる“自転車との比較”。
実際は自転車ではなくてもいいんですが、要は昔からある道具はそこにあるだけの受動的なもので、使われるのを待っているだけのものだったのが、スマホに入っている“道具”は性質がかなり異なる、というお話。
例えば最近内部情報漏洩で話題の「BeReal」なんてその最たるものですが、その時に自分が使うつもりはなくても通知によって「見なきゃ(やらなきゃ)」と行動を促され、そして開いたら今度は次のおすすめがレコメンドされ、結果何時間もかぶりつきになって時間が潰れていた…というのは珍しくない話だと思いますが、そうして気付かないうちに行動変容を迫られ、その結果観ているものによって価値観も変わっていくし政治的な行動も考え方も変わっていって緩やかに人格が変えられている…という何ならちょっとSFっぽいお話ですが、実際そういう側面はかなりあると思うので非常に恐ろしい話だな、と。(だから通知は切れ、と出演者が言っていたのも印象的)
僕なんかはまだそんなに依存度が高くない(なんならスマホがなくてもあまり困らないぐらいの悲しい生き物)と思うのでまだマシな方だと思いますが、本当にずっと見ている人はそれしか見ていないぐらい囚われているし、そのことについても悪いことと思っていない…どころかそれによって賢くなっていると錯覚している人すらいるような状況なので、これは本当に怖いしこの先どうなるのか想像もつきません。
少し前にユヴァル・ノア・ハラリの「NEXUS」という本を読んだんですが、その内容ともかなり符合するポイントが多く、今のデジタル社会の先には結構な問題が控えているであろうことは間違いなさそうだな、と思わされました。
この映画でも、また「NEXUS」でも取り上げられていたこととして、SNSが選挙に与えた影響の話があります。
日本でも例の兵庫県知事選以来同様の問題が起こっていると思いますが、SNSによって偽の情報が拡散し、訂正情報は見られない上になんなら訂正された頃には選挙自体終わってます、みたいな笑えないことが各国で多発していて、それもあって世界的に民主主義が融解している様をまざまざと見せつけられました。
この世界、どうなるんでしょうね…。
またこの映画はドキュメンタリーですが、途中途中でドラマパートが入ってくる珍しい構造になっています。
主人公はおそらく高校生ぐらいの少年で、彼がいかにスマホ(≒SNS)に依存しているのか、それをごくごく普通の光景として展開するドラマになっていて、特段変わった光景でもないものの「スマホ依存は良くないぞ」的な映画の中にぶち込まれているだけでなんだか不穏さも感じるし、「確かにこのままじゃまずいよな…」と自らを省みさせられる点もありました。
その結末については観ていただくとして、この「今ではありふれた光景」が何を意味しているのか、そのありふれた光景は本当に“普通のもの”として受け入れてしまっていいのか、非常に示唆に富んだ内容になっていて、そのドラマ含めてとても面白い映画だったことは間違いありません。
様々なジャンルで同じようなロジックが展開している
一方で、この「依存度を高めて個人の限られたリソースを奪い取る」ことに執念を燃やしている存在はSNSに限らず他の様々なジャンルで見られることも忘れてはならないでしょう。
例えば糖類依存で食べさせ続ける超加工食品とか。
日課を課すことで毎日プレイさせ、ギルドに入れて相互関係で辞めづらくする基本無料のソシャゲとか。
なんならこの映画を提供しているネトフリも程度の差こそあれそういう性質があります。(だからこそネトフリオリジナルなのがちょっと笑っちゃうポイントなんですが)
結局今の「無料、もしくは手頃に手に入る何か」は大体の部分でその価値を依存性や情報で換金させていて、逆に言えばそれらを選んでいるうちは対価として個人の情報と自由意志や将来の自由を提供していることになるんでしょう。(情報を握られることで将来の行動がコントロールされる部分がある)
恐ろしい世の中やで…!
一方こういったものに対しての抵抗というか、自分自身をアジャストメントする機能としては手前味噌(?)ですが映画だったり書籍だったりを(自分で選んで)観る(読む)というのが結構有効な気がしていて、こういう時代だからこそ「自動的におすすめされるものではないものを手に取る」ことの大切さがより増してきているような気がします。リアル本屋さんで見知らぬ本と出会う、とか。
僕の場合、映画は本当に(グロ以外は)なんでも観るし、古い映画も好きなのがすごく大きい気がするんですよね。今の「こうすれば人は喜ぶ・注目する」みたいなフォーマットに則っていないものを摂取する意義というか。
もちろん映画だって配信で観る以上レコメンドされたものから選ぶこともあるし、それによって「コメディばっか観てんな」と言われれば反論しにくい面はありますが、一方で「コメディばっかり観ててよくない」と思って真面目なものであったり長い映画であったり、手に取りづらいものをあえて選ぶようなこともしていて、そのことに特に理由付けはしていなかったものの、結果的にそれにも実は意味があったんじゃないかな…などと云々考えておりますが自分語りも甚だしいのでこの辺にしておきましょう。
要は「延々とYouTubeトップに表示される動画ばっかり観る」「XのTLばっかり観る」だけだとかなり狭まりますよ、というお話です。
僕なんかは最近ラッコばっかり観ているのでYouTubeもXもラッコで埋め尽くされてますからね。
これが世界の全てだと思ってしまうと人間よりラッコのほうが多い世界が正しいと思ってもおかしくありません。
ただそういう世界になってほしいとは思うけど。人間よりラッコのほうがかわいいし。
このシーンがイイ!
ラス前ぐらいにケイシー・アフレック似の人が言っていた言葉がすごくグッと来た…んですが何を言っていたのかは忘れました。(ダメすぎる)
いやでもほんと、全編通してきっちり観て考えるべき映画でしたよ…。
ココが○
今の時代に生きる人間として(SNSに限らずYouTube等含めれば)無縁な人はほぼいないと思うので、「自分が自分でいたい」のであればまず観るべき一本だと思います。
これほどまで広範な人が「観るべき」映画もなかなかないですよ。
ココが×
この映画の“警告”自体、やや煽り気味な点はあるのでこの映画にも偏りが感じられる部分はあります。
ただそれぐらい危機感を煽らないと変わらないだろうというのもわかるだけに、一概に良い悪いとも言いづらいところがまた難しいんですが。
MVA
ドキュメンタリー部分の人たちは素人なのでまあ該当者無しでいいかなと思いますが、今作はドラマパートがあるのでそこから一人、こちらの方。
スカイラー・ギソンド(ベン役)
ドラマパートの主人公の少年。
無表情でコントロールされてるシーンがすごく良い。
この子どっかで観たよな〜と思って調べたんですが、「ブックスマート」のジャレッドでした。
ああ! ジャレッドもめっちゃ好きだったそう言えば。

