映画レビュー1459 『今すぐ購入 購買意欲はこうして操られる』
なーんも観るもんねえな…とポチポチ探していたところ、日本のランキングで前日9位にこの映画があり「ドキュメンタリーが上位なんて珍しいじゃねえか…ククク」と観ることにしました。
今すぐ購入 購買意欲はこうして操られる
ニック・ステイシー
ニック・ステイシー
デビッド・シュワイツァー
2024年11月20日 各国
84分
イギリス
Netflix(Fire TV Stick・TV)

現代人必須科目。
- 大企業がどうやって消費者の購買意欲を高めているのか、その一端をご紹介
- 今の大量生産・大量消費の結果、どのような問題が起きているのかを語る
- マーケティングの話でありつつどちらかと言うと地球環境への視座が強め
- 映像や問題の可視化も上手く、演出的にも観やすい高レベルドキュメンタリー
あらすじ
かねてより「ネトフリオリジナルのドキュメンタリーは質が高い」と思っていましたがこれもご多分に漏れずレベルが高い。めっちゃ考えさせられましたね。
例えばどのようにして「すぐに買いやすい」UIを作っているのか。
例えばなぜ「壊れやすい」ものになったのか。なぜ修理できない仕様が増えたのか。
現在の製品の問題点や売る側の倫理を「レクチャーする」テイでそのテクニックを明かしていきます。
思い当たるフシがたくさん
タイトル的には「買え買え今すぐ買え」と考える暇もなく購入に至らせる大企業のテクニックが主体っぽいイメージですが、その辺もしっかり描きつつ実際はその先にある問題、「買い替えメインになったおかげで廃棄物が地球規模の問題を引き起こしている」というような面を訴える内容のドキュメンタリーになっています。
最初に出てくるのはAmazonでUIを担当していた元役員の人で、いかに「買いやすいUI」が売上に貢献するかといったお話をしてくれます。
その他にもある時を境に「壊れない電球を壊れやすくして買い替えを促す」、これまんまソ●ータイマーじゃんみたいな話から、修理できない仕様を進めることでこれまた買い替えを促していく企業の姿勢だったりリサイクルの実態だったりが紹介され、結局現代は「とにかく買い替える」ことで廃棄が増え、その問題から目を逸らしてきた結果こうなっていますよ、というお話を象徴的なビジュアルとともに理解させてくれる内容になっています。
それぞれいちいち思い当たる部分があってすごく面白くかつ考えさせられる映画だったんですが、例えば自分の場合は数年…4年前ぐらいでしたかね、自宅のiMacの調子が悪いのでAppleのパートナーではないPC修理屋に持ち込んだことがあるんですが、そこで「iMacのディスプレイは両面テープで固定されてるから云々」みたいな話をされて驚いたことがあります。えっ、これ両面テープだったのか、って。
修理自体はできたんですが、ただそのせいで個人では修理しづらかったり改造扱いになったり、みたいな問題があるよと。
この映画でも実際に両面テープを多用することで(ネジを使うものよりも)修理しづらくしているみたいな話が出てくるのでまんまA●pleじゃんと思った(伏せ字の意味)んですが、実際一般的に認知されていないところでもそういう事例がいっぱいあるんでしょう。
最近バッテリー交換しづらいのは消費者の「修理できる権利」を阻害していると海外で問題になっている記事を読んだりしましたが、これもまたそのまま当事者の人たちが出てきて語っていたりしてより理解が深まったりもして。
スマホなんてその最たる例ですが、昔のように「修理して長く使う」ものはどんどん淘汰されて行き、代わりに「新しい機種を買って古いものは捨てる」生活が(いつの間にか)当たり前になっていた、というのは言われて初めて気付いてハッとしたような面がありました。
これも自分の例なんですが、去年光回線とプロバイダを変えたタイミングですごく良いルーターを買ったんですよ。NE●の。A●ermシリーズの一番いいやつで4万したんですが。
そしたら今年の夏に(ちょうど一年を過ぎた頃に)落雷一発でお亡くなりになってしまい、仕方なく修理費用について問い合わせたら「4万5000円です」って言われて。バカじゃないの!?
よく「大して金額が変わらないから」新しく買った方がいい、とは言いますが、マジで新しく買った方が安いパターンは初めて喰らいましたよ。何考えてんだよNEC。あっ、言っちゃった。
♪4万円〜があ〜れば〜 何でも〜買えた〜
とファイナル焼酎(の2番)を口ずさみながらもうN●Cのルーターなんて二度と買わねえよと心に誓ったわけですが、もう海外メーカーのみならず国内メーカーも買い替え中心に回ってるんだな…と思い知らされました。
この前買ったオムロンの低周波治療器はバッテリー式で充電して使うやつなんですが、説明書見たら「電池交換はできません」って書いてあるんですよ。バッテリーが死んだらそこで試合終了です。
この映画を観たあとだったんでこれもすごくゲンナリしましたね。だったら前みたいに電池式にしてくれた方がよっぽどいいのに…と。
電池は電池で地球に優しくない面もあるとは思いますが、そこは充電式の電池を使えば多少はマシなわけで…その選択肢も奪っているメーカーはどうなの、と。
まあそんな感じで身近で“答え合わせ”がいろいろできてしまうのが面白いやら怖いやらで、これは非常に刺さるドキュメンタリーでした。
猛省
証言者として登場する人たちは、Amazonの他にもアディダスの元役員だったりユニリーバの元CEOだったりOculus立ち上げメンバーだったり、今のトップ企業の中心にいた人たちが多いのでそこもすごく考えちゃいましたね。
問題に気付いて改善しようとすると企業側から排除されるか、変えられないからドロップアウトするしかないのも想像通りではありますがより深刻さを物語っています。
このまま行くともしかすると意外と(?)早めに地球終了のお知らせが来るのでは…と結構不安になる話で。地球規模の問題はこれだけじゃないっていうのもありますからね…。
これは良くない、本当に考えて購買行動しなければ…と猛省したんですが、その後のAmazonのブラックフライデーセールで過去一買い物してしまい、己の意志の弱さにより凹みました。オムロンの低周波治療器もその時に買いました。
これだから人間はダメなんだ、と自分の弱さよりも種の弱さに責任転嫁して生きています。今。生きていますナウ。
ちなみに某Xで言及している人もいたんですが、ネトフリ会員ではない(ログインしていない)状態でこの映画のページに行くとタイトルの下に「今すぐ加入」と煽り文が入っているのも芸術点が高いです。
結局今の経済はほぼこの手の話で埋め尽くされている、ってことなんでしょうね…。
修理できる製品、長持ちする製品、電池交換できる製品を作っているメーカーを大事にしたい、そう思ったブラックフライデー後のおれさ。またな。
このシーンがイイ!
一番印象的だったのはタイで廃棄物処理している現場のシーンでした。しわ寄せが行くのはいつも発展途上国なんですよね…。
ココが○
今の時代に生きていて関係ない人はいない話なので、もう生きてるなら観ろよってぐらい鑑賞必須の映画だと思います。
おまけに「マーケティングの教材」的な作りなので大真面目に訴えていないのも皮肉かつ観やすい雰囲気に貢献しているのが巧み。映像も良くできています。
ココが×
特に無いかなぁ。影響されすぎるのも良くないと思いますが、まったく気にしないのもさすがに問題じゃないのと思うような内容なのできっちり観て考えてほしいですね。
とブラックフライデーで買いすぎたバカが申しております。
MVA
例によってドキュメンタリーなので該当なしで。