映画レビュー1406 『グリッドマン ユニバース』

えー今回はですね、まったく知らなかったアニメ映画です。

なぜ観ようと思ったのかと言うとちょっと長い話なるんですが、簡単にまとめると僕はFF14の「漆黒のヴィランズ」と「暁月のフィナーレ」の拡張2本がFFシリーズでもトップクラスに良く出来たシナリオだと思っていまして、そのシナリオを担当した石川夏子さんと対談していた奈須きのこさん(Fateシリーズのシナリオライターで有名)が激推ししていたので観てみようかな、と思ったよと。そんな感じです。

ちなみにFateシリーズを作っている会社はどうやら僕がいつも通っている都内の美容院の目の前に自社ビルを建てたらしいんですが、その辺の情報もかなり調べないと出てこないぐらい結構秘密主義っぽい会社でそこも気になるところです。余談です。

グリッドマン ユニバース

Gridman Universe
監督

雨宮哲

脚本

長谷川圭一

原作

『グリッドマン』

声の出演

緑川光
広瀬裕也
斉藤壮馬
宮本侑芽
榎木淳弥
若山詩音
梅原裕一郎
安済知佳
濱野大輝
高橋良輔
小西克幸
悠木碧
松風雅也
新谷真弓
三森すずこ
鬼頭明里
鈴村健一
高橋花林
内田真礼
上田麗奈

音楽

鷺巣詩郎

主題歌

『uni-verse』
オーイシマサヨシ

公開

2023年3月24日 日本

上映時間

118分

製作国

日本

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

グリッドマン ユニバース

王道の良さ+原作愛。

8.0
またも現れた怪獣を撃破するも街には異常が発生し…
  • 「SSSS.GRIDMAN」と「SSSS.DYNAZENON」のクロスオーバー作品
  • いわゆるマルチバース的な形で2つの世界が合流する
  • 学園青春もの×王道ヒーローの良さ×元作ファンへのサービス
  • 原作を知っていた方がより楽しめるのは間違いなさそう

あらすじ

「普通に楽しめた」感じで面白かったんですが、熱っぽく語られていたインタビューを読んでから観ただけに少々ハードルが上がっていた感も否めず、消化するにはもう少し予備知識があってからの方が良かったかなと若干もったいなさもありました。

ついに六花(宮本侑芽)に告白すると親友の内海(斉藤壮馬)に宣言する裕太(緑川光)ですが、内海曰く「完全にタイミングが遅い」とのことで意気消沈していた最中に「六花が大学生と付き合ってるらしい」との噂が広まり気が気でない裕太。

そんな中、街では半年ぶりに怪獣が出現。そこで新世紀中学生の面々と再会した裕太は以前戦ったときの記憶は消滅していたものの、今回も自分が戦わないとと急いで六花ママ(新谷真弓)が経営するリサイクルショップへ行き、古いPCに入ってグリッドマンと合体、恐竜へ戦いを挑みます。

しかし前回の記憶も失っていたために苦戦を強いられていた裕太&グリッドマンですが、そこへレックスと名乗る新世紀中学生の新人が助太刀したことでなんとか撃破。戦いの後に怪獣が出現した理由は多次元宇宙の収束が原因ではないか…との説を新世紀中学生から聞かされた裕太たちの元に、その説を裏付けるかのように別世界から「同じ街だと思って」迷い込んでしまった4人がやってきまして…あとはご覧ください。

元を観てなくてもわかるものの…

上記あらすじは「何ご存知感出してんだよ」と思うかもしれませんがまんまそんな感じで、実際僕も「うわ話の途中感すごい」と困惑しました。なにせスタートで「告白しようと思う」「遅い」から始まりますからね。そもそも六花って誰!?「また怪獣出たの!?」って言われたけど初見ですが、みたいな。

ということですでに「グリッドマン」「ダイナゼノン」それぞれ(多分)12話が前段階のお話としてあり、さらにその前には全39話の実写版のグリッドマンもあったそうで、それらを踏まえての今作になるようです。(実写版については小ネタ的な盛り込み程度で基本はアニメが元の様子)

僕は最初に書いた通りそれらの前段階はまったく(タイトルすら)知らず、一切触れずに観たのでいろいろわからない部分はありましたが、基本的にはその辺りを知らなくても内容を理解するのには困りません。「ああ、きっとこういう関係なのね」とか「別の方の主人公なのね」とかなんとなくわかります。きっとわかるようにも作っているんでしょう。

ですがやっぱり…「元を観てたら激アツだろうなー」と思う展開があちこちにあり、ある意味では非常にもったいない観方をしてしまったなとも思います。ひつまぶしのお茶漬けだけ食べてるじゃん、みたいな。(かと言ってじゃあ事前に全部予習するのかと言われたら間違いなくそこまでしては観ないのでこれ以外に選択肢が無いし、もっと言えばひつまぶしも食べたことがない)

そもそも今どきのサブカル摂取者としては珍しいぐらいアニメを通ってきていないタイプの人間なので、予習もそうですがこの本編自体、件のインタビューを目にしていなかったら間違いなく観なかった映画なだけに、超出不精の陰キャ野郎が急にクラブで踊ろうとしたような場違い感は否めず、それでも結構面白かったのでこれはなかなか良い映画じゃないかなと思った次第です。

後半はかなりロボバトル的な要素を押し出してくるのでこの辺が好きな人にはかなりたまらないものがあると思いますが、これまた悲しいことに僕はロボ的なもの(ガンダムとか)もまったく通らずに生きてきた坊やなので、後半の展開自体に熱さを感じつつも実は中盤までの「青春学園もの」っぽい話の部分の方がすごく好きでした。

ド頭の「告白しようと思う」スタートからもわかる通りかなり甘酸っぺえ内容も含みつつの学園もの(というか学園ものは甘酸っぱくないと始まらない)なんですが、主人公である裕太の親友・内海がやたらいい奴なのが、なんというか自分が若い頃によく作られていたこの手の話とはちょっと違う時代を感じてそこがまた面白かったんですよね。(多分昔だったら内海はもっと裕太と六花を冷やかしたり茶化したりするキャラだった気がする)

内海は見た目的にもうちょっとクールなのかなと思いきや重度のオタクでとにかくいい奴だし、その他周りの面々も嫌なやつがまったくいなくて優しい世界なのがすごく今っぽいなと。それが悪いわけではなくむしろ良いなぁとグッと来てしまいました。

もちろん本筋がそこ(学園フェーズ)ではないせいもあるんでしょうが、学校内で対立したりの話もなく、物語上のフックとなる学園祭を目掛けてこっちに“来てしまった”ダイナゼノンメンバーも一緒になって青春する姿がめちゃくちゃたまらなかったんですよね。うわーいいなーこんな学生時代を過ごしたい人生だった、みたいな。(目にするのは過ごしたかった人生ばかり)

それと今っぽいという部分で言えば、とにかくセリフが今っぽくてリアルなのがすごく印象的でした。

よく邦画を観たときに書いてますが、物語の良し悪しは置いといて大体セリフが嘘くさいというか、「こいつ小説みたいな喋り方しやがるな」ってケースがものすごく多くてそこがいつも引っかかるんですよね。そんな喋り方するか? わざわざそんなしっかり言葉にするか? って人ばっかり出てきて。「書く」のと「話す」のは違うんだよ! といつも気になっちゃうから覚えてるしそのせいでまた次も気にしちゃう悪循環。

これはきっと母国語だから細かいニュアンスの部分で引っかかるんだな、と半ば諦めていたんですが、今作は過去に観たどの映画よりも「日常会話の言葉遣いっぽい」セリフで構成されていて、そこがものすごくグッと来たと言うか…なんなら感動しました。ちゃんとそこを気にして作ってる人もいるんだ、って。(もっとも若い子たちのセリフだから自分と近く無い分許容範囲が広かった可能性もあります)

多分ここでグッと来る人って相当レアだと思うんですが、おそらく監督なり脚本家なりが僕と同じように普段から“引っかかって”いたのかなぁと勝手に親近感沸いてますけども。

実際今の高校生がこういう言葉遣いで話しているのかはわかりませんが、少なくとも日常に自分が見聞きしている言葉遣いに極めて近い、創作とは思えないぐらいに自然なセリフの使い方がものすごくセンスあるなとびっくりして、それでよりこの世界の住人たちが好きになったような側面は確実にありました。

きっとそういう細かい丁寧さ、作品に対する真摯な姿勢が後半の激アツ展開をより盛り上げるんだと思うんですよ。細かい部分もおろそかにしないぞ、大事に作るぞ、という姿勢が。

僕はきっと大目に見てもこの映画の半分ぐらいしか良さを理解できなかったような気がするんですが、それでもそこに込められた想いみたいなものは感じ取れるぐらいに「作品に大事に向き合って」いるのが伝わってきたし、そりゃあそんな映画は全部理解出来なかったとしても良いものに決まってるだろと鼻息荒く言いたくなるわけです。

好きで観た人が羨ましい

我ながら結構褒めてる割に点数低くない? って気もするんですが、ただやっぱり個人的に子どもの頃からアニメ&特撮&ロボと全部通ってこなかっただけに要素的に響く部分が少なかったのは否めず、逆に言えばそれでも「これは良いものだ」と感じられるぐらい良く出来ていたのでむしろそこがすごいと思って頂ければ。

っていうか何が好きだったんだよ子どもの頃って話ですよ。記憶にあるのはゲーム(小学校でファミコン)、野球ぐらいなんですが…。

僕と違ってその3つが好きな人は通常放送のアニメの方もしっかり楽しめるだろうし、その上でこの映画を観れば相当にガツンと来るんじゃないかなと思うんですよ。それこそ年ベス級でもおかしくないぐらい。

後半の展開は本当に元のシリーズを観ていれば相当な激アツ展開だったのは容易に想像できるし、それを享受できる(た)人が羨ましくもありますが、ただ僕のように何も知らず親和性も低いくせに観ても「いいなぁ」と思える映画なので、アニメ映画観ようかなって時には良いチョイスではないかなと。もっとも「アニメ映画観ようかな」なんて思う人はそもそもこの映画のこと知ってそうですけどね…。

このシーンがイイ!

すごいどうでもいいシーンなんですが、JUNKSHOP絢でみんなが集まっているときにボラー(新世紀中学生のツインテ)がボケーっと足をパタパタしてて内海の足に当たってるんだけど内海は特に気にすることもなく受け入れて足がパカパカしてるシーンがめっちゃ好きでした。仲良いな、って感じで。

ココが○

やっぱりセリフの自然さですね。そこが一番「他と違う!」って感じた点。

それと後半の展開は言うまでもなく良かったです。

ココが×

やっぱり“100%楽しむ”にはちょっと準備段階の時間が長いのはネック。MCU(の後の方)と同じような問題。

あといろいろ合体するんですがよくわからなかったのが残念。あそこはもう少し丁寧に見せても良いような気がしましたね。

MVA

声優さんは相変わらずみなさんお見事でまったく不満がなく、それ故に選ぶのが難しいんですが…この人にします。

斉藤壮馬(内海将役)

主人公・裕太の親友。メガネ。

上にも書きましたが、ツッコミ役になりがちなポジションのようですごく優しく最大の理解者っぽさがあり、その上裕太と一緒に映像作品(アニメ?)観てたら号泣しているという序盤の展開ですでにグッと来ました。

なんかこのキャラクター像が一番今っぽいなぁと思ったんですよね。主人公と相棒がボケとツッコミにならない関係性というのが。そこがすごく良かったし、声優さんは言うまでもなくきちんと上手でした。

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