映画レビュー1405 『ファイナル・カウントダウン』
最近はもっぱらアマプラで配信終了が近い映画を選ぶ生活なわけですが、今回もそのアレです。初めて聞いたタイトルでしたが…。
ファイナル・カウントダウン
デイヴィッド・アンブローズ
ピーター・パウエル
ゲイリー・デーヴィス
トーマス・ハンター
カーク・ダグラス
マーティン・シーン
キャサリン・ロス
ジェームズ・ファレンティノ
チャールズ・ダーニング
ロン・オニール
ロイド・カウフマン
スーン=テック・オー
ジョン・スコット
1980年8月1日 アメリカ
104分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
過去を変えるのがテーマではないのが◎。
- 演習のため出港した空母が嵐を抜けるとそこは真珠湾攻撃直前の太平洋だった
- 空母のメンバーは日本軍に襲撃された上院議員を救出するが…
- 歴史改変もの…と思いきや純粋なSF
- 犬映画としても良作
あらすじ
ちょっとセンシティブな内容っぽかったのであまり期待せずに観たんですがこれが存外面白かったのでラッキー、みたいな。
1980年(つまり公開時現在)、空母ミニッツには元々の乗員たちに加え、国防総省の仕事を請け負っている大手防衛関連企業勤務の民間人オブザーバー、ウォーレン(マーティン・シーン)も乗り合わせ演習のため出港。
途中謎の嵐に出くわし、逃げ切れずにそのまま嵐の中を通過すると太平洋艦隊司令部との通信も取れなくなってしまいます。その後航海地域近郊である真珠湾まで偵察機を飛ばして撮影したり、放送(ラジオみたいなもの?)をチェックしたりしたところどう考えてもあの第二次世界大戦の真珠湾攻撃直前に“タイムスリップ”したとしか考えられない状況に。
そんな中、偵察に向かった飛行機が周辺海域で日本軍のゼロ戦に攻撃される民間ヨットを発見。生き残った2人と犬、そして日本軍のパイロットを回収して戻りますが…あとはご覧くださいませませ。
プロセス重視のタイムスリップもの
1980年公開ということで、なにげにあのBTTFよりも前に作られたタイムスリップSFになりますね。タイトルはまったく知らなかった(むしろ曲名としてしか認識していなかった)映画なんですが、まさかこんな良作だったとは…と意外な掘り出し物にホクホクです。
舞台、そしてタイムスリップした先があろうことかあの「真珠湾攻撃の直前」というシチュエーションだけに、非常に政治的でセンシティブな内容の映画なのではないか…とどうしても身構えざるを得ないところですが、そのいわゆる「アメリカが真珠湾攻撃を描く」=日本悪者映画みたいな懸念とはちょっと違った内容の映画になっていて良い意味で裏切られました。
やっぱりどうしても「真珠湾攻撃の“直前”に現在(1980年当時)の空母で乗り込む」形になる以上、自ずと戦況を逆転する戦力があると考えるのは誰しも当然なので、いわゆる歴史改変もののような、「あの頃出来なかったことをやり返す」みたいな内容に行きがちなんじゃないかなと思っていたんですが、まったくそういう話ではないです。むしろそう予想させるように仕向けてから裏切って、SF的旨味を味合わせるためにミスリードさせるセッティングとして真珠湾攻撃のタイミングを利用しているかのような、こっちの浅はかな考えはすべてお見通しなんですよ的な内容でそこが非常に良かったですね。素直にやられたーって感じで。
これが逆に「原爆投下直前にタイムスリップする邦画」だったらきっとアメリカ人もちょっと身構えると思うんですが、それでいてこういう内容に仕上げる…というのはなかなか難しいと思うし、あえて「やり直さない」勇気というのはなかなかすごいなと逆視点でも思っちゃいましたね。
またタイムスリップもののお約束とも言えるタイムパラドックス的観点から「やればやれるだろうがやっていいのか」というようなテーマも盛り込まれ、単純に「やり返したい」という発想からは距離を置いた娯楽SFになっています。
この辺りも「真珠湾攻撃を描く映画」としてよりも断然「タイムスリップSF」の面白さに寄せていて、なんというか作りが大人だな、こっちの予想は子どもっぽくて単純すぎたなと反省させられるレベル。さすが1980年代のハリウッド映画は良く出来てます。
とは言え、最後まで観ると話としては割とどうでもいい内容というか、あんまり中身がないのも事実なんですよね。なので中身そのものに集中しすぎると「なんだったんだよ」となりかねないお話ではあると思います。
ただ、そこに道中様々な葛藤や悩み、そして(軍のお話らしく)艦長による決断の良し悪しを考えさせること自体に面白さがある映画なので、言ってみれば「結果よりもプロセスを楽しむ」物語なんじゃないかなと。
オチも(ある程度予想はつくものの)この手の映画らしい良いものではあるんですが、それ以上に「結果云々関係なくそこに至るまでのドラマを楽しむ」映画として非常に楽しめました。なかなかこういう映画って少ない気がしますね。タイムスリップするんだけど歴史が変わるわけではないという。
BTTFの1なんてまさに「帰ってきたら全部変わってた」話なので、その逆を行く大きな変化の無いタイムスリップものという…一周回ってこっちの方が新鮮だなと妙に感動しました。
余談
余談ですがエンディングテーマが「なんか聞いたことある…聖母たちのララバイじゃないか!?」と思ったらどうやら聖母たちのララバイはこの曲を盗用した、というエピソードまでありました。この頃らしい逸話ではある…。さあ 眠りなさい…。
余談ついでにもう一つ書くと、主人公の一人であるマーティン・シーンが回収した犬に懐かれるんですが、その犬の名前がチャーリーっていうのが笑っちゃいましたね。息子かよ。
ちなみに念のため調べましたが、チャーリー・シーンは1965年生まれなのでこの映画よりも前に生まれてます。(だから脚本家のお遊びなのかもしれない)
ちょっと身構えて観たが故に良い意味で裏切られて逆に印象に残ったという、舞台設定からすでに作り手の手のひらの上で踊らされちゃったね、ってな感じの映画でしたとさ。
このシーンがイイ!
なんだかんだエンディングでしょうか。気付きはしましたが、それでも“らしい”良いエンディング。
ココが○
やっぱり「歴史改変もの」に行かず、純粋なSFで勝負した点。転送シーンはチープでしたがそれ以外は映像的にも今観てもまったく問題がないレベルなのも良かった。
ココが×
あんまりこれと言って無いんですが、強いて言えば(当時の状況的にやむを得ないのは理解しつつ)日本兵役の人が日本人っぽくない点。しょうがないんだけど。やたら力の入った日本語にどうしても違和感を感じてしまうのは事実です。
MVA
なかなかいい面々が出ていましたが、この人かな。
カーク・ダグラス(マシュー・イーランド海軍大佐)
空母ミニッツの艦長。
ちょっとダニエル・クレイグっぽい感じですげー渋かったですね。多分ダニエル・クレイグがもっと歳を取ったらこんな感じなりそうだなと。
カーク・ダグラスにマーティン・シーン、どちらも息子がご活躍のお二人ですが、やっぱり父親は父親で素晴らしいぞと。