映画レビュー1448 『ジョジョ・ラビット』

今回もアマプラ終了系です。
公開当時、かなり好評だったので観たいと思っていましたが、一方でタイカ・ワイティティ監督の“ノリ”があんまり好きではないので期待半分不安半分、といったところでしたが…。

ジョジョ・ラビット

Jojo Rabbit
監督
脚本

タイカ・ワイティティ

原作

『Caging Skies』
クリスティン・ルーネンズ

出演

ローマン・グリフィン・デイヴィス
トーマシン・マッケンジー
タイカ・ワイティティ
レベル・ウィルソン
スティーブン・マーチャント
アルフィー・アレン
アーチー・イェーツ
サム・ロックウェル
スカーレット・ヨハンソン

音楽
公開

2019年10月18日 アメリカ

上映時間

108分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

ジョジョ・ラビット

少年成長エピソード、調味料はナチス。

8.0
ヒトラーがイマジナリーフレンドの少年、ユダヤ人少女と出会う
  • いじめられっ子で強烈なナチス信奉者の少年とレジスタンス母と母が匿うユダヤ人少女
  • 少年はイマジナリーフレンドのヒトラーと“仲良し”なので少女にも厳しく当たろうとするが…
  • 周囲の人々の使い方が上手な少年の成長譚
  • トーマシン・マッケンジーの良さ

あらすじ

そんなわけで少々不安でしたが、思っていたより“悪ノリ”しすぎずに良かったです。

10歳のドイツ人少年、ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)がいよいよナチスの訓練に加わる日、気弱になりかけたところを“イマジナリーフレンド”のヒトラー(タイカ・ワイティティ)に励まされ、気合十分で訓練へ。
しかし弱気なところを教官たちに見抜かれた彼は、「このウサギを殺せ」と命じられるも実行できずに逃走。以来仲間の訓練生たちからもバカにされるようになってしまいます。
その後またヒトラーに励まされ、勇気を振り絞って手榴弾を投げる→手元で爆発、で大怪我を負い、訓練から脱落。
その事故で監督不行届として現場から書類仕事に降格させられた、訓練教官のトップだった通称“キャプテンK”ことクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)の事務所で働くようになったジョジョは、ある日自宅で母に匿われていたユダヤ人少女(トーマシン・マッケンジー)を発見、少しずつコミュニケーションを取っていきますが…あとはご覧ください。

上手さと狡さ

「ヒトラーがイマジナリーフレンド」の時点で強烈な設定ですが、それぐらい強固なナチス信者である主人公の少年が、“目の敵”にしているユダヤ人の少女と出会い、それによって少しずつ変わっていくのと同時に戦争も終わりが近付いてきて…というお話。
スカーレット・ヨハンソン演じる母親は隠れレジスタンスとして活動していて息子のナチス信者っぷりには心を痛めているという、その辺の組み合わせもなかなか面白いものがありました。
オープニングでいきなり「主人公を全面バックアップするヒトラー」の絵面が出てくるので、この時点でやり過ぎじゃないのか…? と不安になったんですが、通して観るとなかなかこの辺りもお上手で、現代らしいナチスを利用した成長譚になっていると思います。
主要キャストとして登場するナチスの面々(サム・ロックウェル、その副官のアルフィー・アレン、レベル・ウィルソン)もコミカルでどこか憎めないキャラクターとして描かれていて、良くある「ナチスは絶対悪」「とりあえずナチスを悪役にしておけば大丈夫でしょ」みたいな安易さのない作りは、一見ちょっとセンシティブで危険でもあるんですが、絶妙に使い方が上手なので今までの「ナチス映画」とはやはり一線を画したものがあるように思いました。
基本はコメディなので全体的に明るいしちょっとゆるい部分が多いのもこの手の映画としては珍しく、ある意味で「観やすいナチス映画」になっていますが、一方で当然“負の側面”も描かざるを得ない舞台であることも間違いなく、所々でその負の側面が顔を出してきてハッとさせられる辺りも非常にお上手でした。
ただ、通しで観ると結局「少年の(通過儀礼的な)成長譚」がメインでナチスはあくまで舞台装置でしかないような面も多分にあり、その意味では結構扱いの難しいナチス(とヒトラー)をギリギリのラインで利用した青春映画のような側面が強いのかなと思います。
なのでおそらく本国ドイツでは結構お怒りの方もいるのでは…と推測されますがどうなんでしょうね。ナチス(≒ヒトラー)を信奉しているような特殊な方々はもちろんお怒りでしょうが、普通の人でも「ネタとして消費すること自体間違ってる」みたいな意見も全然あり得ると思うし、それ故に結構アクロバティックなテクニックを駆使した物語のように見えるので、そこが僕自身のタイカ作品の印象と重なって「ちょっとだけ鼻につく」ような側面もあったかな、と。
基本的にはすごく良い映画なんですけどね。手放しでは褒められないような部分があるというか。
主人公が「少年である」のもそれを助長している気がするんですよ。ほんの少し、少年だから許される側面を利用しているような雰囲気が感じられるというか。
なので基本良い映画だなと楽しみつつ、「やり方がズルいよな〜」と思う部分もあるだけに…素直に評価しにくいなとは思いました。
とは言え今までにない組み合わせで上手く見せる巧みさも間違いなくあるので、そこを責めちゃうと本当に似たりよったりな映画ばっかりになっちゃうし…難しいところです。
まあなんだかんだ言ってますが、わかりやすく言えば「面白いけど心底好きにはなれない」感じの映画かな、と。

好き嫌いはあれど…

ちょっと気になる部分の話が多めになってしまいましたが、総じて良い映画であることは間違いないし、多分つらつら言っていることも僕の「タイカ映画どうなの」的な色眼鏡のせいだと思うので、おそらくほとんどの人はあまり気にならないと思います。良い映画だな、と感じる部分だけお持ち帰り頂けるのではないかと。
これは結局好き嫌い・向き不向きの話なので、これから観る人はあんまり気にしないでいいでしょう。
なんだかんだ言いつつ僕も観て良かったと思います。

このシーンがイイ!

ベタですが、サム・ロックウェルが登場する最後のシーンですね。サム・ロックウェル、良すぎる。

ココが○

この使い方はどうなの、という気持ちもありつつ上手いのは確か。パーツパーツで観るとどこかで観たようなエピソードばかり、つまり「ナチスあるある」で構成されているんですが全体を通して観るとオリジナルという…。そこはやっぱり巧みです。

ココが×

僕個人が気になった点は上に書いた通りで、上手いもののやり方がズルいように感じたのでそこをどう捉えるか、でしょう。

MVA

サム・ロックウェルが良すぎる…んですが初めて見たこともあってこの人にします。

トーマシン・マッケンジー(エルサ・コール役)

ジョジョの母のスカヨハが匿ってるユダヤ人少女。いわゆるヒロインですね。
ひじょーに飾らない綺麗さのある女優さんというか。年代的にも時代的にも物語的にもぴったりで、素晴らしいキャスティングでした。まーかわいい。
かわいいけど強い感じもお見事。とても良かったです。

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