映画レビュー1233 『サンダーロード』
今回は誘われウォッチパーティで。まったく知らない映画でした。
サンダーロード
ジム・カミングス
ジム・カミングス
ジム・カミングス
ケンダル・ファー
ニカン・ロビンソン
ジョセリン・デボアー
チェルシー・エドマンドソン
メイコン・ブレア
ビル・ワイズ
ジム・カミングス
2018年9月12日 フランス
92分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)
しんどすぎて笑えない、でもそこがいい。
- 母の葬儀で諸々理由があってやった踊りが問題に
- 夫婦間もうまく行かず愛する娘とも微妙な関係
- リアルにどんどん転がり落ちていく「うまく行かなさ」が切ない
- コメディながら切なく良いドラマ
あらすじ
一応ジャンルとしてはコメディで、ところどころシュールで笑っちゃうような部分もあるんですが全体的には結構切ないドラマでした。そこも含めて笑い飛ばしてね、って感じなんでしょうがこっちは真面目なので割と同化してしまい、それ故に結構刺さった面もあった映画です。
最愛の母が亡くなり、葬式で挨拶をする警官のジム(ジム・カミングス)。
母はバレエの先生だったため、彼女が好きだったブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」を流しながら“追悼のダンス”で送り出そうとしますがラジカセは故障。やむなく無音のまま踊り、「なんだこれ」状態ながら悲しみに包まれる教会です。
彼は既婚者ですが妻は浮気していて別居中、愛する娘とは週3でしか会えず、またやや一方向な愛情に見える微妙な距離感も感じます。
やがて夫婦は離婚調停に入りますが、その協議で件の「無音ダンス」が奇行の証拠として取り上げられてしまい、娘も遠くなってしまうジム。
その後もあらゆることがうまく行かずにどん底に落ちていくジムですが、果たして彼はどうなるんでしょうか。
妙に感情移入してしまう
最初に書いた通り、コメディとは言えはっきりとした笑いどころもなく、シュールに展開しつつのドラマなのでこと笑いに期待して観るのはオススメしません。
言ってみれば「人生なんて所詮コメディだよね」みたいな諦観に近いコメディ感のようなものを感じました。ちなみにこういう話(悲劇と喜劇両面を持つもの)を「トラジコメディ」と言うそうです。初めて知りました。
主人公のジムはまーとにかく何もかもがうまく行かなくて、「うまく行かないときって悪いことが続くよね」と共感しつつ、それでも悪いこと続きすぎじゃね? と悲惨さを感じるぐらいにどんどん落ちていくのがなかなかしんどい。
ただそれもご多分に漏れず環境のせいばかりではなく、本人の不器用さであったりキャラクターであったりいろんな要素が複合的に絡み合ってそうなってしまうところになんとも言えないやるせなさがあります。
オープニングの行為を「奇行の証拠」として扱われてしまうところは不憫だなぁと思いますが、かと言ってそもそもそこ(離婚調停)に至るまでに彼に他の問題がなかったのかと言えばそうでもないだろうと思えるような、そこかしこに「おかしさ」が垣間見える彼のキャラクターが絶妙。警官の割に感情的になりすぎるし。
そんな「完璧ではない一般人」の姿こそがコメディなのかもしれませんが、しかし僕はベクトルこそ違えど同様に自分もダメ人間だと思っているだけに、要所要所で「これ自分だったらどう受け答えしてるかなぁ」と考えつつ妙に自分事として観てしまい、変に感情移入してしまう物語でした。
というのも、その要所の行動がことごとく違う気がしたんですよね。そりゃダメだよ、って。だから落ちていく…というのも気の毒なんですが、かと言って自分が渦中だったらマシなのかも怪しいところだし…と本当にいろいろ考えちゃったんですが、考えちゃう分良い映画だったのかなと思ったり。
チルい映画(?)
なんだかんだありつつ人生は続くよ的な映画で、これと言って教訓があるようなものでもないんですが、ただやっぱり「理解ある友人の大切さ」は強く感じましたね…。
彼にとっては相棒のネイトがまさにそんな存在で、ネイトがいてくれて(観客も)どれだけ救われたことか…。
ご覧の通り、主演のジム・カミングスが監督・脚本・音楽さらに編集まで兼務した、完全に彼の趣味のような映画ですが、妙なセンスもあって単館系っぽい雰囲気もなかなか良くて、好きな人は好きな映画じゃないかなぁと思います。
ただ「何が面白いのかさっぱりわからない」人がいてもこれまたよくわかるぐらいシュールでもあるので、なかなか人を選ぶ映画でもあるでしょう。
めちゃくちゃ笑えるわけでも泣けるわけでもない、ちょっとダウナー系映画というか…。チルいですね。わかんないけど。チルい映画ですよきっと。
違う気がするけど。
このシーンがイイ!
お姉ちゃんとの会話はなんかいろいろ見えてきて面白かったというか…みんないろいろあるよね、みたいな。
あとは娘ちゃんの先生との会話は一番笑える部分がありました。が、結構深刻でもある。
ココが○
趣味性の高い映画の割にすごくセンスがあるので、今後もジム・カミングスはなかなか注目ではないかなと。また作ってくれると良いんだけど。
ココが×
「コメディだと思って観たけど全然笑えなかった」みたいなレビューがすごく多いので、笑う方を期待すると間違いなく肩透かしを食らうと思います。
MVA
これはもう…1人5役を讃えて。
ジム・カミングス(ジム・アルノー役)
主人公の警官。
微妙に変な人っぽいのがうまいなぁと。ジャケットはイーサン・ホークそっくりですが実際は全然似てません。
今後もなかなか要注目、ということで。