映画レビュー0752 『シンプル・プラン』

今回はちょっと古い映画を観たいと思い録画からチョイスしたんですが、そんなに古くねーなと自分で突っ込んだ作品です。どうでもいい情報でした。

シンプル・プラン

A Simple Plan
監督
サム・ライミ
脚本
スコット・スミス
原作
『A Simple Plan』
スコット・スミス
出演
ブレント・ブリスコー
ゲイリー・コール
チェルシー・ロス
音楽
公開
1998年12月11日 アメリカ
上映時間
122分
製作国
アメリカ

シンプル・プラン

妊娠中の妻と慎ましやかに暮らしていたハンクは、ある日失業中の兄とその親友ルーの3人で出かけた先で墜落した自家用機を発見。中にあった440万ドルもの大金を持って帰ることにしたのだが…。

反面教師のダメ人間たち。

7.0

何を勘違いしていたのかわかりませんが、てっきりサム・ペキンパー監督の映画だと思って観ていたらサム・ライミだったよ、っていうことでね。ご紹介していきますけども。

主人公のハンクは美人の奥さんと裕福ではないものの慎ましやかに暮らしていたんですが、ある日失業中の兄・ジェイコブとその親友であからさまにDQN臭漂うこれまた失業中のルーと3人で出かけた先で墜落した自家用機を発見。中を調べるとなんと440万ドルもの大金があったぞ…ということで持って帰るだの届け出るだのすったもんだした挙句、「ほとぼりが冷めるまで待ってから山分けしよう」という結論に落ち着きます。

なんでほとぼりが冷めるまで待つのかというと、お金の素性、出処を把握してから行動したいということで…まあ確かに危ないお金なら即命の危険につながりますからね。持って帰るのであればそれも納得です。そんなわけで「待って山分けでおしまい」という“シンプルなプラン”だったはずが…というお話です。

映画冒頭でハンクが「思えば俺はすでに幸せを手に入れていたのに…」というような後悔とも取れる独白的ナレーションから始まるだけに、まあうまくいかないんですよねというようなお話なわけですが、その筋がありがちとは言え割と心情的にも理解できる内容だったので、反面教師的に覚えておきたいようなお話ではありました。

鑑賞後に検索をかけたところたまたま目にしたブログで「開始10分で結末が全部わかるクソ映画」と酷評されていたりする映画なんですが、確かに読めはするもののそこまで言うほどひどいとも思えず、僕はどちらかと言うと悪くなかったなーという感じでしたね。

もちろん引っかかるところはたくさんありました。ただその引っかかる部分も、大部分は「田舎のダメ人間たち」の所業であることを考えればそれもまた納得なのかなと言う気もして。

田舎のいかにも狭いコミュニティに暮らす人たちからすれば、大金はもちろんそれに伴う数々の事件も不慣れなものなはずで、となると保安官がボンクラでも仕方がないのかなと言う気もするし、お金を拾った3人中2人が中年ニートという惨状からも「ぬるい展開」は無理がないと思うんですよ。

逆にこれが保安官がキレッキレだったり主人公(ハンク)が天才的な犯罪頭脳を発揮、とかだともうあからさまに話が変わってきちゃうので、まあこういう話ならこういうボンクラっぷりが説得力を持つのかな、と。

この物語のポイントとしては、やっぱり「お金を目の当たりにすると人間変わるよね」という…もうこすりにこすられまくったテッカテカの理性問題だと思うんですが、その辺もベタながらやっぱり良いというか…考えさせられるんですよね。

開幕からすでにどん底の中年ニート2人は置いといて、やっぱりお金がなくてもそれなりの幸せを手にしていた主人公夫婦が一番変わっていく姿というのは、本当にベタではありますが示唆に富んでいると思います。

最初に持ち帰ることを拒否した主人公のハンクと、お金がない最初の状況でも「幸せよ?」と言っていた奥さん、この二人がお金の魔性に取り込まれていくさまを、凶悪さのようなわかりやすいものではなくあくまで凡庸なまま変化していく点がこの物語の良かった点じゃないのかなーと思うんですよね。

原作はどうもかなり豹変するらしく、その怖さが名作だったようなんですが、そういう路線とは別の「ダメ人間が金によって違うダメ人間になっていく」感じ、っていうんですかね。そこになかなか味わい深いものがあったような気がします。

あんまり書きすぎても興を削ぐので、あとは観ていただくとして。言うほど悪くない映画なんじゃないかなーと思います。

ネタバレ・プラン

当然ながら本レビューでは触れられないので書きませんでしたが、あからさまな死亡枠であるルーはほっておくとして、実は「お金を目の当たりにして変わった」意味であまりないタイプだったのが兄・ジェイコブだったのかなと思います。

ジェイコブは(お金の管理者が肉親であることもあってか)そこまでハヨよこせ感もなく、父の農場を継ぎたいという思いこそあれどそこまで金に狂わされる感じもなく、最終的には弟に殺してくれと懇願する形になるわけですが…ここに「金によって見えた自分の未来に悲観する」というなんとも悲しい感情があったんですよね。

劇中の逸話からして彼は40歳の(多分)童貞で異性との付き合い方もわからない、狭いコミュニティに暮らしているから外の世界に出ても生きていく自信がない、独り身のまま父の農場を継いだところで今と何が違うんだ、と。

大金が手に入ったら何をしようか夢が膨らむのが普通だと思うんですが、彼の場合はそうではなく…「金が入ったところで自分のどうしようもなさは変わらない」ということに気付いてしまった、と。それは能力でもあるし、環境でもあるし。

外の世界には行けないけど街の人達は自分を蔑んでるし、となると金ができたところでモテようがないし一人で死ぬまで儲かるとは思えない素人農場で暮らすのか…と思うと確かにきつい。

そういう諸々のことを考えると、最後に弟に「殺してくれ」と懇願する彼の心情はなかなか辛くてですね…。ほんのり泣いたし、わかりやすいとは言え、そこまで言うほど悪いお話じゃないんじゃないかなーと思ったわけです。

大金を手にした自分を想像できるところに立ってしまったがために、余計救いようがない現実を認識してしまう…という悲しい物語だったんだな、って。それは裏返せば「本当に大事なものはお金じゃないんだぞ」というところにもつながっているんでしょう。それはもしかしたら親友のルーの存在だったのかもしれない、でもその彼は自分が射殺してしまった…。

といろいろ考えれば考えるほどジェイコブは救いようがないし悲しい話だな、と思います。

逆にハンクの奥さんであるサラの変わりようは本当にベタだし目立つので、こっち方面に目を向けすぎると面白みのない話になるのもわかります。だからこの映画はきっと、裏主人公がジェイコブなんでしょう。

このシーンがイイ!

ジェイコブの残念な姿は常に良かったですね。割れた眼鏡をテープで補強して使い続ける悲しさも相まって。その集大成となるラスト付近での彼が一番、かなぁ。

あとは雪景色が良いですね。とても。物語にあったロケーションだと思います。

ココが○

ネタバレ項に詳しく書きましたが、この映画はおそらく(実は)主人公はジェイコブなんじゃないのかなと思うんですよね。

彼が一番能力も低そうでしんどいタイプなんですが、それ故最後まで観るといろいろ感じるものが出てくる気がして。

なのでこれから観る人は自分がジェイコブになったつもりで観ると、またちょっと違った感じで観られるのかもしれません。

ココが×

とは言え本当にジェイコブはボンクラなので、まず序盤の「唐突に飛行機の話を出す」シーンが意味不明。フリとして強引に出したような気がしてなりません。

あとは全体的に地味だし読めるしで、確かにつまらないと感じてもおかしくはないと思います。僕はたまたまちょっと引っかかる部分があったのでそれなりに楽しめましたが。

MVA

あなたに降る夢」以来また観たいと願っていたブリジット・フォンダが観られてハッピーでしたが、あれほど良い感じでもなく少々残念。

主演の兄弟がビル・パクストンとビリー・ボブ・ソーントンという渋い配役で、これまたそれぞれがしっかり見せてくれてよかったと思いますが…でもやっぱりこちらの方でしょう。

ビリー・ボブ・ソーントン(ジェイコブ・ミッチェル役)

40歳童貞ニート兄。もうスペックからしてひどすぎる。

話すこともやることなすことも全部終わってる。気弱で判断ミスしかしない。それだけにもう全体から悲しい人間としての佇まいが完成されすぎていて…あんまりこういう役のイメージがないだけにびっくりしました。とてもいい演技だったと思います。

終始苛つかせる兄ですが、終わってみれば…一番悲しい人だったなと…。

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