映画レビュー1399 『アステロイド・シティ』
アマプラで「あなたにオススメ」に出てきたんですが、アマプラで一度もウェスの映画観てないのにこれ勧めてくるのはやるやないか、と観ました。っていうかウェスの新作映画の存在自体知らなかったポンコツです。
アステロイド・シティ
ウェス・アンダーソン
ウェス・アンダーソン
ロマン・コッポラ
ジェイソン・シュワルツマン
スカーレット・ヨハンソン
トム・ハンクス
ジェフリー・ライト
ティルダ・スウィントン
ブライアン・クランストン
エドワード・ノートン
エイドリアン・ブロディ
リーヴ・シュレイバー
ホープ・デイヴィス
スティーヴン・パーク
ルパート・フレンド
マヤ・ホーク
スティーヴ・カレル
マット・ディロン
ウィレム・デフォー
マーゴット・ロビー
2023年6月23日 アメリカ
104分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
面白シーンをつないだ面白くない映画。
- とある人々が集まった、町というよりちょっとした一区画の出来事
- 色彩含めた画作りでたっぷりウェス・アンダーソンを浴びられる
- 無駄に超豪華キャストなのが逆に人を舐めた感じで良い
- 1つ1つのシーンはめちゃくちゃ面白かったりするのに話全体は全然面白くない
あらすじ
ひじょーに評価が難しい映画ですねこれは…。めちゃくちゃ尖った映画だし人を食ったような映画のような気もするし…。ミクロでは好きだけどマクロでは好きじゃない、そんな不思議な映画でした。
アメリカの砂漠地帯、おそらくネバダ州辺りにあるっぽい街、アステロイド・シティ。(確か)人口87人。
周りが砂漠であとはガソリンスタンドにモーテル、カフェレストランがあるぐらいの小さな小さな町が舞台です。
そこでは間もなく「ジュニアスターゲイザー賞」とかいう天才少年少女に与えられる科学賞みたいなものの授与式とイベントが予定されており、それに向けてその受賞キッズたちが家族総出でやってきたタイミングでとある事件が起きまして、それに対応する各人の姿をやや群像劇っぽくお送りする映画です。
またこの映画は入れ子構造のような形になっていて、メインで展開するアステロイド・シティのお話とは別に、その話を考えた脚本家や演出家の姿も描かれます。メインの話は(映画ですが)舞台という設定。
そんなアステロイド・シティに集まった面々がちょっとした交流をしつつ、突如訪れる大事件にのんびり対応する…そんなお話です。
このキャストだからまだ観られるけども…
久々のウェス・アンダーソン。前作「グランド・ブダペスト・ホテル」は満点をつけたぐらい超お気に入りの映画ですが、今回も同様に期待したものの…正直イマイチでした。っていうかグランド・ブダペスト・ホテルが良すぎたのかもしれない。
オープニングはモノクロから始まり、ブライアン・クランストンが語りエドワード・ノートンが脚本家を演じる…本編前から豪華やなと思いつつ観ていくと、カラーになった途端に「うおー! ウェスっぽい!」と一気にワクワク感に火が付きました。現実ではありえない色彩がとてつもなく素晴らしい。
遠景も(多分)イラストだし、カメラワークも正面から捉えたショットが基本でたまにドリー、あとはそのまま回転するだけといういつものウェス節全開で最高です。
登場人物もまー(無駄に)豪華で、主演でもおかしくない人たちが超どうでもいい役で出てたりする贅沢仕様。彼らがちょっとおかしいシュールなシーンをリレーしていく形でどうしたって惹きつけられます。
が!
そのつないでいった先に見えてくるメインのお話がまー面白くない。何が言いたいのかサッパリ。
フィルマークスのレビューでもそんなようなことを言っている人が多いので、同様に感じるのが普通なんでしょうきっと。メインのお話はあってないようなものというか。シチュエーションのために存在する枠のようなもので、その中で各人が交わす掛け合いが面白いだけ、みたいな。
これは結構珍しいタイプの映画だなぁと思いましたね。ある程度ウェス・アンダーソンの映画が好きだったりその表現について理解があったり、または出てくる役者陣の豪華さに気がつけるぐらいの映画好きであればそれだけで観られちゃう魅力があるのも事実なんですが、逆に言えば何もわからない「映画ライト勢」みたいな人が観たらもう本当にサッパリ魅力を感じられない映画だと思います。嫌味でもなんでもなく、正直に「何が面白いのかわからない」のが実際の感想になりそう。
シュールすぎてたまに笑っちゃったりするシーンは結構出てくるんですが、ただそれも瞬間風速的なもので全体はもう全然凪なんですよ。だから何、って感じで。
おまけにメタ的に外側(エドワード・ノートン演じる脚本家がメイン)の話を入れてきている意味もよくわからず、さすがに何かしらのメタファーが込められているんだろうとは思うんですが学のない僕にはさっぱりピンとこず、ぶっちゃけ「メインの話だけで作るには弱すぎるから文字通り“ガワ”を足したんじゃないの」と勘繰りたくなるぐらいに必要性を感じませんでした。一回だけブライアン・クランストンが“中”に入ってくるシーンもあったけど、あれもメタ的な面白さ以外に意味があるとは思えなかったし。
全体的にゆるくてぬるい話で、その雰囲気自体は好きなんですがそれと面白さはまた別だし、もうちょっと…終盤に大きな盛り上がりがあればまた違ったんでしょうが、それもなく静かに終わっていって「うーん」という。
いやその劇的さが無い感じもまた“っぽい”んだけどさ。でもなんだか「名前だけで売れる中身の無さ」みたいなのを感じてしまい、もうちょっとやれることあるんじゃないの? とモヤモヤしっぱなしでしたね。
これ、豪華キャスト一切抜きであまり知られていない俳優さんたちだけでやったら果たして観ていられたのか? と言うと正直観られた自信がないです。それぐらいキャスティングの良さでごまかしてる映画な気がする。(逆に言えばそれでも保っちゃうぐらいの実力があるからみなさんこれだけ有名な俳優になったとも言えるかもしれませんが)
「トム・ハンクス無駄に使いすぎじゃない!?」とか「スティーヴ・カレルこんなどうでもいい役なの!?」とかそういうびっくり≒おかしさでだいぶ得しているというか。
鑑賞後に調べてジェフ・ゴールドブラムが出ていたことを知り「どこに出てたの!?」と調べたらその使われ方がひどすぎて爆笑したんですが、それも含めて人を食ったようなキャストの使い方でだいぶ上げ底している気がするんですよね。
それはそれで面白いし否定はしないんですが、ただその面白さも結局は変化球なので直球しか理解できない人からすれば本当に何が面白いのかさっぱりだと思うんですよ。そこをどう評価するのかが非常に問われる映画だと思います。
キャストの豪華さで言えばお世辞抜きで過去一じゃないかと思うぐらいワクワクするメンツだったんですが、逆に言えばそのキャストで“この程度しか面白くない”のであればそれはそれで物語の力不足を感じざるを得ず、色彩含めた画作りとキャスティングでだいぶごまかしてる映画にしか感じられませんでした。もちろん僕の理解力不足もあったとは思いますが。
…とつらつら書いてきて、これ伝わりにくい話だなと思うんですが…簡単に言うと「阿部寛がコントやってる」みたいな面白さって言うんですかね。「そういう使い方されてていいの?」とか「めちゃくちゃもったいない(≒贅沢な)使い方してるな!」みたいな面白さだけで引っ張って行ってる感じがするんですよね。
なのでこれを無名の俳優さんたちに置き換えたら綺麗さっぱりその面白さが無くなってしまい、「これ何が面白いの」ってなると思うんですよ。
そういうすごく属人的な、物語そのものの力の無さを人力でごまかしているような映画に感じられて、なーんか気に入らないというか。面白いところは面白いんだけど、本当の面白さじゃないというか。肉の質は悪いんだけどタレが美味いからご飯が進むぜみたいな。そういう映画な気がするんですよね…すごく残念なんですが。
入れ子構造の必要性がわからない
僕もまあまあ映画を観てきているのでそれなりにキャスティングの価値を感じてワクワクできたんですが、これブログ開設当初に観てたら多分ケチョンケチョンにけなしてた気がしますよ。今どき言いませんけどね。ケチョンケチョンって。
そのキャスティングとウェス・アンダーソンの映画らしい画の良さがあってそれなりに楽しめはしましたが、仮にその辺がまったく響かなかったら他の酷評した映画と同じような形で文句を言っていた気がします。それぐらい物語に観るべきところが感じられない映画でした。
それとやっぱり入れ子構造の必要性がサッパリわからないのもつらい。常連のエドワード・ノートンとエイドリアン・ブロディその他メンバーを使いたくて用意した設定なんじゃないかと裏読みしたくなるぐらい2つに分ける意味が感じられませんでした。
ウェスファンは手放しに褒めていたりもするので好きな人には響くんでしょうが…僕はあんまり好きになれませんでしたね。シーンによっては面白いだけにけなすほどの映画ではないんですが、期待が大きかっただけに…がっかり。
このシーンがイイ!
一番のピークとなるアレが登場するシーンはさすがに笑っちゃいましたね。あのゆるすぎる感じは好き。
ココが○
豪華キャストの無駄遣いとその掛け合い。悔しいけどそこから来る面白さがあるのも確か。
ココが×
こう書くと本当に元も子もないと思いますが、物語の面白さ。
逆に言えばこの内容で一本作れちゃうのもある意味でウェス・アンダーソンの力量故なんだろうとは思いますが、それでもやっぱり内容が薄い気はします。
MVA
豪華キャストですが端役が多く、結局メインと言えるこちらの方かなと。
スカーレット・ヨハンソン(ミッジ・キャンベル役)
受賞を決めた少女の母で、女優。
女優(の役)らしくちょっと上から目線な雰囲気を醸し出して基本真顔なんですが、そこがシュールさにつながってたし笑いにも貢献していたんじゃないかなと。
あんまり観ない感じのスカヨハだった気もするし、なかなかこの映画にあった良い演技だったと思います。
関係ないけど少し太りましたかね? 役作りなのかな。すごいムチムチだったのでムチムチ好きには貴重なスカヨハと言えるでしょう。