映画レビュー0555 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
ご存知去年のアカデミー賞作品賞受賞作品。
日本版のポスターデザインがスーパーダセェと話題になっていましたが、最近はほとんどの映画で同じ話題が上がるので珍しく無いという悲しみ。
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
本当に舞台を観ているかのような長回し。
最近この手の「昔はすごかったけど落ちぶれて」系の映画を観る機会が多い気がしますが、この映画もその流れを汲んだ作品。
かつての人気俳優(ただしヒーローモノで一発当てただけ)が、自らの役者としての価値を再度認知させるべく、ブロードウェイで舞台に挑むお話。
物語はプレビュー公演前日のリハーサルから始まり、初日公演翌日までを描いていますが、とにかくこの映画の特徴はカットが殆ど無い点。オープニングとラストで一回ずつカットが挟まりますが、後はずーっと長回し。もちろん暗くなった時とかに切り替わったりしているんですが、見た目では全然わからず、ずーっとひたすらシーンが続いている感覚で2時間近くを過ごします。これがもうすごく新鮮で。
今までもこれに近い試みの映画はいくつかあったと思いますが、その中でも一番違和感がなく、本当に流れるようにシーンが展開していくので、まずそれを観ているだけでも結構面白いという。これはスゴイ。
基本的には登場人物の誰か一人を追う形で描かれる場所が変わっていきますが、それでも物語自体はほぼブロードウェイの劇場内でのシーンが中心なので、「舞台での演技を見せる舞台を映画で観る」ような、書いてて自分でもよくわからないような面白い感覚を覚える映画でした。シチュエーションが限定されているだけに内容もわかりやすく、また主要登場人物も少なめなのでとても理解しやすのも○。
内容としても単純ではありますが、起死回生を狙う役者の勝負がどうなるのか、周りの人たちの人間関係も挟みつつ、コンパクトにうまくまとめた観やすい映画だと思います。もっと芸術よりな内容なのかと若干身構えてたんですが、全然わかりやすくてよかった。あとはもう観てくださいまし。
他には特に書くことがなく、短めに終了です。(説明)
このシーンがイイ!
エドワード・ノートンとやりあうシーンは「演技がうまい二人が演技で張り合う演技」を観ている感じでとてもおもしろかったです。二人とも本当に役者。
ココが○
これはもう撮影・編集手法に尽きます。長回しのおかげでテンポの良さと無駄を削ぎ落とした感がすごく感じられました。
あとはキャスティングも素晴らしい。それとドラムのみの劇伴もすごく雰囲気を作っていて良かった。
ココが×
このタイトル故、なんでしょうが…主人公の超能力いりますかね? そこだけが唯一にして最大の不満。
MVA
いやー、これはなかなか悩ましいところなんですよ。みなさんよくて。結構びっくりしたのはナオミ・ワッツの使い方が贅沢な気がしました。しかしそれにしても相変わらずお綺麗です。もうアラフィフなのにね…。
娘役のエマ・ストーンもかわいかったなー。役柄にすごく合ってたし。それとザック・ガリフィアナキスね。まさかの。一番まともに見える役でまたびっくり。とても良かったです。
しかしこの映画はやはり二人の勝負だと思います。マイケル・キートンとエドワード・ノートン。で、こっち。
マイケル・キートン(リーガン・トムソン役)
さすが大絶賛されただけある、リアルな落ちぶれ感。とても素晴らしかったです。
同じくエドワード・ノートンもそれっぽさが素晴らしかったですが、まあこの人の試合巧者ぶりはおなじみなので、こちらの方にしておきましょう。