映画レビュー1414 『ディープ・インパクト』

やー懐かしいこの映画。

公開当時、銀座のバカでかいスクリーンが満席でやむなく立ち見(!)で観て以来の鑑賞です。当時は涙をこらえるぐらいえらく感動したんですが、それ以降様々な映画を観た上でこれを観たら実は全然面白くないとかあるのかな? と思ったので観てみました。

ディープ・インパクト

Deep Impact
監督

ミミ・レダー

脚本

ブルース・ジョエル・ルービン
マイケル・トルキン

出演
音楽
公開

1998年5月8日 アメリカ

上映時間

120分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

ディープ・インパクト

パニック映画のようで人間ドラマ。

8.5
地球に隕石が急接近、宇宙船で乗り込んで破壊しようと目論むが…
  • 一時期流行った地球滅亡物の走り
  • 主要登場人物周辺の話主体で混乱やパニックはだいぶ控えめ
  • 複数の主人公を中心に描く群像劇的な側面も
  • ジョン・ファヴローがめっちゃ細い

あらすじ

実は今観るとドラマがチープだったりしてつまらないのでは…とちょっと身構えていましたが杞憂に終わり、やっぱり結構好きでした。王道ではありますが今でもいい映画だと思います。

高校生たちが天体観測している中、好き女子といい感じになりたいリオ・ビーダーマン(イライジャ・ウッド)が見たこともない彗星を発見、知己のウルフ博士(チャールズ・マーティン・スミス)に報告。報告を受けたウルフ博士がふっるいパソコンを使って計算したところ、これはヤバいやつでは…! と焦って知らせに街へ繰り出そうとしますが運悪くトラックとの事故に巻き込まれ、あえなく死亡。問題は知られないまま、1年が経ちます。

一方看板番組のキャスターの座を狙っている下っ端キャスターのジェニー(ティア・レオーニ)は財務長官辞任の理由を探っていった結果、「エリー」という名前の女性との不倫が原因と見て取材を進めていくと、なんとまさかの大統領(モーガン・フリーマン)がやってきて条件提示とともにスクープを伏せるように要請。

やむなく受け入れたジェニーはその2日後の大統領の記者会見に出席し、「エリー」が地球に迫ってきている彗星であることを知ります。

大統領はかつてアポロ計画で月に降りた経験を持つフィッシュ(ロバート・デュヴァル)を始めとしたエリートたちにチームを組ませて宇宙船で彗星に乗り込み、核爆弾で破壊し「エリー」の衝突を回避するロシアとの共同計画「メサイア計画」を発表。

地球に衝突が予想されるのはそこからさらに1年後、その時に備えて訓練するクルーたちに報道を続けるジェニー、そしてそれをテレビ越しに眺めるリオたち各人の命運やいかに…。

なんだかんだ時代を感じる

調べたところ今現在でも日本における歴代興行収入ランキングのトップ100に入っているぐらいに大ヒットした作品で、まあ当時もすごく話題になっていた記憶があります。このあとに公開された「アルマゲドン」(これも劇場に観に行きました)と設定が酷似していることでも有名ですが、僕は先に観ていたこっちの方が好きでした。

あまりにもヒットしたせいかいまだに名前を借りた(パクった)似て非なる映画が山ほど量産されていて、「ディープインパクト2022」とかもあります。20年以上関係ない映画が続いてるのすごくない!?

やっぱりそれだけよく出来ていたということなんでしょう。当時より断然映画うるさ型(特に対ハリウッド)になってしまった自覚のある自分でも「やっぱりいいな」と思えるぐらい良い映画だと思います。

テーマに対して意外と控え目な演出で「隕石衝突の危機」よりも「隕石衝突の危機を背景にした人間ドラマ」をしっかり描こうとしている辺りが古くならなくて良いのかな、と。

僕はミミ・レダーの他の映画はまだ観たことがないんですが、この頃としては大作を任されるには結構珍しいケースであろう女性監督というのも今から見るとポイントかなという気がしますね。

女性監督だから繊細、みたいな適当なことは言えませんが、でもやっぱりそれなりにプレッシャーもある中丁寧に仕事をした結果がこの映画のような気がして、「今までこの手のSFをやったことがないから」最初は消極的だったらしいんですが、そういったバックボーンもあってよりきちんと向き合ったが故のこの結果なのかなと適当なことを思っております。

これローランド・エメリッヒにやらせてたら絶対もっとしょうもない映画になってたと思う。(エメリッヒはそれはそれで良いんだけどここまでちゃんとしたドラマにはならなかった気がする)

過去何度か言及しているように、僕はどうやら「終わりの時が見えているドラマ」に弱いのでその分評価が甘い可能性も十分ありますが、そもそもそういった映画に弱くなったきっかけが実は昔観たこの映画だったのかもしれないと思ったりもして、もしかしたらその好みを植え付けられた原因となった映画なのかもしれません。とは言え「アルマゲドン」はそんなに好きじゃなかったけど…。(こっちも再鑑賞したいところ)

一方で公開から26年も経ってしまった(改めてマジカヨ)今から観ると、少し「今だったら違うだろうな」と思うような点もあり、そこもまた今改めて観ることの面白さにも繋がった気がしますね。

まずはモーガン・フリーマン演じる大統領。いかにも“それっぽい”大統領で納得…ではあるんですが、正直今となってはこんなにまともな大統領は逆に胡散臭いんじゃないかと感じるぐらいリアルの質の低下が著しい…ってまたトランプになっちゃいそうだから思っただけなんですが、今だったらむしろ「プラント大統領」とか言って自己中で早々に逃げちゃう、みたいな大統領の方が面白そうだしリアルじゃねーの、みたいな思いもあり、そのある意味無邪気な聖人君子的大統領像にえらく時代を感じてしまったという。そうであってほしい願望みたいなものもあったんでしょうけどね…。

そしてそもそもその大統領云々以前にあまりにも「アメリカ中心」なお話であることもだいぶ時代を感じます。今だったらもっと世界的に協力して…みたいな描写が入ってきそうな気がするんですが、この映画はびっくりするぐらいアメリカの話しか出てきません。

精々「メサイア計画」がロシアとの共同計画である…という話が出てくる程度。もっと言えば「ロシアとの共同計画」も今であればおそらくそんな設定にならないと思われる点もなんだかいろいろ後退してしまっている気がして切ないところですが、仮に出てくるとしても今度は中国だったりするんじゃないか、もしくはオールスター感出して個別の国の色を消そうとするのかなとか…やっぱりいろいろ変わってきてるんだなと感じましたね。

結局まだこの頃は「アメリカ一強」だったからこそこういう話でも違和感が無かったのは間違いないところで、「今だったらもっと他国の話が出てくるだろうな」と思ってしまうぐらい相対的にアメリカが弱くなってきているということなんでしょう。

他にもイライジャ・ウッドがバイクで逃げるシーンなんてきっと徒歩で逃げる人たちに引き倒されてるんじゃないのとか、全体的にまだ大衆が(今よりも)善良なのがリアルに感じられる時代だったんだなと思うとそこもまた複雑な思いを抱かずにはいられません。

安穏とした日常に感謝

ちょっと本編とは関係のない話ばっかりしてしまいましたが。

まあ話としては特に難しくもなく、「今だったらどうすんだろね」とハナホジでポテチでも食べながら安穏とした日常に感謝しつつ観るのが良いでしょう。

しかし一時期は本当にこの手の終末映画がやたら多かった記憶があるんですが、最近トンと見なくなったのはなんでなんでしょうね。

実は世紀末でノストラダムスの大予言が迫った時期だったからこそ流行ったんじゃないか、と思ってるんですが…今はもうノストラダムスの大予言自体知らない人も多いんでしょうね、きっと…。

このシーンがイイ!

やっぱり今も昔も艦長にかける最後の言葉のシーンで泣いちゃいますね…。超ベタなセリフなんだけど、やっぱりああ言われたいし言いたいよな、っていう。

むしろあそこまでベタなセリフをドカンと入れられる勇気が素晴らしいと思います。それだけの事態でないとハマらないセリフだし、そこまでの世界観構築があってこそハマるわけで。

ココが○

やっぱり人間ドラマ主体なのが良いんだと思うんですよ。親子関係あり、恋人関係あり、仕事仲間関係ありと。

今になって観てみるとちょっと群像劇っぽいところもあって、より多角的に「隕石衝突の危機」が理解できるようになっているのはやっぱりお上手なんだろうと思います。

ココが×

オープニングの博士グッバイシーンのような、もう本当にこすりにこすられた演出はさすがに「またかー」と思わざるを得ません。時代もあるとは言え。

MVA

公開当時も映画好きではありましたが知識はまるでなかったので、今回改めて観て主人公の母親がヴァネッサ・レッドグレイヴだと気付いて「大女優じゃん!」と驚きました。

当然彼女も良かったんですが、この映画はこの人かなぁ。

ティア・レオーニ(ジェニー・ラーナー役)

主人公の女性キャスター。

専門学校時代にこの映画のティア・レオーニがかわいくない? って言ったら「どこが? 金髪フェチなの?」と言われたことがあるんですが、確かに今観ると別に特段かわいいわけではないなと。

でも演技も良かったし、海岸のシーンもやっぱりグッと来ちゃう。良い意味で“目立ちすぎない”主人公として良かったと思います。

その後あまり活躍しているようには思えないのが残念ですが…まあこればっかりはしょうがないですね。

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