映画レビュー1236 『コリーニ事件』

JAIHOで特に観たいものが無かったので、今回は公開当時より観たかったこちらの映画をアマプラから。

コリーニ事件

Der Fall Collini
監督

マルコ・クロイツパイントナー

脚本

クリスティアン・ツバート
ロバート・ゴルト
イェンス=フレデリク・オットー

原作

『コリーニ事件』
フェルディナント・フォン・シーラッハ

出演

エリアス・ムバレク
フランコ・ネロ
アレクサンドラ・マリア・ララ
ハイナー・ラウターバッハ
ピア・シュトゥッツェンシュタイン
マンフレート・ツァパトカ
ペーター・プラガー

音楽

ベン・ルーカス・ボイセン

公開

2019年4月18日 ドイツ

上映時間

123分

製作国

ドイツ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

コリーニ事件

愛憎渦巻く良法廷劇。

8.5
新米弁護士の初仕事は“育ての親”殺害犯の弁護だった
  • 自らの育ての親を殺害した容疑で裁判にかけられた男を弁護する新米弁護士
  • 逮捕後一貫して何も語らない“訳あり”感のある容疑者が観客を物語に惹きつける
  • 恩人、恩師、元恋人と愛憎渦巻く人間関係が物語に奥行きを与える
  • 創作ながら現実にも影響を及ぼした、ドイツ刑法の問題点を突く社会派法廷劇

あらすじ

かねてより書いていますが法廷劇は大好物なもので、この映画もご多分に漏れず面白かったんですが、しかし法廷劇以外の部分もなかなか濃くてそこがすごく良かったですね。かなり見応えがありました。

新米弁護士のカスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)は、初仕事(多分)としてとある殺人事件の国選弁護人に任命されます。

その事件の被害者は経済界の大物で、かつカスパーの少年時代の恩人、ハンス・マイヤー(マンフレート・ツァパトカ)。

つまり彼は図らずも「自らの恩人を殺害したと思われる男、コリーニ(フランコ・ネロ)の弁護」を担当することになったわけです。

しかも遺族側には学生時代に刑法を教わった“恩師”で、法曹界でも超大物のリヒャルト・マッティンガー(ハイナー・ラウターバッハ)がつき、対策を講じる様子。

そして被害者、つまり恩人の遺族代表は、ハンスの孫娘でカスパーとはかつて恋仲だったヨハンナ・マイヤー(アレクサンドラ・マリア・ララ)。

頑なに供述を拒み、肯定も否定もせず動機も一切語らない被告の弁護に苦戦するカスパー。しかし裁判は待ってくれません。

この愛憎渦巻く裁判、果たしてどうなるんでしょうか。

現実と地続きの物語

正直なところ「遺族側につく弁護士」という立ち位置がよくわからなかったんですが、検察のサポート的な立ち位置っぽかったですね。ドイツの司法制度ではこういうポジションがあるんですかね。

しかしまあ上記あらすじに書いた通り、ものすごく狭い範囲の人間関係が裁判で一堂に会するような、下手をするとすごく陳腐になりそうな設定なんですが、逆にそこを上手く利用した物語はすごく濃いものに仕上がっていて、まあものすごく惹き込まれましたね。「すごく」ばっか言ってますね。語彙力。もう純粋に好きだわー、って感じ。すごく。

まず被害者のハンス。彼は経済界の大物なんですが、移民系と思しきカスパーを孫とともに学校に通わせて教育を施し、最終的には弁護士として職を得るまでサポートしてくれた、言わば育ての親のような絶対的な恩人です。

その孫娘にあたるヨハンナとは10代の頃にお付き合いしていた元恋人という関係。

その彼女に裁判上のサポートとして付くのがカスパーが大学時代に薫陶を受けたリヒャルトで、おまけに彼は超ベテランで世間的にも評価が高い弁護士です。

その彼に対峙するのは高校卒業していきなりメジャーリーガーと試合するようなものですからね。そりゃーしんどいですよ。もちろんあちらは余裕しゃくしゃくで揺さぶりとかもかけてきます。

そんな“身内”の人間関係に目が行きがちではありますが、しかしタイトルは「コリーニ事件」。そう、コリーニとは被告の名前です。

この被告がかなりの訳ありっぽくて、映画冒頭で(決定的な場面は無いものの)どうやら確実に彼がハンスを殺したっぽいし、返り血を気にもせず、逃げもせずに逮捕されているので、きっと彼には彼なりの“確実な正義”があってのことなんだろう…と思うんですが彼は逮捕後には貝と化してしまい、何一つ語りません。

何か訴えたくてやったんじゃないのか…と思うんですが何一つ、言い訳もしなければ正義を語ることもないコリーニに、カスパーは手を焼きます。

だからこそ、なのかもしれませんが彼はその動機を知りたいと様々な調査を開始し、その裏にある事実に引き寄せられていくことになるんですが…これがまあすごく良かったわけですよ。

最初に書いた通り、この映画で描かれたある問題が現実の司法制度にも影響を与えたらしく、その辺りの深みみたいなものが「その辺の法廷劇」とは一線を画した出来に寄与していると思います。

つまり物語は創作でも現実に起こりうる問題を描いているんですよね。それがまたすごく…(詳細を書くと興を削ぐのでごまかしますが)現実と地続きになっている納得感があり、それ故に「その辺の法廷劇」に留まらない余韻を残してくれて大満足、と。

まあよくこんな問題点を見つけ、そしてそれを元にこんな物語を作ったなと感心せざるを得ません。

自分が主人公だったらどうする

あとはもう観てチョーダイですよ。噂に違わぬ良い映画でした。

話が話なだけに、自分がカスパーだったらどうしてるだろうかとか考えさせられる部分も素晴らしく、否が応でも“正義”について考えざるを得ません。

こういう映画ならいくらでも観ちゃうよね、という好みど真ん中の映画でした。アメリカ以外の法廷劇はあまり観た記憶がないので、そこも含めて嬉しかったですね。

このシーンがイイ!

ピザ屋のバイトの子との絡みが好きでした。脇役だけど彼女の存在感結構良かったなと。

ココが○

テーマ的にはよくあるものではあるんですが、ただそれが最初から明かされておらず徐々に「そういうことか!」とわかる仕組みになっているのがまたお上手。

ココが×

法廷劇ながら外の話も多く、そこまで固すぎずに程よく娯楽していると思うので、これと言って悪いところも無い気がします。この手の映画の割には誰にでもオススメできるタイプの映画ではないかと。難しすぎないのがいい。

MVA

みなさん良かったんですが一番グッと来たのはこちらのお方。

フランコ・ネロ(ファブリツィオ・コリーニ役)

被告人です。

終始黙っている場面が多いものの、しかしその黙り方からしてワケありっぽい雰囲気も素晴らしく、なんともいぶし銀な演技でした。強面な感じもいい。

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