映画レビュー1142 『ビジョン』
今回は最も好みが合う方が「傑作」と言っていたので気になって観ることにしたインド映画です。終了間際ではなくまだまだ配信中ですよ。
なお、衝撃的なことにこのブログのためだけに無駄に安い板タブを購入したので、今回よりジャケ絵が無駄にデジタル化しました。無駄だらけです。
まだ慣れていませんが結構ボールペンよりも楽だし描き心地が良いのでいい感じに気分転換になっています。
ただ細かい描き分けは難しいな〜と思っているんですがそもそも細かい描き分けが活きる画力がないので気にしません。よろしくどーぞ。
ビジョン
Upendra Sidhaye
ジョアスー・ジョゼフ
アジャイ・デーヴガン
タブー
シュリヤー・サラン
ラジャット・カプール
イシター・ダッタ
ヴィシャル・バードワージ
サミール・ファテルペカル
2015年7月31日 インド
163分
インド
Netflix(PS4・TV)

インドらしからぬ(?)ガチサスペンス!
- 脅してくるクソ野郎を誤って殺害してしまった娘を守るため、徹底抗戦を決意する父
- 死んだ男は警察高官の息子だったために過酷な取り調べを受けることになる一家
- 終始一家 vs 警察の知恵比べ的なガッツリサスペンス
- 双方の奥さんが美人なのもポイント
あらすじ
「インドらしからぬ」と言うと失礼かもしれませんが、イメージ的には本当にそんな感じで、1度も踊りも無ければ歌も無い、ガチでサスペンスする“だけ”の映画でした。
途中で「♪フッタヘダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムフッターヘ」を延々と繰り返す曲にだけ「この曲くどいなwww」と笑いが漏れましたが、そこを除けばもうマジもマジ、大マジのサスペンス。ただ踊りも歌もないにも関わらず3時間近い長さなのはさすがにインド、と言うところでしょうか。でもそんなに長さを感じないぐらいに見応え充分の良作です。
映画が好きすぎるため、自らが経営するケーブルテレビで流す映画を事務所のちっさいテレビで観てから帰宅する生活を続ける男、ビジャイ(アジャイ・デーヴガン)。生活は楽ではないようですが、奥さんと娘2人の4人でそれなりに慎ましく暮らしているようです。
ある日、渋々参加を許可したキャンプ合宿的なものから帰ってきた長女のアンジュー(イシター・ダッタ)の元に、同じく参加していた少年・サムがやってきて彼女の着替えの盗撮動画を見せつけ、「この動画をバラまかれたくなければ言うことを聞け」的な脅しをしてきます。
彼が背を向け、母の方を向いている隙に手に持っているスマホを破壊してやろうと棍棒的なものを振りかざしたアンジュー、しかし棒は運悪くサムの頭に命中…! グッバイサム…!
雷雨の中、彼の遺体を庭に埋めた母とアンジューの2人は、帰ってきた父・ビジャイに事態を報告。状況を把握した彼は家族を守るため、隠蔽工作の計画を立てます。
一方、死んだサムは監察長官(詳細は不明ですが警察のお偉いさん)ミラー(タブー)の息子であることが判明。あ、ミラーさんがタブーなわけではなく役者さんの名前がタブーです。ややこしくてスミマセン。
文字通り威信をかけて捜査に挑む警察は、サムが当日訪れていたと思しきビジャイ家に狙いを定め、またビジャイを目の敵にしている汚職警官・ガイトンデがサムカー(サムのカー)に乗り込むビジャイらしき人物を見ていたこともあり、状況的にはかなり怪しい雲行きですが…しかしビジャイは完璧な計画を用意していたのだった…!
ビジャイ vs 警察の知恵比べ、勝利するのは果たしてどっちでしょうか。
実力で見せ切るガチサスペンス
例によってインド映画らしく序盤の30分ぐらいは割とダラダラとあまり関係なさそうな話が続く感じ(一応伏線的なものもある)ですが、ミラー長官が出てきた辺りからはもう二転三転の見応えあるガチサスペンスになっています。っていうかミラー長官がおっさんかと思いきやめっちゃ美人さんでそこがまた良いんですけども。
主人公の奥さんも美人なもんで、若妻 vs 美熟女的な対決の趣もあるとか無いとか言う噂です。インド人女優、本当にレベルが高い…!
ちなみに主人公のビジャイを演じるアジャイ・デーヴガンもボリウッドスターとして有名なようですが、僕にはインドのルー大柴にしか見えませんでした。いやダンディだったけども。
事件のきっかけとなった盗撮映像は単なる着替えの映像なので、この程度なら別にそんなに深刻に取らなくても…とは思いますがこの辺は文化の違いもありそう。「嫁入り前に裸を見られたら生きていけない」みたいな価値観があるのかもしれません。もしくは描写的にソフトにせざるを得ない映画文化の問題か。
もっと直接的なエロ動画だったら事件に対する納得感も増したかなと言う気はするんですが、まあいずれにしてもそれはきっかけに過ぎず、本題とは少し逸れるのであまり気にしない方が良いでしょう。
最初に犯行の一部始終が描かれ、犯人もわかった状態なので「倒叙型サスペンス」の一種でしょうか。よくわからないまま書いておりますけども。いわゆる古畑方式みたいな。
事件については大半わかっているし、隠蔽工作についても大まかな流れは教えてくれるんですが、それでも知らなかった事実が続々と指摘され、それにまたきっちり応え、かわしていくビジャイ一家と言う流れの繰り返しが基本。こう書くと単純なようですが、絶妙に毎度毎度「いよいよヤバいのでは」と惹きつけてくれるのでどっぷり楽しめます。
ラストも見事
ネット情報の受け売りですが、原題は「見えているもの」、副題が「見えるものは、あてにならない」だそうで、ここだけでもなるほど意味深だぜとなかなか良いタイトルだなと思います。正直邦題(及び英語訳タイトル)の「ビジョン」じゃありきたり単語すぎてイマイチ。
元はマラヤーラム語で作られた映画だそうで、そのヒンディー語リメイク版がこの映画。さらにスリランカと中国でリメイクも作られたそうで、数年でこれだけリメイクが作られるだけに早々にして結構な評価を受けた映画なんでしょう。
ちなみにとある東野圭吾作の小説(ネタバレになりかねないのでタイトルは伏せておきます)との類似性も指摘されているらしく、実際にフィルマークスのレビューでもそのタイトルを目にすることは多かったので、その小説を読んだことがある人にとっては評価が下がる可能性はあります。僕はタイトルは聞いたことがありますが読んだことは無かったので新鮮に楽しめました。
特に「ラストシーンを見せたいがために作ったのかな」と思えるぐらいに気合いの入った、見事なラストは非常に見どころでもあるので、しっかり目を見開いて鑑賞していただければと思います。
こういう映画を拾ってくるのはさすがネトフリ、やるやん。
このシーンがイイ!
これはもうラストシーンですよ。見せ方もうまいしストーリー展開としても良い。お見事でした。
ココが○
本当にまったく遊びのないガチサスペンスなので、改めてインド映画の懐の深さを感じざるを得ません。こういうのもやれるのかー、すげーなと。
インドサスペンスとしては「女神は二度微笑む」と比較して語る人も多いようなんですが、僕としてはあっちにはまだ映画的な意味でのインド臭が感じられたと言うか、妙な思い切りの良さに笑っちゃった面もあったので、それと比べると本当にこっちはガチで真っ向勝負なサスペンスと言う意味で感心しました。
どっちが良いとか悪いとかではなく、インド映画っぽさと言う意味で予想を裏切られた感じがして。
ココが×
ヒールの一人、悪徳警官のガイトンデがそこそこムナクソ野郎なのでそこは少々注意が必要かもしれません。中心メンバーではないのにあそこまでひどい警官を描くのって珍しい気がする。
MVA
インドのルー大柴を始め、みなさん熱演でとても良かったですが…この映画はこの人かなーと。
タブー(ミラー・デーシュムク役)
監察長官。警察のお偉いさんです。
初登場シーンではファイナルファイトかよと言いたくなるようなコス姿、その後サリーを着たりもしますが全編通してまー美人。
それなりに良いお歳だとは思われますが、はっきりと美人だし強いし怖いし泣きも見事だしで文句ありません。間違いなく良い女優さんですね…。