映画レビュー0380『フェア・ゲーム』

突然ですがワタクシ、前にも書きましたが「ビデオニュース・ドットコム」というサイトの会員なんですね。

主に時事ネタを扱う討論ニュースサイトみたいな感覚のサイトなんですが、稀に映画ネタを扱うことがあって、今回観た映画はその時に紹介されていたものです。

そのサイトで映画の話をする時は、なかなか本流ではないものの結構興味深い映画を取り上げるので、今後もちょっとそこからのチョイスが出てくると思いますが、まずは一発目。

フェア・ゲーム

Fair Game
監督
脚本
原作
『The Politics of Truth』
ジョセフ・ウィルソン
『Fair Game』
ヴァレリー・プレイム
出演
デヴィッド・アンドリュース
音楽
公開
2010年11月5日 アメリカ
上映時間
108分
製作国
アメリカ・アラブ首長国連邦

フェア・ゲーム

イラクが核兵器の原料となる「イエローケーキ」をニジェールから大量に入手した、という情報がCIAにもたらされる。その情報の裏付けを取るべく、CIAエージェントのヴァレリーは夫で元大使のジョゼフを調査に派遣するようCIAに進言する。調査から戻ったジョゼフの結論は「そのような事実はない」というものだったが、イラクへの戦争を画策するホワイトハウスはその情報をもみ消した挙げ句、リークによる情報操作でヴァレリーとジョゼフ夫妻は窮地に追い込まれる。

赤裸々なアメリカ覇権物語。

7.5

僕は知りませんでしたが、「プレイム事件」という実際にあった事件を元にした映画で、ブッシュ政権下のイラク戦争へ突き進もうとするアメリカ内部を赤裸々に描いた、かなり社会派要素の強いサスペンスです。

もはやブッシュ前大統領はネタ化されていると言っていいほど「傍若無人の無能大統領」的にいろんな映画に登場していますが、さして時間の経っていないこのタイミングでこれだけリアルな話が表に出てくる、アメリカの懐の深さもまた感じざるを得ない映画ですね。

規模も世界での存在感も違うので比較はできませんが、こと日本では今のお子様ネトウヨ総理が無能っぷりを発揮したところでこんな反骨心のある映画なんぞ作られないでしょう。無念。

舞台は2000年代初頭のアメリカ。後に真っ赤な嘘であることが世界的にバレる「イラクの大量破壊兵器の存在」を巡り、CIA内部とホワイトハウスの対立、そしてホワイトハウスの意向で社会的に抹殺されそうになる夫婦のお話です。

CIAは調査の結果「イラクに大量破壊兵器は存在しない」という結論を出したんですが、そこに戦争をしたいホワイトハウスとの闘いがあったり、巻き込まれた有能なエージェントの不条理があったりと、なかなか社会派好きにはたまらない内容。陰謀論を地で行くアメリカ的力学もまたヨダレが出んばかりのえげつなさで、なかなか楽しませて頂きました。

ただ、かなり好物な映画ではあるものの、やや不満のある点もありました。

まず、社会派であるが故に仕方のない面もありますが、やはりある程度この時の情勢を知っていないといけない側面があります。オープニングで「これは実話を元にした物語」的なテロップも入らないだけに、おそらくはアメリカでは「プレイム事件」と言えばもう言わずもがなというレベルなんでしょう、それ故に「アメリカ国内では特に説明が必要のない話」という作り方になっています。

反面、当たり前ですが事件そのものを知らずとも、このイラク戦争の周辺事情を知っていないと把握できない内容が若干見受けられるので、まったくこの辺の話に疎い人は厳しいと思います。

今それなりの年齢の人であれば誰でも大丈夫なレベルだとは思いますが、いずれにせよ説明的な部分は省かれているだけに、少し「放り投げられた」感はあるかな、と。

この辺りをうまく説明も差し込みながら娯楽としてまとめあげたものが「アルゴ」みたいになるんだと思いますが、あそこまで娯楽的ではなくやはり社会派テイストが強いだけに、ある程度人を選ぶ面はあるかな、と思います。

次に、これは好みの話になりますが、僕は「ヴァレリーとジョゼフ夫妻への攻撃」、「フェア・ゲーム」が開始してからの話をもっと観たかったな、と。丁寧であることの裏返しなのかもしれませんが、割と前段階の工作部分が長めに取られているので、物語が動き出したら終わりが近い、みたいな感覚が少しだけ残念な気がしました。

好みとしては、イラクへの諜報活動よりも、「ホワイトハウスが本性を見せてから」のアレコレの方が丁寧に観たかったです。

とは言え、真面目ながら見せ方もうまく、また主演夫婦のキャスティングも申し分ないので、社会派サスペンスとしての見応えは十分。頭を使う映画が好きな人にとってはハズレになりにくい、良い映画でしょう。

歴史的な意味でも学んでおいて損はない題材なので、あのイラク戦争を見てきた現代人には興味深いテーマの物語だと思います。

このシーンがイイ!

ラスト近くですが、ヴァレリーが帰宅したシーン。あそこはなかなか味わい深くて良かったですねぇ。

ココが○

テーマに尽きるでしょう。

当時の政権上層部の人たちが実名で出てきたり、ブッシュ大統領の演説映像が挿し込まれたり、まだ当時から10年程度しか経っていないのにこれだけ赤裸々なものが作れるのはスゴイ。

ココが×

反面、やっぱり軽くはないので、結構観るのに気合がいることも事実です。逆に言えば、こういう映画は劇場で観たかったなぁ…と今さらながら思いますね。家だとやっぱりちょっと集中しきれないんですよねぇ…。言い訳ですが。

MVA

主演二人のどっちにするか、ってところですが、今回はこの人に。

ショーン・ペン(ジョゼフ・ウィルソン役)

ショーン・ペンと言うと、やや強気のコワイ人っぽい役の印象があるんですが、今回はやや抑えめ、渋い中年男…でも頑固で曲げない“らしさ”も見えるという、まさに適役。

ショーン・ペンは割と政治的メッセージを訴える機会が多い役者さんらしいんですが、そういう人にこういう役をやらせる妙味のようなものも感じましたね。

あとは奥さんのナオミ・ワッツも良かったです。まぁほんと美人なんですが、敏腕で強い女性っぽい感じもよく出てたし。どちらもよくできました、ということで。

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