映画レビュー1034 『ハードコア』

ジャケ絵も大量に描き終えまして更新再開でございますが、今回もご存知ネトフリ終了シリーズでございます。

これもまたずっと観ようと思っていたものの、結構グロいという噂も聞いていたのでどうしたもんか迷っていたところ「ヘイリー・ベネットがエロいから観るべき」という天啓を得まして、迷わず観ました。結局。

ハードコア

Hardcore Henry
監督

イリヤ・ナイシュラー

脚本

イリヤ・ナイシュラー

出演

シャールト・コプリー
ダニーラ・コズロフスキー
ヘイリー・ベネット
アンドレイ・デミエンティエフ
ダーシャ・チャルーシャ
スヴェトラーナ・ウスティノヴァ
ティム・ロス

音楽

ダーシャ・チャルーシャ

公開

2016年4月8日 アメリカ

上映時間

96分

製作国

ロシア・アメリカ

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

ハードコア

他にない映像なのは間違いないが…話が弱い。

7.0
愛する妻を取り戻すべく、改造野郎が全編一人称視点で殺りまくる
  • 改造で一命をとりとめた主人公が連れ去られた妻を取り戻すべく奔走するアクションSF
  • 全編一人称視点で実写版FPS的映像はオンリーワン
  • 話の内容はSFらしいもので悪くはないが、しかしやはり映像先行な印象は強い
  • ヘイリー・ベネットをもっと見せろ

あらすじ

ジャンルとしてはアクションSFなんですが、まあなんと言っても映像がオンリーワンなのでそれだけでも観る価値はあると思います。よくこんなの作ったなっていう。

ところどころ「これどうやって撮ったんだろ」と思うようなシーンもあるし、インディーズ故におそらくは低予算映画だと思うんですがかなり“作り”にこだわった意欲的な作品です。

主人公のヘンリーはとある研究施設で目を覚まします。どうやらかなりの重症を負っていたようで記憶もないんですが、自分の妻だと言うエステル(ヘイリー・ベネット)に大幅な手術を施され、いわゆるサイボーグのような形で生き返った様子。

そしたら今度は声帯を回復させましょうかね…と言っていたところに突如現れたのが謎のサイキック野郎・エイカン(ダニーラ・コズロフスキー)。研究員たちを惨殺して回るエイカンから「逃げて!」と言うエステルと共になんとか研究所からは逃げ出したヘンリーですが、直後にエイカンの部下たちに襲われてエステルは拉致されてしまいます。

さらに追ってくるエイカンたちの部下を前にして声を発することもできず、万事休すと思われたヘンリーですが…これまた突如現れた謎の男・ジミー(シャールト・コプリー)によって助けられ…たのもつかの間、速攻死ぬジミー。

どうすりゃええねん…! と路頭に迷っていたところまたもジミーが現れ、「ここに行け」と指示を受けるヘンリー。

その後もあーだこーだしつつ、果たしてヘンリーは最愛の妻・エステルを救い出すことができるのでしょうか。

FPSの映画版

ということで全編一人称視点の意欲作。本当に全編です。1シーンたりとも一人称以外の視点のシーンは出てきません。ゴイスー。

最近のゲームはこういう視点のものがうんざりするぐらいに多いんですが、この視点のゲームは大体「FPS」と言うジャンルのゲームがほとんどです。「ファーストパーソン・シューティング」の略です。なのでFPSに慣れ親しんでいる方であれば、まんま「あれが実写になった」と思ってもらえれば大体の雰囲気は伝わると思います。

今まで(FFとかで)「まるで映画のようなゲーム!」っていうのは散々やってきましたが、ここに来て「(文字通り)まるでゲームのような映画!」というのは初めて観ましたね。あらゆるモノ(ハード)のスペックが上がってきたおかげで、もはやいろんなところで境界線が曖昧になっていくんでしょう。

またこれもFPSっぽいんですが、とにかく相手を殺しまくる映画でもあるので、事前に聞いていたようにある程度のグロさはありました。最も「ゲームっぽい」からなのか、そこまでキツイグロさでもなく、僕としてはまあまあ許容範囲かなという感じ。

なんでしょうね、殺される側もいかにもモブというか、多数いるエイカンの部下が次々と殺られていくだけなので、メンタルに来る感じじゃないからそこまでキツくない、みたいな。きっと自分のグロ耐性の無さは感情移入によるところが大きいのかもしれません。ここに来て新たな発見。まああとグロいとは言え一瞬、っていうのも大きかったのかも。

物語としては謎の男・ジミーを始めとしてなかなか意外な部分もありつつ、SF的には割とよくある話ではあるものの、僕は結構好きなお話でした。というか思ったより筋自体は良かった気がする。ただなにせ見せ方重視の映画だからなのか…むしろ「ちゃんとしたSFとして見せればもっと面白かったんじゃないか」というような気もするし、かと言って普通のSFにしちゃったらすごく凡庸にもなりそうだしで…難しいところ。

おそらくは全体的な流れ…いわゆるプロットは良いものの、細部の脚本部分がどうしてもある程度(一人称視点という)制約があるためにあまり深く描けない点が強く出てしまったのかもしれません。「設定は良いけど話はそれなり」に着地してしまった感じ。

この辺は若干色眼鏡をかけた言い方になってしまうかもしれませんが、元々この映画は監督がフロントマンを務めるバンドのPVが評判になり、そのPVと同じ手法で映画を撮ろうってことで作られた映画らしいんですよね。つまり、監督(と脚本)は本業がミュージシャンなんですよ。おそらく。

もちろんミュージシャン出身で多彩な才能を発揮する監督もいますが、なにせ撮影手法が特殊な映画なだけに、脚本ぐらいは他の人の手を借りる(任せるか共同脚本)かして、別の(人間の)視点を持った脚本にすればもっと良くなったんじゃないかなぁという気がするんですよね。

逆に言えば本業ミュージシャンでよくこんな話を作ったなとも思うので、もうその時点でかなり才能豊かな方なんだろうとは思うんですが、やっぱり撮影手法を考えると他の人の意見も取り入れるような体制ができていた方が結果的に完成度が高くなったような気がしないでもないんですよね。どうやって作ったのか詳細がわからないのでこの辺は完全な妄想になっちゃうんですが。

まあそれだけ“惜しい”話だなと感じた、ってことなんでしょう。

ただ主演かつ製作総指揮にも名を連ねるシャールト・コプリーが噛んでいるところを見ると…あの人がいろいろ口を出してるんじゃないかって気もしないでもない。なんとなくそんなイメージ。多彩さで言えば相当っぽいですからね、あの人。

ヘイリー・ベネットをもっとくれ

もしかしたら“惜しい”と感じたのは「一人称視点」という制約=主人公が見聞きする情報以外を出せない制約のせいなのかもしれないですね。それ故に深さが足りなく見えた、とか。

ただその分くどいようですが他にない映画になっているのも間違いなく、映画好きであれば一度観てみると良いと思います。話自体も悪くないし。

あとはもう少しヘイリー・ベネットの出番が多ければ…! クッ…!

散々「ヘイリー・ベネットがエロいよ」と聞かされていたのでもうティッシュ片手に観てやるぜぐらいの勢いだったんですが、「いや他の映画のヘイリーの方がエロくね?」って感じだったのでとても残念。それが微妙な評価につながったという説もあります。

っていうかあの人、自分が観た映画限定ですが「ラブソングができるまで」以外の全部の映画でエロいと思うよ…。

このシーンがイイ!

そりゃあもうヘイリー・ベネットとの疑似セックスシーンでしょう。もっと見せろよって話ですよ。

ココが○

他にない映像の映画、という意味では歴史に残る映画なのかもしれません。ゲームと映画を近付けた功績もあったと思います。

ココが×

上に書いた通り制約が多い分、話が全体のポテンシャルに追いついていない印象がするのが惜しいところ。

それと僕は大丈夫でしたが、やはりどうしても映像的に酔う人も結構いるみたいなのでそこは注意してください。

MVA

ヘイリー・ベネット…にしたいところですが思ったよりも出番がなかった(でも最高だったけど)ので、結局この人に。

シャールト・コプリー(ジミー役)

謎の男・ジミー。いかにもシャールト・コプリーらしい癖のある役どころを見事に演じています。スゴイ。文字通り役者やで。

ちなみに主人公・ヘンリー役の人はなにせ顔も出てこないし監督含めた数人が演じているらしいので良いも悪いもありませんでした。ただ体張っててすごいな、っていうのはあったけど。

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