映画レビュー1340 『人類遺産』

ドキュメンタリー観ていくぞシリーズ。シリーズ名が安定していませんが気にしないでください。

人類遺産

Homo sapiens
監督
公開

2016年10月19日 フランス

上映時間

94分

製作国

オーストリア・ドイツ・スイス

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

人類遺産

面白いけど未調理すぎる。

7.0
世界70か所以上におよぶ廃墟の姿を捉えたドキュメンタリー
  • 日本も含め、世界各国の“廃墟”をひたすら流していく映画
  • 例によってナレーションも音楽もなく、ただひたすら観て考える時間
  • 急に人がいなくなった感覚は考えさせられるが、少々冗長でもある
  • 廃墟好きには文句なしにオススメ

あらすじ

面白かったんですがやっぱり少々飽きて眠くなってくる面もあり、この監督とはちょっと相性が悪い気がします。

特に説明が必要な内容でもなくて「観ろ」で終わっちゃう映画ではあるんですが…世界各地にある“廃墟”を、例によって定点カメラの固定映像でただひたすら撮影した素材を繋げ続けた映像を観るだけ、のドキュメンタリーです。

音楽もナレーションも一切無く、本当にある地点から映した廃墟をそのまま繋げただけの映像なので、良くも悪くも観客の想像・思考に委ねるものになっています。

オープニング直後の場所がすべて

「そこがどこか」わかったのは日本の廃墟ぐらいのもので、あとは一部建物内で使われている言語からうっすら「あの国かな」とわかるものがある程度で、ほとんどはどこなのかもさっぱりわかりませんでしたが、正直国の違いは些末な話で、タイトル通り全体通して「(国云々ではなく)人類の残したもの」というような視点で作られた映画なんだろうと思われます。

特徴としてはこの映画で登場する廃墟はすべて「そのまま放棄された」場所になっていて、早い話が片付け等一切されていません。定義するなら「退去」のようなプロセスを踏んでいない場所、という感じ。

活動の痕跡を残した状態で急に人がいなくなったように見える場所ばかりなので、嫌でも「そこで何があって人々から捨てられたのか」を考えさせられる映像なのが(こう言うと不謹慎ですが)面白いところ。

例えば焼け溶けたような遺物が残る場所は「ああ、戦争か…」とすぐわかるんですが、他はなぜそうなってしまったのかがわからないものだらけで、それ故により想像が膨らむ内容にはなっていると思います。

僕…というか日本人としては、やっぱりオープニング直後のとある場所を見るとどうしてもいろいろ考えてしまう面があり、そこでいきなり頭を殴られたような衝撃を受けたんですが、残念ながらそこがピークであとはどこかもわからずただ長めのカットが続くだけにちょっと飽きてきてしまいました。

体感としては(やらないけど)2倍速で観るとちょうどいい感じの長回しっぷり。またも上映時間をそれなりにまとめるために長いカットにしているのでは…と穿ったりもしましたが、この辺はおそらく対象に向けての興味の度合いでだいぶ印象が変わってくるとは思うので、廃墟好きの人はちょっと止めたり戻したりしながら観るぐらいハマるかもしれません。

問題のオープニング直後のとある場所についてなんですが、まず最初に雨の駐輪場から始まります。

日本語で書かれているので日本だし、自転車もあまり古くなさそうですが放置されたまま。

その後映る場所もついさっきまで人が暮らしていたっぽい場所ばかりで、特に建物も古くないんですが道だけは草が生い茂っていて「放棄されている」のがわかる映像ばかりでした。

ここではあえてそこがどこなのかは書きませんが、眺めながら「…日本でこんな場所あるのか?」と考えを巡らせた結果、そこがどこかがわかった瞬間にものすごくショックを受けました。

と同時にこの映画の凄みを感じたんですが、ほぼ初手でこんなものを見せられてしまったがために、その後はどうしても興味が薄れてしまい、日本人的に不幸な構成の映画だなという気もします。

せめて場所や放棄の由来等最小限の説明でも入ってくれればだいぶ見え方も変わったと思うんですが、それはそれで“想像する楽しみ”を制限することにもつながるし、監督のこれまでの手法(「いのちの食べ方」「眠れぬ夜の仕事図鑑」)を見るにその考えはさらさらなかったものと思われます。

一方で「ただ定点カメラで撮影した映像を繋いだだけ」の映画である上に、人にフォーカスしてもいないので「ぶっちゃけ俺でも撮れるんじゃね?」という気がしないでもないぐらいにあまりにも“素材そのもの”の映画なので、テーマ性の良さとは別に「もうちょっと仕事しろよ」と思わないでもなかったです。それが監督の手法、カラーだったとしても。

映像そのものに風や日光や雨の味わいがプラスされていて、撮影時期や時間にもこだわった映像であることもわかるんですが、それにしてもあまりにも投げっぱなしな感が強く、やっぱりちょっとドキュメンタリー作家として追いたくなるようには感じられなかったのが残念でした。

惜しいものの興味があったらぜひ

つらつら書きましたが、結局要約すると

  • 世界の廃墟垂れ流し
  • 完全説明ゼロ
  • とある場所だけ身近なため衝撃

の3行で説明が終わる映画です。

だからってダメ、ってわけじゃないですよ? ハマる人は本当にハマると思います。別に廃墟好きでもない僕が観てもすごく興味深かったし。

ただ手法としてあまりにも未加工すぎるのと、カットの間が合わずに飽きてきてしまうところが気になったので少々自分には合わなかったな、というだけで。

興味があったら観てみるといいと思います。おそらく損はしないでしょう。

ただ僕と同様に「テーマが良いだけに不満がある」感じになる人も多いと思います。

どんなに良いきゅうりだろうときゅうりだけで食えと言われてもせめて味噌ぐらいくれよ、とそんな感じ。惜しい。

このシーンがイイ!

散々書いてますがやっぱりオープニング直後、2番目の廃墟でしょう。

他と比べるとここだけちょっと異質でもあるんですよね。対象が広くて。それもまた理由を思えばいろいろ考えてしまうわけですが…。

ココが○

着眼点は文句なしです。人間が滅んだあとの地球を想像してしまうような得も言われぬ感覚がありました。

ココが×

せめて最初に名称と国名ぐらい表記してくれればだいぶ違うと思うんですけどね…。鑑賞後に調べる楽しみすら無いのがなんとも。

MVA

人間は一切出てこないので当然該当者無しです。

マジで人間が一人も出てこない映画、初めて観たかもしれない。

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