ゲームレビュー0002 『Outer Wilds』
本当はゲームレビューの一発目に持ってきたかったのはこのゲームでした。ただクリアしてから結構経つんですよね。もう2年ぐらいは経つだろうか…。
なのでホットかつ言いたいことが山程あったFF16を先に書きましたが、本当はいかに前廣がダメなのかよりもこのゲームについて熱く語りたいぜと。
Outer Wilds
マシ・オカ
Avimaan Syam
Sarah Scialli
Alex Beachum
Alex Beachum
Loan Verneau
Kelsey Beachum
Andrew Prahlow
2019年5月28日 Epic Games Store
アメリカ
メビウス・デジタル
アンナプルナ・インタラクティブ
PlayStation 4
「クリアできるなら」一度はやってみてほしいド傑作。
- 22分で必ず消滅してしまう宇宙の謎に繰り返し挑むSFアドベンチャー
- 成長要素一切無し、残るものは情報だけ
- さながら「遊ぶ小説」、最上級のエモさ
- しかしゲームとしては難も多い
あらすじ
大げさでなく、自分の人生へ影響を与えた一本です。ただそれが事前にわかっていたらもっと丁寧にプレイしたのに…という悔いもあったりします。
舞台は太陽を中心とした箱庭的にコンパクトにまとめられた宇宙。
太陽はありますが当然他の星は現実とは違い、ほぼ海に覆われた星であったり片方から片方へ砂が流れ続ける双子の星であったり中心にブラックホールを抱え崩壊していく星であったりと様々。
しかしこの太陽系は「22分後には必ず消滅」してしまうようになっていて、そのため22分プレイしてゲームオーバーだよ…というクソゲーではなく、なぜかプレイヤーは22分前まで引き戻され、そこからまた22分間を繰り返す“ループ”に囚われることになります。
プレイヤーはその22分間を使って、かつて文明を築き栄えたものの突如として歴史から姿を消した「ノマイ」の遺跡を探索しながら、なぜノマイが表舞台から姿を消したのか、なぜこの宇宙は22分後に滅ぶのか、そしてなぜ自分はループしているのか…といった謎に迫っていくゲームです。
興味を持ったらとりあえずやってほしいが…
プレイしたハードがPS4で旧ハードということもあり、プレイ時間は不明なので記載していません。またトレイラーはわかりやすいと評判のニンダイで流されたやつのリンクを貼っていますが、肝心のSwitch版は2年以上延期していて永遠に出ないんじゃないか説もあります。
このゲームはとにかく熱烈なファンが多く、異口同音に「ネタバレ厳禁、余計な情報は入れずに興味があるならやれ」と言ってくることでお馴染みです。僕もそう思います。
「興味を持つ」フックとしては、
- 宇宙の謎に迫るSFアドベンチャー
- ループもの
という2点だけで「おっ、面白そうだな」と思ったらもうやっていいと思います。以上!
というわけにもいかないのでネタバレにならない雑多な話をチマチマと。
元より僕は「SFとループもの」が好きだと自認していたので、もうこの情報を見た時点で「おおこれは面白そうだ」と先輩方のアドバイスに忠実に、その他の情報を入れずに買ってプレイしていまいち面白さがわからないまま進め、中盤以降は「目的地への行き方」だけ調べて進めてなんとかクリアまでたどり着いたような格好です。
正直、クリアするその時まで先輩方が言う「ある時を境に急激に面白くなる」みたいな感覚は無くて、「せっかくここまでやったんだからクリアしたい」気持ちだけでクリアまで行ったようなものでした。いっぱいプレゼント買ったんだから諦めきれない、的な損切りできない恋愛みたいなもんですよ。
ちなみにこのゲームは「1プレイ1配信」として「死ぬたびに配信を終えてまた配信し直し」を繰り返してクリアまでやったんですが、もしかしたら配信してなかったらクリアまでやらずに放り投げていたかもしれません。視聴者はほとんどいなかったんですが一応やっている手前クリアまで行かないとダメでしょみたいな義務感が発生したのが良かったと思います。
一方で「1プレイ1配信」としてしまったために繰り返しが面倒に感じられてしまうデメリットもあって、そのせいでこのゲームの世界にのめり込めなかった(ことによって面白さを感じにくかった)面もあったような気がします。普通に垂れ流し配信しておけばよかったと今さらながら後悔。
と、ここまで来ると「クリアしたけどイマイチ」だったゲームにしか読み取れないと思うんですが、エンディングを観て、そしてその後様々な感想や考察に触れて「これはど偉いゲームだったんだ…」とようやく気付いたんだと思います。
とにかく歩いている最中はしんどいし目的地に何があるかも知らないから希望も特になかったのに、目的地にたどり着いてそこから歩いてきた足跡を振り返るとものすごく壮大でかけがえのないものであったことに気付いて号泣してしまうような、最後まで来てようやく込められていたものの大きさや凄さ、尊さが怒涛のように押し寄せてきて「ウワーッ!!」ってなっちゃったんですよね。クリアしてやっと目が覚めた、目が見開いたというか。
それでもう「これはとんでもないゲームだな…」となったわけです。正直他に比べられるゲームは思いつかないレベル。まさか40も過ぎてここまで感動したり、価値観に影響を与えられるゲームが出てくるとは思いもしませんでした。
もちろん映画だってゲームだって感動したり価値観を与えられたりはするんですが、ちょっとレベルが違うというか、「世界の見え方が変わるぐらいの衝撃」があったんですよね。その意味では映画で言えば「インセプション」が近い体験だったかもしれません。
これまでは「SF好きだな〜」だったのが、このゲームをクリアしたことで確実に「俺はSF好きだ!」と言うようになったし、その上特に宇宙もの、宇宙の謎とか壮大さに惹かれるんだなと明確に意識するようになりました。ようやく。
このあと一部で「小説におけるOuter Wilds」と言われている古典的SF小説「星を継ぐもの」を読んだんですが、これもまた見事にハマってしまい、結果シリーズ4作全部読破するに至って「SF好き・宇宙好き」がより加速していったのも間違いありません。
いろいろ難しい
上に「熱烈なファンが多い」と書きましたが、しかしこれはちょっと留保付きというか…前に“クリアした”が付くんですよね。(クリアした)熱烈なファンが多いゲーム。
仮に100人クリアした人がいたとすれば、多分90人以上は「熱烈なファン」化するぐらいに支持率が高いゲームだと思います。が、同時に「クリアしていない人(放り投げた人)」が多分その10倍はいるんじゃないか…と。
つまり、「ゲームを購入してプレイしたことがある人」からすれば「熱烈なファン」の割合は多くて10%もいないだろうと思うんですよ。それが多いか少ないかは見方次第だとは思いますが、「Outer Wildsってどんなゲームなんだろう」と検索して出てくる熱烈なオススメ記事の割合からすると相当に低いだろうとも思います。
それはなぜかと言うと、まあゲームとしては本当に難しいし「ゲーム的な楽しみ」が極端に少ないからなのではないかな、と。
「難しさ」の面では、まず操作が難しいというのは確かにあるんですが、ただこれは慣れればかなり改善される問題でもあるので、「操作が難しいから投げた」というのはもうかなり序盤で投げた人だろうと思われるしそこはある程度仕方がないかなと思います。
僕も初回のチュートリアル的な「プチ宇宙船」操作が難しすぎて震えました。これ絶対宇宙出ちゃダメなやつじゃん…って。でも本番宇宙船の方が圧倒的に楽なのでそこはあまり構えなくていいと思います。ちなみにクリア後に「だいぶ上手くなってるだろ」とプチ宇宙船で遊んだらやっぱり難しすぎて震えました。
なので端的に言えば「チュートリアルがヘタ」。チュートリアルと言っていいのかもわかりませんが、とりあえず旅に出るまでのウォーミングアップがあまりよく出来ていない。
ただそれは操作の話。
本当の意味での「難しさ」は、導線の無さやギミック対処(行きたい場所へのアクセス方法)の方だと思うんですよね。
よく言われているように、このゲームはレベルの概念もアイテムや装備が増えるような概念もないので、最初っから最後までできることはほぼ変わらない(実際は時間を進めるためのうたた寝的な機能だけ追加される)わけです。わかりやすく言えば「初プレイで即クリア」も可能なゲームになっています。
よって理論上は購入して22分以内にクリア可能です。「ダウンロードに時間かかるだろ」とかそういう野暮なことは言わない。
もちろん「何をもってクリアなのか」「そのために知っておくべきことは何なのか」がわからないとクリアできないので、あくまで「クリアできる」だけで実際にまるっきり初見でやれと言われても不可能な話ではあります。ただまあこれはオープンワールドのゲームとしてはそれほど珍しい話ではないのかもしれません。
例えば僕の友達が「Outer Wilds買ったからやるぜ!」と連絡してきたとき、即遊びに行って彼がプレイする前に僕がいきなりクリアして見せることは可能です。超極悪人の所業。
話が逸れました。
まあそういう「最初からどこにでも行ける」ゲームなだけに、選択肢がありすぎてまずわかりにくいっていうのは間違いなくあります。放り投げられる感覚。初めて「カルネージハート」をプレイしたときの困惑を思い出すぐらいに放り投げられます。つまりは導線がない。
ただ何かしらの取っ掛かりがあれば「じゃあ次はこの話に出てきたどこどこ探してみるか?」みたいな形で次へ繋がっていくようにはなっているので、まるっきり投げられるわけでもありません。
例えば一番最初であれば、「とりあえず一番近くの星に行ってみるか」で進むし、そこで見つけたものからまた広がりもするので実際は“導線がない”わけでもないんですよね。ないように感じられるだけで、絶妙にいろいろ調べたくなるようにできています。
ただその「調べたくなる」にはきちんと考えないといけない面もあって、ただ受け身でプレイしてても「よくわからんな」状態が続いてしまうのも否めません。
この手のもの…映画でもそうですが、最初にまったく知識のない状態で固有名詞が出てきても「なんだかわからない」ですが、いくつか見ていくと「この名前他でも見たな」みたいに点が線になって繋がっていくものが出てくるんですよね。
その線がどんどん増えていくことで大枠が見えてきて「うおおおお」となるんですが、そこに至るまでが難しいのは間違いないです。難しいというか、報酬がなさすぎてモチベーションを保つのが難しい。
そしてこの難しさを捌いて「◯◯行きたい」と思ったところでそこに行くのも(いろんな意味で)また難しい、という二重の難しさ。
個人的には数か所、「行き方を知った上でも行くのが難しい」場所がありました。操作難度であったり時間的な厳しさであったり。
そして困ったことにその「行き方を知る」のがもっと難しいんですよ。説明がなさすぎて。
トライアンドエラーで行くことを想定しているんだと思いますが、ある程度時間が経ってからでないと行けない場所もあるので、また十数分待って行って死んでダメでまた待って…と繰り返すのはなかなかしんどいものがあり、これは結構な苦行だと思います。それがギミック的な難しさ。
「ゲーム的な楽しみ」という意味では、単純に報酬が無い点。何をしてもどこに行っても何もないです。武器が手に入るとか探索が楽になるアイテムがあるとかそういうものが一切無い。
このゲームにおける報酬は“情報”のみで、1プレイ(22分)で1つの文章を読んだだけ、みたいな回がザラに出てきます。むしろ文章が出てくればかなりのご褒美で、「行こうと思ったところに行く途中で死んでもう一度やり直し」みたいな回がゴロゴロあります。
これはよほどこのゲームの物語(謎)に興味を持ってないと続けるのがしんどくなっても無理はないと思いますね。
で、気を取り直してもう一度やるぞとなっても途中からにはならないので、またいつものホームから宇宙船に乗って目的地のある星まで移動して歩いて…を繰り返すことになるんですよ。たまに太陽に突っ込んじゃったりしてさ。
これはやっぱりかなり無骨な作りだと思いますよ。ゲームというよりはシミュレーターに近いようなストイックさ。そりゃあ放り投げちゃっても責められないなと思います。
というわけでご覧の通り、結構なハードルが待ち構えているのでそりゃクリア率も低くなるわな…と納得なんですが、それを乗り越えてクリアするとものすごく素晴らしい後味が待っている…その「困難を乗り越えた先にある感動」みたいなものが評価を押し上げている面も少なからずあるでしょう。
同時に「自分はクリアした」妙な自負心みたいなものも同じく評価に繋がっている気がします。きっと誰もがバンバンクリアできるような親切ゲームだったらここまで評判になってないと思うんですよね。
描いている物語がまったく一緒だったとしても、不親切なゲームの先にたどり着いたからこその感動というのは間違いなくあって、これはきっと面倒な下ごしらえの先にできる料理が美味いのと同じ理屈なんじゃないかなと思います。苦労したからこそ感動できる。
やっぱり登山だってちゃんと自分の足で登って頂上まで行ったのとヘリで頂上に行ったのとでは感動がまったく違うでしょう。どっちも経験無いけどさ。でも絶対そうだと思うんですよ。それと同じものがこのゲームにはあるんだと思います。
オープニングだけで泣く勢
正直、受け取った中身で言えば満点間違いないゲームなんですが、こういう難しさがあるのでどうしても人にはオススメしづらいし、自分もプレイ中は結構苦行のように感じていた面もあるので少し評価は下げました。
ただ感覚としては満点に近いぐらい、今までの人生で間違いなく十指に残るぐらいのゲームです。
もうね、クリアしたあとはオープニングの曲聞いてるだけで泣いちゃうんですよ。ウワーたまんねーなって。今でもたまにオープニングを流すためだけに起動したりします。プレイはしないけどオープニングだけは見る。
2分無いぐらいのループ曲なんですが、めちゃくちゃいいんですよね…。一生聞いてられる。
ちなみにDLCはまだ未プレイです。こちらもかなり評判がいいので絶対やるつもりですが、最近は配信をやめてしまったので配信しないでやるのもどうなのかとか、だったら配信再開するかとか、いやでももうちょっと取っておきたいなとかいろいろ悩んで手付かずのまま。
あれですね、何らかの最終回を取っておいてる感覚に近い。やると終わっちゃう寂しさ。まあでもいつか必ずやります。その時はまたレビュー書くかな…。
このシーンがイイ!
シーンというか、これはやっぱりもうクリアした誰もが好きすぎてうるさいぐらいの一文、
我らの好奇心は君と共に旅をする。君は先人たちの足跡をたどって歩く。そして君がたどった道は後に続く者たちを導くのだ。
でしょうね…。読むだけでじんわり泣いちゃうからね…。
ココが○
いわゆる「ハードSF」に属するSFを描いたゲームになるんですが、そのハードSFっぷり、そして押し寄せるエモさはおそらく他に比肩するものがないゲームでしょう。良すぎる。良すぎるとしか言えない。
クリアした当初よりも思い出して噛み締めて、誰かの感想を読んではまた噛み締めて、スルメのように長く味わえちゃうのも良い。
ココが×
やっぱり人にオススメしづらい(あらゆる意味での)難易度でしょうか。上記のように「それ故に感動する」側面があるだけになおさら難しいところ。
もう少しこうすれば…みたいなものはありましたが、でもちょっと緩めるとダメになっちゃいそうなピーキーなゲームでもあるし、これはこれで完成形なのかな…という気もします。不親切さも含めて。
MVA
あんまり個にフォーカスしたゲームではないんですが、一応お一人挙げておきます。
ソラナム
この人が何者でなぜ良いのかとか書いちゃうともうその時点で興を削ぐので何も書きませんが、まあやった人ならわかるでしょう。