映画レビュー1341 『イコライザー THE FINAL』
もしかしたら今一番好きなキャラクターかもしれない、マッコールさんの最新作が始まったよと聞いてこれはもういてもたってもいられねーぜ! と鼻息荒く行って参りました。なおこのときのために予め過去作2本とも復習して臨んでおります。
余談ですが前回(デッドレコニング PART ONE)観に行った浦和のユナイテッド・シネマのIMAXは「IMAXだけど小せえな」とご不満だったので、面倒なんですがわざわざかつてのホーム・モラショー(※)の109シネマズまで足を運んで「やっぱりデケェ!」とご満悦でした。
※モラージュ菖蒲
イコライザー THE FINAL
デンゼル・ワシントン
ダコタ・ファニング
エウジェニオ・マストランドレア
デヴィッド・デンマン
ガイア・スコデッラーロ
レモ・ジローネ
アンドレア・ドデロ
アンドレア・スカルドゥツィオ
2023年9月1日 アメリカ
109分
アメリカ
劇場(IMAXレーザー・2D)

(敵からすれば)完全にホラー。
- 瀕死の重傷を救ってくれたイタリアの小さな街で暮らすようになったマッコールさん
- しかしそこではマフィアによる強引なリゾート開発計画が立ち上がり…
- シリーズの中では一番地味ながら、一番メッセージ性の強い作品
- ところどころ突っ込みたくなるポイントを配している辺りエンタメとしてもさすが
あらすじ
正直「もっとやって欲しい、もっと殺せ!」と言いたくなるぐらいシリーズ的にはやや地味な1本に感じられましたが、しかしもはや哲学的な存在と化したマッコールさんの相も変わらぬ素晴らしさに痺れまくりの2時間弱、と。最高です。
物語冒頭、あるワイナリーに戻ってきたイケオジとキッズ。しかし建物の内外は凄惨な死体だらけでただならぬ事態であることがひと目でわかります。
当然「ああ、マッコールさんが来たのね…」と思っていたらやっぱり奥の椅子に座ってお待ちのマッコールさん(デンゼル・ワシントン)。傍らには銃を構えたイケオジの手下らしきチンピラが2人。これだけ殺して入ってきて迎撃されもせずに普通に座って銃を構えられて半捕らえられ気味、ってどういうシチュエーションなの!?
と頭が混乱しているのも束の間、「9秒やるから正しい判断をするべきだ」と例によって“選ばせる”マッコールさんですが、当然翻意するはずもなく無惨に殺されていくイケオジ&手下たち。嗚呼…相手が悪すぎた。
外へ出てイケオジを待っていたキッズに「車に乗ってなさい」と言いつけ去ろうとするマッコールさんですが、なんとそのキッズから背中を撃たれてまさかの瀕死。なんとか車で逃げるも途中で意識を失ってしまい、とある海辺の小さな街に搬送され、九死に一生を得ます。
ろくに身体も動かなかったマッコールさんはこの街に滞在してリハビリしつつ、街の人たちとの交流も重ねながらすっかり街の住人に。
しかしこの街にはみかじめ料を納めろ的なヤンチャボーイたちがたむろしており、さらにその裏にはここを一大リゾート地にして金儲けしようと企むマフィアがおりまして、当然ながらやがてマッコールさんと対峙していくわけですが…あとはご覧ください。
地味ではあるが…
3作目は舞台をイタリアに移し、例によって名もなき市井の人々との交流を経て“正義の鉄槌”を下すマッコールさんの姿を描きます。その意味では正統派の続編。
ただし世間的にも結構言われていますが、おそらくシリーズ1「地味」な感覚もあります。それもよくわかる。
アクション以上にメッセージ性、「マッコールはこういう男」という部分をより強くクローズアップした印象が強く感じられ、バイオレンス・アクションというよりも哲学的な映画に近付いてきたな、という気がしました。(かと言って当然つまらないわけではなく、ちゃんと娯楽にもなってます)
「スカッと殺せ殺せ」よりも「俺はこういう男だし世界はこういう男を必要としているんじゃないのか?」と問いかける、より正義に重みを持たせた1本ではないかな、と感じました。とかく利己的な振る舞いばかりが大手を振り、世を謳歌している今の時代だからこそ光るキャラクター、それがマッコールさんです。
さて、まず鑑賞前における僕の最大の関心事かつ最大の懸念が「苦戦するマッコールさんを描くんじゃないか」という点でした。
「キングスマン」然り「イップ・マン」然り、シリーズものとなるとまず間違いなく「主人公が苦戦する=強大な相手」という演出が入るのが当然な気がしていて、それをやられたらマジで興醒めだなと思ったんですよ。マッコールさんでも叶わない超強い相手が出てきて、でも運良く勝ちました的なやつ。
で、その不安を抱えつつ観ていたオープニングで不意を突かれて「前みたいに動けないよアピール」が始まった時点ですごく嫌な予感がしたんですよね。これはもしや…と。
ですがさすがに制作陣も「このシリーズは何が大事なのか」がよくわかっているようで、この心配は杞憂に終わりました。何なら過去一強かったし、過去一残虐でした。
“殺しのターン”なんてもう「あれ、これホラーかな?」と思っちゃうぐらいに悪役が気の毒でしょうがない。あえて顔も映さずにサクサク殺していくマッコールさんに震えが止まりません。「これだよ…これが観たかったんだよ…(震)」みたいな。まさに最の高。漏らしそうだった。好きすぎて。
ただその「殺しのターン」については、オープニングで「これが観たいんでしょ?」のご挨拶的に登場するシーンを含めて3度しか登場せず、思わずFANZAのAVレビューにネタバレチェック(※)をつけて「本番が3回しか無い」と不満を書き込みそうになりました。
※FANZAのネタバレ隠しほど無意味なものはないと思うので一度見てみてください
やっぱりもうちょっとスネ夫的に「ジャイアンやっちゃえー!」と応援したくなるシーンを観たかったなと思うんですが、反面その分しっかり溜めて溜めて「お前らいい加減にしやがれよ…!」とヘイト稼ぎにも余念がないのでやっぱりしっかり楽しませてくれるのも確かです。
シリーズファン的にはやや決着の付け方に思うところはあると思われますが、逆に「ああいう形をとるのがマッコールという男」というメッセージだと感じ、徹底しているなと感心したぐらい。
容赦ないのは相も変わらずですが、観ていてスッキリするのは今作よりも前作・前々作だとは思います。だからこそやや消化不良な気がしてきちゃうのもわかる。
ただ「マッコールさん最高だぜ」と思っている我々のような一般人にとっては、地味だろうがこの映画で描かれたいろいろがすべて「ロバート・マッコールその人」のマニュアルのようなものになっている気がして、なんというか教典に触れたようなありがたみすら感じます。世はマッコール教時代。
本当にこれで終わりらしい
デンゼル・ワシントンにとって初の続投、つまり唯一演じる「同じキャラ」がマッコールさんなんですが、どこかで聞いた話では「アントワーン・フークアがデンゼル好きすぎて一番かっこいいデンゼルを描くために作った」シリーズとの噂もあり、まあその目論見は見事達成されたよねと大きく頷くばかり。
もう映画に限らず音楽等の創作物なんでもそうだと思いますが、「好き」が乗り移ったものってやっぱり熱量が感じられるし受け手もその熱にあたっちゃうんですよね。まさにそんな感じのシリーズなので僕も余計に好きなのかなと思います。
ちなみに原題は単純に「3」なのに邦題だけ「FINAL」が入っているので「勝手に終わらせるな」とか「これ続く可能性もあるよね?」みたいなご意見も散見されるんですが、ネットにあがっていた監督のインタビューによれば「これが本当に最後」とのことなので、このシリーズはここで終了なのは間違いなさそう。
僕としてもなにせ最初に書いた通り「一番好きなキャラクター」で、なんなら「MCUのヒーローの中でどのキャラになりたい?」って聞かれても「マッコールさん」とルール違反で答えそうなぐらいに好きなキャラクターなだけにめちゃくちゃ残念、もしかしたら日本で一番残念がっている可能性すらありますが、しかしもはやデンゼル・ワシントンも70近いだけに仕方がないのかもしれません。
仮に続編を作るとなると、やっぱり目先を変えて「苦戦させる」か、はたまた「またこのパターンかよ」と文句が出ちゃうかの二択になりそうな気もするし、これだけ惜しいと思われつつピリオドを打つのはこれまたマッコールさんらしく“美学”のこもったいい引き際なのかもしれません。
ぜひソフト化の際は集大成として3作すべての殺戮シーンをつないだボーナスディスクを用意して頂きたいですね。絶対買います。
ということで非常に寂しいですがマッコールさんとはここでお別れです。
正直「慈悲の目で見つめつつ無情に殺しまくる、己の絶対正義に従う悪の聖者」みたいな人物像を演じて似合う人ってもうデンゼル・ワシントン以外考えられないぐらいピッタリすぎるので、他の人でシリーズ続けられてもなんだかな…となりそうだし泣きながらお別れが正解なんでしょう。
なおシリーズの個人的評価としては「2>3>1」という感じですが、これも何度も観るうちに変わっていくかもしれません。ただ「2」のチャラい連中を〆るところと敵を笑顔で脅してその家族の車に乗っていくシーンが大好きすぎるんだよな…。もちろん今回もそういった「うへぇたまんねえな」みたいなシーンも登場するのでぜひお楽しみに。
僕が観に行った回は土曜夕方の回でしたがクソでかいIMAXシアターに客は10人ぐらいしか入っておらず、非常に寂しい気持ちになったので皆さんぜひ公開中に観に行ってください。よろしくお願いします。
このシーンがイイ!
あんまり書いちゃうと興を削ぐのでちょっとぼやかしますけども、とあるヤツをアレしに行こうと対峙したとき、1シーンだけですが両手を広げて満面の笑みだったんですよね。マッコールさん。あそこがもう最高すぎて超ニヤニヤしました。マジでホラー。
ココが○
良さとしてはシリーズと変わらず、マッコールさんのブレないキャラクターでしょうか。
前作・前々作みたいに彼のお気に入りを守ってあげるみたいな感じではないんですが、今作はそれが街規模に拡大したってことなんでしょう。
ちょっと思いましたが、このキャラクターってゴルゴ13っぽさもすごいあるんですよね。絶対的な実力と仁義を通す美学と。だから余計好きなのかもしれません。
あ、あとカフェの女性とちょっといい感じになりつつ恋愛に持っていかなかったのもすごく良かった。新たに親しい友人が出来たんだね、って感じで。
ココが×
もうちょっと殺しまくるシーンが欲しかったので、ボスは2人兄弟ではなく4人兄弟ぐらいがちょうどよかったのかな、と。それぞれ違うタイミングで殺しに行く感じでね。
MVA
当たり前ですがダコタ・ファニングももうすっかり大人のレディね…と思いつつお察しの通り結局この人しかないです。
デンゼル・ワシントン(ロバート・マッコール役)
言うまでもない主人公。超強。
上にも書きましたが、根は善人、でも躊躇しない殺しっぷりその他を両立させられるのはこの人以外考えられません。70近い、なんならお爺ちゃんなのに。
ふと例のアカデミー賞授賞式でウィル・スミスがやらかしたときにデンゼルが諭したこととか思い出しちゃって、そのプライベートの彼の性格も上乗せされて余計に説得力を持つキャラクターなんだなとしみじみ思いました。
彼の歩んできた歴史がマッコールさんを具現化した、とも言えるでしょう。最高にかっこいい。