映画レビュー0818 『イコライザー2』

前回の「クワイエット・プレイス」翌日に観て参りました。

前作がかなり好きだっただけに当然ながらかなりの期待の元、鼻息荒く鑑賞ですよ! しかもIMAX 2Dだったしね!

イコライザー2

The Equalizer 2
監督
脚本
原作
『ザ・シークレット・ハンター』
リチャード・リンドハイム
出演
アシュトン・サンダース
サキナ・ジャフリー
オーソン・ビーン
音楽
公開
2018年7月20日 アメリカ
上映時間
121分
製作国
アメリカ
視聴環境
劇場(IMAX 2D)

イコライザー2

元CIAエージェントのロバート・マッコール。タクシードライバーとして細々と暮らしていたが、ある日長年の友人であるスーザンが殺害されてしまい、復讐のために独自に捜査を開始する。

いつもは選ばせるが今日はナシだ。観ろ!

9.0
数人殺るのに1分いらないマッコールさん激怒の巻
  • 引き続きシンプルライフのマッコールさんが超強いお話
  • 続編でありながらご紹介的側面も強め
  • 個別エピソードのつながりがやや希薄
  • それでもかっこいい最高
  • ラストバトルは観たことがないシチュエーションでスゴイ

いきなりですがあらすじについてちょっと補足。

まず前作ではホームセンターの店員さんだったマッコールさん、今作では「タクシードライバー」と書きましたが厳密に言うとちょっと違ってですね、(確か)Uberで運転手をやりながら生活費を稼いでいる、というような感じのようです。

ご存じない方のために書いておきますと、Uberっていうのは日本ではいわゆる「白タク」に当たる、「普通自動車運転免許だけでお客さんを取って対価を得る」ようなサービスをアプリを介してマッチングするようなやつでですね。Uberのアプリから「運転手求む」って送ると近くにいる登録運転手のアプリに「お客さんがいるよ」って送られる、みたいな感じだったと思います。多分。

まあそんな感じで…要は正規の仕事はせずに日々暮らしている彼が、今作でもまた悪を捌きつつ、今度はある意味で私怨のために動くというようなお話になっております。

物語はトルコに向かう列車の中からスタート。聖職っぽい雰囲気の衣服(ユダヤ教のラビの格好)に身を包み、ヒゲも伸び放題のマッコールさんが「(元)嫁への復讐で娘を誘拐した男」に制裁を加えるオープニングです。

その後舞台はアメリカに戻り、運転手やって日銭を稼ぎつつご近所さんとのお付き合いやら得意客との関係性やらを描きつつ、ベルギーのブリュッセルで起こった「自殺に見せかけた殺人事件」の捜査のために彼の古い友人である(前作にも登場した)スーザンが現地へ赴き、そして殺害されてしまう事件が起こります。

なぜスーザンは殺されたのか…! 元CIAの能力も活かして独自に捜査を進めるマッコール、かつての相棒である現役エージェント・デイヴ(ペドロ・パスカル)にも協力を求めながら、果たして真犯人を見つけ出すことができるのか…いやそりゃ見つかるんだけども…! というお話です。

…とここまで書いておいてなんですが、実はスーザンが殺されるのは結構先の話で、体感的にはおそらくちょうど半分過ぎたぐらいだったような気がしますね。まあ予告編で出てきてたし別に良いか、ってことで書いちゃいましたが。

っていうかそこに至るまで、一応後半の前フリになるいろいろ(今作においてヒロイン的な存在である近所の兄ちゃんとのエピソードとか)はあるんですが、基本的にはあんまり重要ではない話が多く、続編でありながら「マッコールとはこういう男だ」というご紹介的側面が強い内容だった気がします。

「おっ、もしや痛めつけたボンボンのお父さんが権力者でやらかしちゃった系?」とか思ってたら全然関係ないね、みたいな。

相も変わらずミニマムな暮らしに読書を愛する男、というマッコール像も前作同様に念入りに描かれ、割と前半は無駄が多かったような気がしないでもないです。それでも「やれやれー! マッコール!」ってシーンがあるから良いんだけど。っていうか無いと寂しいし。

まあそんなわけで物語が動き出すのは結構先ですよ、というのは一応お伝えしておいてですね、その辺が好き嫌い分かれる面はあると思います。

だが…!

やっぱりねー、デンゼル・ワシントン演じるロバート・マッコール、この彼のキャラクターの素晴らしさったら無いですよ。ホントに。もしかしたらこの手のキャラクターの中で一番好きかもしれない。

質素でシンプルな暮らしをしつつ、自分の美学に反するものは徹底的に叩きのめす。普段は普通のおっさんなんだけど本気を出すと底知れない強さがある。かっこよすぎますよ。

圧倒的な実力と自分への信頼がすべての行動の元になっている、その揺らがない姿勢が本当にかっこいい。

それともう一つ声を大にして言いたいんですが、マッコールはその自信故、必ず相手に対して前フリを入れるんですよね。

オープニングでは「人間の痛みは2種類ある。身体の痛みと、改心の痛みだ。どっちを選ぶんだ?」ってセリフがあるんですよ。微妙にニュアンスが違うかもしれませんが、まあそういう意味のセリフを。

その派生バージョンでチンコ野郎どもを懲らしめる時は「いつもは選ばせるが今日はナシだ」とか。もうね、その言いざまが最高なんですよね。痺れる。

ラストで対峙する相手に対しては、むしろ「マッコールの方が悪役じゃね?」ぐらいのふてぶてしいまでの前フリを入れ、最高に期待感を高めてくれるわけです。この辺の流れがむちゃくちゃ好きすぎる。声出して観たいぐらいでしたね。もう。「いいぞーマッコール!」「そうだもっと言ってやれマッコール!!」って。

ロッテン・トマトの評価としては「ありきたりの続編」みたいな感じでイマイチっぽいんですが、僕としては前作同様に今作もブレずに強いマッコールさんが観られて、まさに「これこれ!」モンの大興奮でしたね。もうなんなら目頭が熱くなるぐらいにたまらなかった。

最初に書いた通り、物語のつながり的にやや散漫な面は否めないので、超トップクラスにオススメしたい映画というわけではないんですが、ただ好みから言えばかなり上の方に位置するぐらい好きなシリーズになりました。

奇しくも同様に期待していた「キングスマン」2作目が“ありきたりの続編”から変えたかったのか(パッとしないハリーという)余計なことをしてくれちゃったと僕は思っていただけに、むしろ素直にストレートにそのまま進化したマッコールさんを見せてもらえて大満足。

もうこの人は非情なまでに強く、そしてその瞳にうっすら悲しみをたたえているのが良いんです。底知れないままで良いんです。

イップ・マン」もキングスマンと同じような問題(続編で変に苦戦させちゃう問題)が引っかかったので、「そうじゃない」だけでこれだけ嬉しいのかと鼻息荒くお伝えしたい所存ですよ。

そんなわけで世間的にはそこまででもないので強烈にオススメするのも気が引ける面はあるんですが、前作のマッコールさんが好きであれば是が非でも観るべきでしょう。最高でしたよ。本当に。かっこよすぎた。

まさに「スーパーヒーローよりもヒーロー」している普通の人間、マッコール。もっと観たいぞ!!

ネタバレイザー2

今回の敵役である元相棒のデイヴさんはやっぱりキャスティング的にも事前の宣伝(イコライザー vs イコライザー)的にも想像通りになっちゃうのが少々つらいところではありました。事前のフリが利きすぎてて意外性無いんだもんなー。まあでもそんなことは些末な話ですよ。

ラストバトルはハリケーン(?)の中での撮影でしたが…あれどうやって撮ったんでしょうね。人工であそこまでの嵐は作れなそうなレベルだったし、当然ながらCGでは無理だろうし…本当に嵐の日に撮ったのかなー。危なくってしょうがない気がしますが…すごい映像でした。

そのラストはかつての相棒(&仲間)と対峙するも容赦ない切り裂きっぷりで「もしかして生きててまた続編に出てくるんじゃね?」的な邪推をまったく許さないぶっ殺しっぷりが最高でした。そうだよこれだよマッコール。

そして己で完全に殺しておきながらも憐れみの目で見つめるマッコールさん。そうだよこれだよ!!(くどい)

もうちょっと(デイヴ以外の)他の3人のプロっぽいところも観たかったんですが、でもまあマッコールさんの前ではしょうがない、ってやつですね。スーザンの顔写真貼りまくって動揺してるところを刺す、とかマジで悪役の手法じゃねーかよと嬉しくってたまらなかったです。

価値観は完璧に善なんだけど手口も迷いのなさも善に見えないところがこの人の真骨頂なんだと思います。この辺貫いてくれて本当に嬉しかったなー。

ただ一つ、細かい部分ですが気になったのは、ラストバトルの会場に向かう途中、デイヴが交通整理する保安官らしき人をあっさり射殺するじゃないですか。あれは無いと思うんですよね。

本人は現役のCIAエージェントなわけだし、「悪役と判明したので悪役らしくあっさり殺します」じゃダメなはずで、あそこはマッコールさん同様にちょっと気を利かせて嘘つけばいいじゃないですか。「容疑者(マッコール)を追っている」でもなんでも。

そこサボっちゃうか〜ってあそこが一番残念でした。もったいないぜ。

それともう一つ、これも事前の宣伝の問題ですが「さらばマッコール」ってなんだったんだよ。死ぬかと思ってたじゃんか…。

本当にこの映画の売り方はひどかったと思いますね。もうちょっと信じて売れよと思う。

このシーンがイイ!

ラストバトルはシチュエーション的には特に珍しくもないんですが、ただ映像としてはなかなか観られないものだと思うので一見の価値があると思います。あれどうやって撮ったんだろう…。

ココが○

今作でも前作同様、被害者(己が殺った相手)を見つめる悲しみをたたえた目が見られます。これがあっただけでも「監督わかってるわー」って思いましたね。大満足。

「お前も間違ってしまったか…」みたいなね。完全に自分が正しいと信じ切っている自信があるからこその100%の殺意と100%の憐れみですよ。そこが最高なんですマッコールさんは。

ココが×

物語的には上に書いた通り、前半がやや散漫であまり効果的に見えない点。

それとこれは映画自体の問題ではなく、おそらく日本の配給会社の問題だと思うんですが、予告編や事前の広告でやらかしちゃってる点がどうにもひどい。

細かく書くとネタバレになっちゃうのでネタバレ項に書きますが、2つ許せないポイントがありました。本当に配給会社はもうちょっと考えてやって欲しいよな…。

MVA

ペドロ・パスカルはどことなくジェレミー・レナーっぽさがあり、役にも合っていて良かったと思います。でもこの映画はもはや選択の余地ナシでしょう。「いつもは選ばせるが今日はナシだ」だよ。もう。これも。

デンゼル・ワシントン(ロバート・マッコール役)

黒人俳優のトップに君臨するデンゼルですが、なんと今作が初の続編、続演キャラクターだったそうでびっくり。マジか。

しかしその「初めて演じる同じキャラクター」がマッコールさんっていうのはもう納得しか無いですね。首がもげるまで頷きます。わかる。わかりすぎる。

この圧倒的に正しくて圧倒的に強く圧倒的に自己中心的な人物、控えめそうな佇まいとは裏腹なこの強烈な個性を表現できるのはまさにデンゼル・ワシントンその人しかいませんよ。よくぞこの人にやらせてくれた。

…と最後まで熱っぽく語りましたが、僕の熱意は伝わったでしょうか。頼むからまたマッコールさん見せてくれ…!

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